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ディーゼルエンジンに匹敵する燃費の自動車用HCCIガソリンエンジンの研究 ― NEDO「平成18年度 エネルギー使用合理化技術戦略的開発事業」に採択 ―

株式会社シーディー・アダプコ・ジャパン(以下CDAJ)は、平成18年8月1日、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が公募をおこないました「平成18年度 エネルギー使用合理化技術戦略的開発事業」に係る研究開発テーマに、プロジェクトの研究開発責任者である有限会社畑村エンジン研究事務所(以下 畑村エンジン研究事務所)の共同実施先として採択されました。研究テーマは「ディーゼルエンジンに匹敵する燃費の自動車用HCCIガソリンエンジンの研究」であり、CDAJでは今まで培ってきたエンジンに関する複合的な解析技術を生かし、近年、低燃費、低排出ガスエンジンとして注目されているHCCIエンジンの先導的研究を自ら行うこととしました。

(事業採択詳細に関しては、下記サイトをご参照ください。
http://www.nedo.go.jp/informations/koubo/180801_4/180801_4.html

近年ますます重要となっている地球環境保護の観点から、乗用車エンジンには、より一層の低燃費、低排出ガス性能が要求されています。現段階で実用化されている乗用車エンジンには、主にガソリンを燃料とするガソリンエンジンと、軽油を燃料とするディーゼルエンジンがあります。

ガソリンエンジンは、排出ガス(すす、NOx)のクリーンさとドライバビリティの良さで、広く乗用車エンジンとして用いられていますが、ディーゼルエンジンに比べて燃費が悪いという課題があります。このガソリンエンジンの燃費をディーゼル並にする燃焼法として、HCCI(予混合圧縮着火)燃焼方式が有望視され、多くの企業、大学で研究・開発されています。しかし、HCCIガソリンエンジンは、混合気の燃焼を点火プラグによる強制着火ではなく、圧縮による温度上昇で自己着火させるため、その制御が難しく、運転可能範囲が制限られ、未だ実用化のレベルには到達していません。

現在研究されているHCCIエンジンでは、混合気の自着火に必要な温度を得るために大量の内部EGR(Exhaust Gas Recirculation)を利用する方法が主流ですが、この方法では、高負荷域で必要な残留ガス量を確保できないという問題があります。畑村エンジン研究事務所は、この問題に対して、排気のブローダウン圧力を活用する手法(※)を用いることにより、HCCIガソリンエンジンの運転可能範囲をかなり拡大することに成功しました。次に、この運転範囲をさらに拡大する手法として、残留ガスの成層化が考えられていますが、この方法による運転範囲拡大に対する実用的な手段はこれまでどこからも提案されていません。

そこで今回、我々はこの課題の解決のため、吸排気流を活用して残留ガスの成層化をおこない,この温度勾配を利用してHCCIエンジンの運転可能範囲を拡大する方法を検討しています。

CDAJでは、この案の実現性を、汎用熱流体解析プログラム「STAR-CD」を用いた3次元エンジン内熱流れ解析、及びエンジン解析専用ツール「GT-POWER」等を用いた1次元エンジン性能解析を行うことにより検討していきます。新しいアイデアを取り入れた吸排気系設計を行い、燃焼室内の残留ガス分布を予測し、その成層度を評価、目標の成層度が得られる様に再設計を行います。さらに、その後ガソリンの素反応まで考慮した詳細化学反応計算を行い、燃焼の制御が実現できているのかの評価も行います。この複雑な計算の実現には、今までCDAJで培ってきた多くの数値計算のノウハウがいかされることになります。

本研究の平成18年度の研究開発は、1次元解析よってシステムレベルでのコンセプトを検証した上、3次元熱流体解析によりブローダウン過給方式HCCIエンジンの温度成層化に伴う緩慢燃焼制御の可能性を検討することが目的です。本年度の成果によっては、次年度以降、先導研究のステップに進み、新しいコンセプトのHCCIガソリンエンジンの開発にまた一歩近づくことになります。

※参考文献
(1)畑村耕一: 排気ブローダウン圧力を利用して過給するHCCI(予混合圧縮着火)ガソリンエンジンの研究,
自動車技術会論文集 20054172,Vol.36, No.2, (2005)
(2)畑村耕一:排気ブローダウン圧力を利用して過給するHCCI(予混合圧縮着火)ガソリンエンジンの研究(第2報),
自動車技術会論文集 20065405

有限会社 畑村エンジン研究事務所 について

代表:畑村 耕一(はたむら こういち)
所在地:広島市南区段原山崎町20-16
自動車用パワートレイン開発の豊富な経験を元に、機械関連製造業において、以下のような領域でクライアント企業の技術力向上やコスト低減のコンサルティングを実施しています。

  1. 自動車用パワートレイン(ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、トランスミッション)並びに一般エンジン、及びそれらのサブシステムと構成部品の研究開発、設計及びコスト開発。
  2. 吸排気システム、排気ガス対策システム、過給システム、エンジン制御システム、振動騒音対策等、機械システムの問題抽出、その解析と問題解決及びコスト低減。
  3. ボルトの締め付け、ガスケットのシール、軸受け等の磨耗対策、熱や振動による破損防止、ギヤノイズの低減、他、機械要素の機能解析と問題解決及びコスト低減。

その他詳細情報についてはウェブサイトをご参照ください。
http://www.ne.jp/asahi/hata/eng/index9.html

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