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Product製品情報

Simcenter 3D Acoustics音響解析ソフトウェア

機能/動作環境

機能

有限要素法​

音響解析に有限要素法を用いる場合には、標準的な機能を超える音響解析に特化した機能が必要です。Simcenter Nastran Acousticsでは、サーフェスラッピング、コンベックスメッシュ、メッシュの肥厚、ハイブリッド(ヘキサ-テトラ)メッシュの作成機能など、高度な機能をご提供し、従来のプリプロセッサーよりも音響メッシング処理を高速化することが可能です。​
これらのメッシング機能の他に、ユニークで強力な2つの機能をご紹介します。

(1)Finite Element Method with Adaptive Order(FEMAO)
有限要素法では解析空間を有限要素で切らなければならないため、音響解析では要素節点数がどうしても多くなり、膨大なメモリ容量が必要になるという問題が常に存在します。さらに悪いことに、この要素の大きさは音の波長によって決まるため、高い周波数になればなるほど要素を小さくせざるを得ず、その結果、解くべき要素節点数は指数関数的に増加します。
Simcenter Nastran Acousticsでは、この問題を解消するために、要素節点間を補間する多項式において誤差が最小となるような最適な次数を求める「FEMAO」という機能を実装しています。最大10次まで対応していますので、下図に示した通り標準FEMでは細かいメッシュを切らなければなりませんが、FEMAOではかなり粗いメッシュで良いことがわかります。この粗いメッシュに対して、各解析周波数で最適な補間多項式の次数が自動的に設定されますので、周波数ごとにメッシュを切り直す必要がなく最適な有限要素解析が実行されます。
総合的に見て精度が良く、使用するメモリ容量が節約され、大幅な解析の高速化を図ることができます。

Finite Element Method with Adaptive Orderの図

(2)Automatically Matched Layer(AML)
有限要素法では解析領域全体を有限要素で分割しますが、開空間が解析対象である場合はどうすればよいのでしょうか。最も簡単な方法は、外部空間に十分広い領域を確保し、その最外殻表面に無反射境界条件となるような空気の固有音響抵抗を境界インピーダンスとして設定することが考えられます。しかし、これではメモリがいくらあっても足りず、現実的な方法とは言えないため、FDTD法(時間領域有限差分法)で用いられるPerfectly Matched Layer(PML)という音波を吸収する層を何層か用いて最終的に音波を完全に吸収させ、無反射状態を実現する方法が応用されています。しかし種々の数学的な制約により、無反射条件を実現させることのできる形状に限りがあるため、PMLは少ない要素数で開空間を実現できる方法だとは言えません。
Simcenter Nastran Acousticsには、自動的に無反射を実現するAMLという要素があります。このAMLは、外側の領域の形状が凸形状であれば良く、かつその層も1層以上設ければあとは自動的に最適な層数が設定されるという、効率的に開空間を実現することができる要素です。​

Automatically Matched Layerの図

これら2つの強力な機能によって、Simcenter Nastran Acousticsは有限要素法だけでもかなり広範な問題に対応することができます。しかし、どうしても考慮しなければならない音響的散乱体が広い領域に存在する場合や、高周波域まで解析しなければならない場合などでは、次にご紹介する境界要素法をお勧めします。

境界要素法​

境界要素法は、考慮すべき音響的な散乱体の表面だけを境界要素(メッシュ)に切れば良く、無限遠の境界を考える必要がないため、有限要素法とは対照的に外部の開空間に向いた解法です。そのため昔から、外部の開空間は境界要素法で、室内などの閉空間は有限要素法で解くというように使い分けられてきました。しかし、境界要素法の係数行列は複素密行列になるため、やはり大量のメモリを消費することに変わりはありません。その欠点を補うために、高速多重極展開法(Fast Multipole)、階層型行列法(Hierarchical Matrix; H-Matrix)といったアルゴリズムが境界要素法に適用されるようになり、これまでとは比較にならないほどの大規模な問題や高周波数領域に適用できるようになりましたが、それでも有限要素法に比べると計算時間がかかっていました。​
Simcenter 3D Acoustics BEMは、FEMAOで培った技術を境界要素に応用し、かつ係数行列の構築に高速多重極展開のアルゴリズムを適用することによって、さらなる効率化と大幅な高速化に成功しています。

境界要素法の図

計算時間を見ると、標準BEMでの計算時間は約72時間でしたが、H-Matrix BEMでは7時間58分21秒、BEMAOにいたっては1時間26分39秒と劇的に短縮されています。つまり標準BEMで計算するよりもBEMAOを用いたほうが約50倍速く計算できることになります。このように、数学的な厳密性という長所を保持しながら、高い計算負荷のために敬遠されがちだった境界要素法も、Simcenter 3D Acoustics BEMでは実用に耐えうると言えるでしょう。

計算時間の比較図

音線追跡法​

音線追跡法は、これまでの有限要素法や境界要素法とはまったく異なる考え方で、いわゆる幾何音響理論をベースとした解析方法です。幾何音響理論とは、音の波動性を無視し、音の伝搬を線や粒子を飛ばしたときの軌跡であると考え、その軌跡を追跡することでどのように音が広がっていくかを観察する理論です。この考え方はある意味非常にシンプルであるがゆえに、かなり古くからその応用が模索されてきました。
しかし本来音の伝搬は回折現象に代表されるように波動的なものであるにもかかわらず、幾何音響理論はその特徴を無視する考え方です。また反射も鏡面反射となるため、応用にはいくつかの大きな問題が指摘されてきました。
一方で音の伝搬には、周波数が高くなると音の伝搬における波動性の重要性が薄れ、幾何的な扱いをしても大きな矛盾は起こらないという性質があることも事実です。また同じく高い周波数では、音の伝搬が光のそれと似てくるため、光学の分野で発達した幾何光学的回折理論[3]を適用できるようになる性質も持ちます。Simcenter 3D Ray Acousticsで採用されている音線追跡法は、この高い周波数における幾何音響理論の特長を生かすことで、有限要素法や境界要素法のように波動論的な解析手法が苦手とする高い周波数での解析を、これらとは比べ物にならないほど速く、また正確に解析できるソルバーです。
高い周波数といって思い浮かべるのが超音波センサー。近年のADAS(先進運転支援システム)の進化により、近接物の探査のために超音波センサーを取り付けることが当たり前になりつつありますが、そのセンサーの効果を評価するのに非常に適した解析方法であることがご理解いただけるのではないでしょうか。

音線追跡法の図

音線追跡法には、解析空間や解析対象物体の表面を解析周波数に合せて細かく切らなければならないという制約がありません。つまり非常に大きな空間を解析することが可能になります。
下図は、あるアリーナで、コンサート会場としての利用を想定した解析例です。Ray Acousticsでは、有限要素法や境界要素法で解析することは非現実的だった大空間に対して適用でき、かつ時間領域での解析も可能であるため、残響時間分布やインパルス応答を求めることができます。この機能によって適用可能な対象が広がり、様々な業界でお役立ていただけることを期待しています。

アリーナのモデルの図、アリーナの解析例:1600 Hzにおける残響時間 (RT30)の図、アリーナの解析例:ある特定位置間におけるインパルス応答の図

動作環境

OS
Microsoft Windows (64ビット) *2 Microsoft Windows 10 ProおよびEnterpriseエディション
Linux (64ビット) *1 •SuSE Linux Enterprise Server/Desktop 15
•Red Hat Enterprise Linux Server/Desktop 7.6
RAM 32 GB 以上(推奨)
HDD 1 TB 以上(推奨)

*1) LinuxにおいてはNX 1847から、NXはグラフィックの統合を含む対話型NX(UIを用いて実行するNX)を、Linuxオペレーティングシステムでサポートしなくなりました。ユーザインタフェース呼出しのない、ソルバおよびNX Openバッチプログラムの実行に対してのみサポートされます。
*2) *1のため、 GUIでモデル作成等を行う場合はWindowsでの作業が必要です。このためのWindowsマシンには、動作保証対象となるグラフィックボードのご準備と、インストールするマシンスペックのご確認をお願いいたします。ご不明な点は、お気軽に弊社までお問い合わせください。

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