IDAJ

Consultingコンサルティング

物理モデル・計算コード開発

CAEシミュレーションツールがカバーできる物理現象は多岐に渡りますが、日々進化を続けるものづくりの現場においては、CAEツールの機能が不足しているため、お客様の期待される結果が得られないことがあります。
IDAJでは、必要な物理モデルを既存ソフトウェアへの組み込み、カスタマイズ、計算コード開発を実施します。また、課題に応じてIDAJの技術者から適切な物理モデルをご提案します。商用ソフトウェアであればユーザーサブルーチンなどによる実装を、iconCFDであればソースコードの実装や改良まで実施します。

納品物:ご要望に応じて下記のデータを納品

  • 解析報告書一式
    • 解析手法概要、考察
    • 検証結果
  • 解析入出力データ
  • 解析手順書
  • 解析モジュール(ユーザーサブルーチン、実行プログラムなど)

実施例:噴霧画像直接相互相関法を用いた噴霧モデル定数の定量合わせ込み手法の構築(ソフトウェア名:CONVERGE)

課題

ラグランジュ法で計算したCFD結果のパーセル分布と、実験で撮影される噴霧散乱光画像とは、同じものを観察しているわけではなく、奥行き方向の分布や密集度合いによる濃淡が表現されていない。また、噴霧パラメータ同定にあたっては「見た目」による一致度の評価であり、客観的評価や定量的評価ができていない。

噴霧中心軸上輝度分布の定量比較
噴孔下流100mm輝度分布の定量比較
解決策

「CFD結果から実測散乱光相当の画像を作成するツール」を開発

結果

CFDと実験とを同じ土俵で評価できるだけでなく、画像のピクセルごとに輝度値の一致度の客観評価と定量評価を実現。また、噴霧パラメータ合わせ込みに対しては、多目的ロバスト設計最適化支援ツール「modeFRONTIER」での自動パラメータ適合が可能となり、熟練エンジニアの業務を効率化することができた。

実施例:ガソリンエンジン火花点火モデルの機能拡張(ソフトウェア名:CONVERGE)

課題

ガソリンエンジンの火花点火過程において、タンブル流動によって放電経路が伸長する影響や再放電を含む電気回路の影響を考慮することは、高流動、高希釈という昨今のトレンドにおいて重要である。標準で搭載されている物理モデルでもこのような現象は考慮しているものの、より詳細で実験事実に基づいたモデル開発の要請があった。

解決策

ユーザーサブルーチンによって論文で紹介されている火花点火モデルを実装。

火花点火モデル実装の図
結果

論文や実験結果に基づいた検証によって予測精度や汎用性を確認し、標準モデルでは捉えられなかった現象を再現した。

実施例:キャビテーション・エロージョンモデル開発(ソフトウェア名:Ansys Fluent)

課題

キャビテーションによるエロージョンの評価は、キャビテーションによって発生した蒸気の消失位置から予測を行っていたが、蒸気の崩壊エネルギーによるエロージョンの分布を評価することができなかった。

解決策

エロージョンモデルとして以下の手法をAnsys Fluentに組み込み、エロージョンの分布を予測することが可能になった。
-Gray Level Method(GLM)
-Intensity Function Method(IFM)
-New proposed Erosive Power Method(EPM)

キャビテーション発生の様子、キャビテーションによるエロージョンの分布の図
結果

ベーンポンプやトロコイドポンプの実測に対して定性的な傾向と分布を捉えることに成功した。

実施例:沸騰モデルの開発ならびにその拡張 (ソフトウェア名:iconCFD)

ご依頼の背景

沸騰モデルは、商用コードに一般的に搭載されている物理モデルの一つである。一方で、沸騰現象そのものが複雑であるため、お客様が商用コードの機能を実際の対象に用いる際には、精度の面で必ずしも妥当な解が得られるとは限らない。また計算安定性を確保するために小さい時間刻みを採用すれば、現象を再現するためには膨大な計算時間がかかり、必ずしも設計・製造プロセスの現場で活用できていないという問題が存在する。
以下に、オープンソースベースソフトウェアであるiconCFDの特長を生かした、沸騰モデルに関連する物理モデル開発に対する取り組みを示す。

1)周期的な気泡挙動を伴う沸騰現象の再現:沸騰モデルの開発
課題

参考文献[1]に記載されている、加熱壁面上の沸騰現象のうち、気泡の合体、成長、分裂、消失の一連の周期的な挙動について、お客様が独自に計算したところ、気泡界面があいまいになり、周期的な現象を再現できないという問題が発生した。

解決策

VOFモデルベースの沸騰モデルを開発した。

実験写真、計算結果の図
結果

本現象で重要な気泡の合体、成長、分裂、消失の各挙動を良好に再現することに成功した。

2)鉄板の冷却解析:固体熱連成への対応を通じたモデルのさらなる拡張
課題

鉄鋼製造プロセスの一つである高温に加熱された鉄板の沸騰を伴う冷却過程は、計算安定性を確保することが難しく、これまで安定的に解くことができていなかった。

解決策

1)で開発した沸騰モデルを拡張し、固体熱連成を同時に考慮可能なモデルを開発した。また、さらに広範囲の沸騰現象に対応するために、熱流束の比較的小さな核沸騰領域だけではなく、限界熱流束を超えた、遷移沸騰ならびに膜沸騰領域まで対応可能なモデルを開発した。このモデルの検証として、各沸騰領域の混在する800℃に加熱された鉄板の冷却についての参考文献[2]の検証計算を行った。

実測結果の写真、実測結果と計算結果の鋼板内温度時刻履歴比較、計算結果図(0.1sec経過時)の図
結果

開発したモデルを用いて、膜沸騰が発生する本現象についても安定的に計算できることを確認し、かつ鋼板内温度経時変化の傾向について良好な一致を確認した。

3)筐体の沸騰性冷却剤による冷却過程
課題

筐体の沸騰性冷却剤による熱処理は、2)に加えて加熱された筐体の冷却剤槽への投入過程が含まれており、さらに計算の難易度が上がることが予想できた。

解決策

2)で開発したモデルをさらに拡張し、実プロセスへの適用に向けテスト計算を実施した。

筐体の沸騰性冷却剤による熱処理を模したテスト計算の図
結果

筐体の熱処理について、開発したモデルで計算可能なことを確認した。


まとめ

沸騰現象に関わる種々の問題に対して、iconCFDの特長であるオープンソースコードを生かした開発を行い、これまで計算による現象再現が難しかった対象も対応が可能となった。特に、最後の筐体の熱処理については、産業界において適用範囲が広いと考えられるため、今後、さらに開発を継続する予定である。

参考文献
[1]Wei Lu et. Al., “Experimental investigation of 3-D ERVC process for IVR strategy – CHF limits and visualization of boiling phenomena”, Nuclear Engineering and Design 322, 240–255(2017)
[2]山神 成正、“高温鋼板の円形水噴流冷却のVOFシミュレーションと検証実験”、修士論文、東京大学(2003)

その他の実施例

  • ガソリンエンジン燃料噴霧モデル開発
    液滴分裂モデル開発
    液滴抵抗モデル開発
  • 三元触媒モデル開発
  • Liイオンバッテリーモデル開発
  • 液膜凝縮モデル開発
  • 化学種拡散モデル開発
  • NOxモデル開発
  • iconCFD-SIMULIA Abaqus Unified FEAカップリング機能開発
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