IDAJ SYMPOSIUM 2025

Simcenter Flotherm Session

Introduction

エレクトロニクス製品の設計は、カーボンニュートラルに代表される社会環境の変化と、生成AIに代表される技術革新という大きな変化に直面しています。これらが同時に進行しているため、製品への要求は多岐にわたり、従来のように過去機種を踏襲した設計では、競争力のある製品を世に出すことが難しくなってきました。このような状況は、構造設計や基板設計だけでなく、熱設計においても同じです。しかし、他の設計要件が優先されることで熱設計が後回しにされ、その結果、試作段階になって初めて熱問題が顕在化するケースがしばしば発生します。
こうした事情から、Simcenter Flothermに代表される熱シミュレーションを導入し、熱設計プロセスの改善や熱設計のフロントローディングを実現しようとする企業が増えています。一方で、「熱シミュレーションを設計品質改善に結びつかないまま、導入から数年が経過してしまった」、「CAE専任者は育成できたものの、設計者への展開が進んでいない」といった、設計現場における課題についてよくご相談をいただきます。
そこで、今年のSimcenter Flothermセッションでは、熱シミュレーションツールを製品設計に活用した事例をユーザー様よりご講演いただきます。
電子情報技術産業協会(JEITA)様からメモリデバイスの熱設計の効率を上げる熱抵抗モデルについて、デンソー様から部品の発熱量の算出について、ソシオネクスト様から半導体パッケージのモデル化と低次元モデル作成について、それぞれご紹介いただきます。
Simcenter Flothermによる効果的な設計活用事例としては、アイシン様から電動ウォーターポンプの熱シミュレーションのモデル開発と運用と製品展開事例について、ローム様から次世代パワーデバイスの性能を最大化する熱設計アプローチについて、ご紹介いただきます。
さらにSimcenter Flothermの開発元のSiemens Digital Industry Software様からは、Simcenter Flotherm製品の新バージョンに搭載されている重要な新機能と活用方法についてご紹介いただきます。
弊社からはエレクトロニクス製品の元設計エンジニアが、デスクトップPCを題材としたシミュレーション活用した熱設計手法についてご紹介いたします。最後にIDAJ技術顧問の国峯からは、熱シミュレーションを設計プロセスに必須な開発ツールとして定着させている企業と、そうでない企業の間にある3つの大きな違いについてご説明し、熱シミュレーションの活用に必要な事項について考察します。
今回の本セッションは、熱シミュレーションを現場に根付かせるヒントを持ち帰っていただける内容となっております。多くのお客様のご参加をお待ちしております。

第二モデリング・ソリューション本部 解析技術4部 部長 錦織 弘充

プログラム

*それぞれのご講演の後に質疑応答の時間を設けております。(約5分~10分)
*プログラムは予告なく中止・変更となる場合がございます。
*英語のご講演は逐次通訳させていただきます。

タイトル 講演者
10:00-10:10 開会のご挨拶
IDAJ
10:10-10:55 メモリデバイスの熱設計の効率を上げるアプローチ
タイトル メモリデバイスの熱設計の効率を上げるアプローチ
講演者 一般社団法人 電子情報技術産業協会(JEITA) 様
時間 10:10-10:55
概要 最近、メモリデバイスの動作スピードが飛躍的に高速化され、それに伴って発生する熱の処理が大きな課題となってきている。
JEITAのメモリシステムWGでは、JEDECのDELPHIモデルでは扱っていなかった複数熱源対応を考慮して、NANDとコントローラの複数熱源を持つUFS(Universal Flash Storage)メモリをモチーフとして、簡易的な熱設計のために熱抵抗モデルの検討を進めている。UFSは、スマートフォンやPC等の民生機器で幅広く使われているメモリで、熱設計が非常に重要になってきていることからモチーフに選定している。
本講演では、複数のユーセージを考慮した熱伝達率を想定して、Simcenter Flothermを用いて計算した詳細設計の結果と、熱抵抗モデルを用いた簡易設計の結果の誤差を10%以下にすることを最終目標として、適切な境界条件を求める検討を進めている経過についてご報告する。
課題は、活動の手順としてUFSメモリモデルのトポロジーの検討を進めて、メモリユーザが使いやすいように抵抗数をできる限り少なくするモデルを検討することと、熱伝達率と熱バランス(NANDとコントローラ)のバリエーションをある程度広げて、簡易的な熱設計において有効に使用してもらうこととしている。
■Simcetner Flotherm他弊社取扱いソフトウェアについて
弊社取り扱いのソフトウェアのご利用年数 4年
弊社取り扱いソフトウェアを利用しての主な解析テーマ メモリモデルの熱設計
弊社取り扱いソフトウェアを気に入っていただいている点 サポート体制が充実している
一般社団法人 電子情報技術産業協会(JEITA) 様
10:55-11:40 Elevating IC Design: What's New in Simcenter Flotherm during 2025 for Streamlined Thermal Workflows *English Lecture
タイトル Elevating IC Design: What's New in Simcenter Flotherm during 2025 for Streamlined Thermal Workflows *English Lecture
講演者 Siemens Digital Industry Software 社 様
時間 10:55-11:40
概要 このプレゼンテーションでは、2025年にリリースされたSimcenter Flothermの新機能を紹介いたします。メイントピックは、テンプレート型シングルチップパッケージを作成するための新しいモジュールの導入であり、それによって統合されたワークフローの大きな改善に焦点を当てます。強化されたワークフローにより、標準的なコンパクト熱モデルの生成から、Calibreなど上流ツールからのデータを用いた複雑なSoC(System-on-Chip)デバイスや3D-ICまでを含む開発プロセスが効率化されます。最終的には、高精度でモデル情報が秘匿化された組み込み型BCI-ROM(Embeddable Boundary Condition Independent - Reduced Order Model:EROM)をサプライチェーン全体にわたってシームレスに共有することを可能にします。
Siemens Digital Industry Software 社 様
11:40-13:10 休憩・ネットワーキング
13:10-13:40 BGAパッケージ、Chipletパッケージに対するEROMの適用
タイトル BGAパッケージ、Chipletパッケージに対するEROMの適用
講演者 株式会社 ソシオネクスト 様
時間 13:10-13:40
概要 弊社のビジネスモデルであるソリューションSoCの実現にあたり、パッケージ熱解析技術として多様なユースケースも織り込んだより高精度な解析結果の提供が求められる。ソシオネクストでは顧客のSimモデル要求に対してDELPHIモデルを以て対応してきたが、Somcenter Flothermにおいて採用されたEROMは、既存のDELPHIモデルより拡張性の高い解析が可能であり、優れた代替手段となり得ることから、FBGA、FCBGA、Chipletパッケージに対してEROM適用が可能か評価を行った。その結果、EROMはDELPHIと同等以上の解析精度であることを確認できたが、あわせて課題も見えてきた。本シンポジウムではEROM評価の結果と今後に向けた課題・期待を発表する。
株式会社 ソシオネクスト 様
13:40-14:10 次世代パワーデバイスの性能を最大化する熱設計アプローチ
タイトル 次世代パワーデバイスの性能を最大化する熱設計アプローチ
講演者 ローム 株式会社 様
時間 13:40-14:10
概要 脱炭素社会へのシフトが加速する中、ワールドワイドでのxEVの普及やデータセンターの需要拡大に伴い、これらに搭載されるパワーデバイスに対してより一層の小型化・高効率化が求められている。
一方で、アプリケーションの小型化・高電力密度化はパワーデバイスの発熱量増大を招き、熱の問題が性能や信頼性を損なう大きな要因となっており、熱設計がセット競争力を左右する重要な鍵となる。
そこで、本講演では「パワーデバイスの熱設計」をテーマに、その重要性と具体的なアプローチを解説する。
適切な熱設計は、いまや机上の計算だけでは困難であり、CFDシミュレーションの活用が不可欠となっている。
熱が引き起こす問題、温度上昇を抑える手法、放熱のボトルネックについて順を追って説明した上で、熱設計を容易にする最新ソリューションついて、熱シミュレーションでの検証結果も交えて紹介する。
■Simcetner Flotherm他弊社取扱いソフトウェアについて
弊社取り扱いのソフトウェアのご利用年数 11年
弊社取り扱いソフトウェアを利用しての主な解析テーマ パワーデバイスの熱流体解析・顧客熱設計サポート
弊社取り扱いソフトウェアを気に入っていただいている点 セミナーやコンテンツ等技術サポートが非常に充実
ローム 株式会社 様
14:10-14:40 設計経験者が語る開発プロセスの上流から下流へつなぐシミュレーション活用した熱設計
タイトル 設計経験者が語る開発プロセスの上流から下流へつなぐシミュレーション活用した熱設計
講演者 IDAJ
時間 14:10-14:40
概要 設計の初期構想から詳細設計、実測まで、段階に応じて最適な解析手法・モデル化詳細度を選んで使い分けます。
本講演ではデスクトップPCの熱設計を例に、構想段階で設計案を素早く広げて方向性を絞り込み、詳細設計ではパラメータスタディで要素の最適条件を詰め、終盤で実測と照合してモデル精度を高める流れをご紹介します。
IDAJ
14:40-15:20 休憩・ネットワーキング
15:20-15:50 機電一体型・電動ウォーターポンプの熱シミュレーションのモデル開発と運用と製品展開
タイトル 機電一体型・電動ウォーターポンプの熱シミュレーションのモデル開発と運用と製品展開
講演者 株式会社 アイシン 様
時間 15:20-15:50
概要 電動ウォーターポンプは、ECU・モータ・ポンプで構成されるが、この3つの部位で発熱と放熱が発生し、複雑な熱の流れをする。さらに、ECUの設計では、小型の電子部品を採用するなど小型化を進めており、背反となる熱について、シミュレーションが求められている。今回は、機電一体型のECUの熱設計を目的に、そのデジタルツールとなる熱シミュレーションのモデル開発と運用と製品展開の紹介をする。
①セットメーカの電子部品のモデル化
②ECUから機電一体へのモデル化と精度検証
③熱シミュレーションの運用と製品展開
■Simcetner Flotherm他弊社取扱いソフトウェアについて
弊社取り扱いのソフトウェアのご利用年数 8年
弊社取り扱いソフトウェアを利用しての主な解析テーマ 車載ECUの熱解析
弊社取り扱いソフトウェアを気に入っていただいている点 ・基板の熱解析の機能が豊富で優れている点
・解析技術4部のサポートが丁寧である点
株式会社 アイシン 様
15:50-16:35 回路解析と伝熱解析で進化する車載ECU開発(仮) 株式会社 デンソー 様
16:35-17:20 製品開発に熱流体解析を根付かせるために必要な3つのこと ~技術・組織・情報~
タイトル 製品開発に熱流体解析を根付かせるために必要な3つのこと ~技術・組織・情報~
講演者 IDAJ 技術顧問 国峯 尚樹
時間 16:35-17:20
概要 熱流体解析が熱設計に使われるようになって30年を経て、今やその活用状況や取り組みには企業間で大きな差が生まれています。シミュレーションを設計プロセスに必須な開発ツールとして定着させている企業とそうでない企業にはいくつかのアプローチの違いがあります。
本講ではここから読み取れる3つの大きな違いから、シミュレーションの活用に必要な事項について考察します。
IDAJ 技術顧問 国峯 尚樹
17:20-17:30 閉会のご挨拶 IDAJ