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1次元リチウムイオン電池性能シミュレータ『1D AutoLion』販売開始のお知らせ

株式会社IDAJ(以下 IDAJ)は、EC POWER社(アメリカ)で開発された1次元リチウムイオン電池性能シミュレータ『1D AutoLion』(ワンディー オートライオン)の販売を開始しました。

広く普及してきたリチウムイオン電池とその課題

1990年代の初めに実用化されたリチウムイオン電池は、携帯電話やノートパソコンなどのモバイル機器の電源として成長を遂げてきました。一方で、近年の環境・エネルギー分野におけるより低燃費な自動車へのニーズの高まりとともに、リチウムイオン電池はハイブリッド車(HEV:Hybrid Electric Vehicle)や電気自動車(EV:Electric Vehicle)などのエコカー向け中型・大型電源としてもその用途を急速に拡大しつつあります。これは、リチウムイオン電池が持つ、小型で軽量、その上エネルギー密度が高いという特徴がエコカー用電源に適しているためです。しかしながら、HEVやEVは一般のガソリン車などに比べると車体価格が高価で、EVについては航続距離が半分以下という大きな課題があります。この問題を解決するためにも、より安価で軽く、小さなリチウムイオン電池の開発ニーズが近年ますます高まりつつあります。

電池設計プロセスとシミュレータのメリット

より高い性能を持つ電池を開発するにあたり、電池設計者は電池タイプ、電極材料、電極面積やコーティング厚さなどといった多くの設計パラメータを変えて電池をデザインし、その性能を評価することが必要となります。電池性能を評価するには、設計パラメータに応じて試作し、実測により性能を測定することが一般的です。しかし、電池を試作して測定するには多くの費用と時間がかかり、効率的な電池開発の大きな阻害要因となっています。このため、電池設計パラメータを入力として電池性能をコンピュータシミュレーションによって評価することができれば、電池開発プロセスにおけるコストと時間を大幅に削減することができ、電池設計者にとって大きなメリットが期待できます。

『1D AutoLion』とは

『1D AutoLion』は、リチウムイオン電池の設計パラメータを入力することによって、充放電時における電圧や電池容量といった電池性能をパソコンによってシミュレーションすることができるツールです。通常のノートパソコンでも数秒程度の計算で結果が評価できるため、多くのパラメータ違いによる性能評価が可能です。

図1 1D AutoLionによる電池性能予測プロセス
図1 1D AutoLionによる電池性能予測プロセス

『1D AutoLion』の特徴

『1D AutoLion』は、米国ペンシルベニア州立大学で15年以上にわたってリチウムイオン電池の研究を続けてきた米国でも著名なChao-Yang Wang教授の研究成果をもとに、同教授が率いるEC POWER社によって開発されたプログラムで、電気化学反応を伴うリチウムイオン電池内部の電荷(リチウムイオン電池、電子)の輸送を1次元有限差分法ベースの数値解法により計算します。

  1. 電気化学反応プロセスと熱プロセスを連成させた電池性能モデルを実装
    リチウムイオン電池内部でおこる電気化学反応は、温度の影響を強く受けます。また、電池温度は、充電・放電時の電気化学反応による発熱量に応じて変化します。このため、リチウムイオン電池性能を予測するモデルは、電気化学反応プロセスと熱プロセスを同時に考慮した支配方程式を連成させて解く必要があります。Wang教授は、この電気化学反応プロセスと熱プロセスを連成させて計算するモデルを初めて開発したこの分野の第一人者で、彼のグループが発表した文献は8,000以上の論文に引用されている実績があります。
  2. 使いやすいGUIを装備
    電池の設計パラメータの入力、運転条件の設定、解析条件の設定から計算結果の表示まで、全ての処理を使いやすいユーザパネル(GUI: Graphical User Interface)により操作することができます。
  3. 代表的な材料物性のデータベースを内蔵
    ペンシルベニア州立大学のバッテリー製造研究所(BML: Battery Manufacturing Laboratory [http://youtu.be/ppYGWnYgUrc])の最新の設備を使って計測された代表的な材料物性のデータベースを内蔵しているため、ユーザーは使用する材料を選択するだけでよく、入手が困難な物性値の入力をする必要がありません。
    このデータベースに登録された物性は、広い温度範囲や充電容量に対応しているため、例えば氷点下における電池性能予測にも対応することができます。 使用可能な材料を以下に示します。
    正極材料: コバルト酸リチウム(LCO)、マンガン酸リチウム(LMO)、ニッケルコバルトマンガン(NCM)、リン酸鉄リチウム(LFPO)
    負極材料: グラファイト(MCMB)、チタン酸リチウム(LTO)
  4. 予測可能な電池性能
    (a) 電圧(または電流)時刻歴
    (b) 温度時刻歴
    (c) 電圧・電池容量特性
    図2 使いやすいGUIを装備
    図2 使いやすいGUIを装備
    図3 計算結果(初期温度違いによる電圧特性評価)
    図3 計算結果(初期温度違いによる電圧特性評価)

動作環境:Windows7_64bit

EC POWER社 について

本社: 200 Innovation Blvd. State College, PA 16803 USA 関連会社: White Horse Bldg., 12th Floor 1 Miduqiao Rd. Hangzhou, Post Code 310005 Zhejiang, China EC POWER社はHEV、EVや家庭用電源などに使用される2次電池や燃料電池の設計、開発をおこなっているベンチャー企業で、米国ペンシルベニア州立大学のChao-Yang Wang教授により設立されました。大学発ベンチャーである特性上、ペンシルベニア州立大学の電気化学反応エンジンセンター(ECEC: ElectroChemical Engine Center)や物性リサーチ協会MRI(Material Reserch Institute)などと関連が深く、これらの研究機関とのジョイントプロジェクトを通じて、産業界向けに実験から開発、材料測定などの広範囲なサービスを展開しています。その他詳細情報についてはウェブサイトをご参照ください。(http://ecpowergroup.com/

*本文中に記載の会社名、商品名、サービス名等は、それぞれ各社の商標または登録商標です。
一部修正しました。(2013年3月22日)
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