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リチウムイオン電池BMS(Battery Management Systems)の仮想検証

皆さま、こんにちは。

IDAJの森田です。

今回は、マルチフィジックス・システムシミュレーションツール「GT-SUITE」の開発元である、Gamma Technologiesが公開しているBLOGの内容を翻訳および一部改修・追記してご紹介します。


バッテリーマネジメントシステム(BMS)は、リチウムイオン電池パックをあらゆる運転条件下で安全かつ効率的、そして信頼性高く動作させるうえで重要な役割を担います。バッテリーシステムの複雑化と適用分野の拡大に伴い、BMSアルゴリズムの検証はますます困難になっています。

本記事では、以前のリチウムイオン電池(LIB)向けBMSアーキテクチャの解説を踏まえ、仮想化技術と予測モデルを活用して制御戦略の検証、充電挙動の最適化、開発工数の削減を実現する方法をご紹介します。最適化されたBMSは、下図に示す安全動作領域内でのバッテリーパックの運用を保証します。

リチウムイオン電池の動作領域

リチウムイオン電池の動作領域

BMS設計における主な課題の一つは、バッテリーパックがブラックボックスであることです。

バッテリーの劣化を示す最も重要な指標の多くは直接測定できません。そのためBMSは、通常、電圧・電流・温度の3つの外部入力を利用します。これらの情報から、充電状態(SOC)、出力状態(SOP)、劣化状態(SOH)を算出します。SOCとSOPは、それぞれ残容量と出力能力を示す正規化指標であり、SOHは残存寿命を示す正規化指標です。

BMS設計における課題(左列)と解決策(右列)

BMS設計における課題と解決策

ここで仮想化技術が役立ちます。上図はBMS設計者が直面する課題(左側)と、GT-SUITEエコシステムのツールを活用した解決策(右側)を示しています。

仮想化により、あらゆる条件下でのバッテリー挙動を予測できるオフラインのデジタルシャドウを作成できます。その結果、試験期間や開発コストを大幅に削減できます。こうした機能がBMS開発にどのような実践的な知見をもたらすのかを示すために、極限環境における充電戦略の検証例をご紹介します。

極限環境におけるCCCV充電戦略の検証

最適なコントローラーは、あらゆる条件下でバッテリーパックの安全性と性能を確保できなければなりません。これを示すため、異なる周囲温度と充電レート条件下で、定電流・定電圧充電(CCCV)プロトコルによるバッテリーパックのシミュレーションを実施しました。

定電流充電の例

定電流充電の例

96s3pのバッテリーパックは、実験データに基づいてキャリブレーションされたLG M50Tセルモデルをスケーリングして構築されています。最大電圧は400V、カットオフ電流は20Aに設定されています。モデルは、パック電圧、電流、温度、発熱量、SOC、Li析出ポテンシャルを出力します。

バッテリーパックの主要状態を監視する信号

バッテリーパックの主要状態を監視する信号

ここでのLi析出ポテンシャルは、過大な充電電流が印加されていることを示す重要な指標です。Li析出は、負極が過剰にリチウム化された場合や、リチウムイオンの拡散速度がインターカレーション速度を上回った場合に発生します。電極に取り込まれなかったリチウムイオンが金属リチウムとして析出し、内部抵抗の増加、容量低下、さらには熱暴走などの重大な安全リスクにつながります。

SEI層とリチウム析出の形成

SEI層とリチウム析出の形成

Li析出の可能性を評価する有力な方法が、Li析出ポテンシャルの監視です。一般的なリチウムイオン電池では、この状態量が0V以下になるとリチウム析出が熱力学的に生じる条件が成立します。この状態量は実験では直接測定できませんが、物理モデルに基づく予測モデルで把握できます。そのため、周囲条件ごとに最適な充電電流を評価できます。

CCCV充電における定電流(CC)区間の適切な充電負荷を評価するため、以下の条件と水準で総当たりDOE(Full Factorial DOE)を実施しました。

CCCV充電解析のための全因子DOE(実験計画法)設定

CCCV充電解析のための全因子DOE(実験計画法)設定

バッテリーパックの初期SOCは80%に設定し、初期温度は各ケースの周囲温度と同じに設定しました。そしてすべてのケースについて、定電圧(CV)充電区間が完了するまでシミュレーションを実施しました。

-10℃でのリチウム析出電位の出力結果

-10℃でのリチウム析出電位の出力結果

上図は-10℃条件でのLi析出ポテンシャルを示しており、充電電流が0.325Cと0.55Cの場合に、Li析出のリスクが大幅に高まることがわかります。これは低温下で導電性や拡散速度が低下し、内部抵抗が増加するためと考えられます。この結果から、CCCV充電戦略を採用する場合は、バッテリー温度がこの条件に達した際に充電電流を0.1Cに制限することが望ましいと考えられます。

同様の評価を他の基準温度ついても実施します。

25℃でのリチウム析出電位の出力結果

25℃でのリチウム析出電位の出力結果

上図は25℃条件でのLi析出ポテンシャルを示しており、充電電流を0.55Cまで高められることがわかります。またこの結果を活用して充電戦略やアルゴリズムをさらに最適化できます。

Li析出ポテンシャルに加え、物理モデルは発熱や温度についても詳細な解析を可能にします。本例で用いたモデルは、反応熱、電子抵抗によるジュール熱、イオン抵抗、濃度過電圧を考慮した発熱量を計算します。さらに高精度な熱モデルと連携することで、バッテリーパック温度を高い精度で予測できます。

60℃でのリチウム析出電位

60℃でのリチウム析出電位

上図は60℃条件でのLi析出ポテンシャルを示しており、高い充電レートでもLi析出リスクは低いことがわかります。しかし、各充電レートにおける温度を確認すると、0.775Cを超える充電レートではバッテリーパック温度が約4℃も上昇することが見てとれます。

60℃充電時のバッテリーパック温度

60℃充電時のバッテリーパック温度

一見すると大きな差ではありませんが、セル間の温度ばらつきや不均一な劣化、ホットスポット形成、安全上の問題につながる局所的な温度上昇の可能性を強く示唆しています。そのため、BMS設計者は充電電流を0.55Cに制限した方が良いでしょう。

この事例は、仮想化技術と予測型プラントモデルがBMS開発・検証の進め方を大きく変革できることを示しています。広範な運転条件で制御戦略を評価できるため、バッテリー挙動やシステム制約についてより深い理解が得られます。

物理モデルを活用することで、Li析出ポテンシャルや発熱量といった重要な内部状態を高精度に評価できます。その結果、充電制限、安全マージン、システム性能に関する意思決定の精度が向上します。また、大規模な実機試験への依存も低減できます。

最終的に、BMS開発ワークフローへ仮想ツールを統合することで、設計反復の高速化、コスト削減、そしてバッテリーライフサイクル全体を通じた性能への信頼性向上が実現します。今後、バッテリー技術や要求性能が進化し続ける中で、仮想化は安全で効率的なエネルギー貯蔵システム開発に不可欠な技術となるでしょう。

まとめ ~予測モデルによるBMS検証の高度化~

仮想化技術と予測型プラントモデルは、BMSの開発・検証方法を大きく変革しています。本ケースでは、温度条件ごとに最適な充電制限を設定することで、Li析出や熱的問題のリスクを低減できることが示されました。実験では測定できない重要な内部状態を可視化できるため、より適切な充電・制御戦略を策定できます。その結果、実機試験への依存を減らしながら、バッテリー性能と安全性への信頼性を高められます。

ミュレーション主導のバッテリー開発、ならびにシミュレーション主導エンジニアリングの最新情報については、当社へお気軽に音五あwくぁせください。

出典:Gamma Technologies Blog(2026年3月21日公開)

Virtual Validation of Lithium-Ion Battery Management Systems


 

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