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物理モデルベースデジタルツインの力をひも解く(その2)

皆さま、こんにちは。

IDAJの森田です。

マルチフィジックス・システムシミュレーションツール「GT-SUITE」の開発元である、Gamma Technologiesが公開しているBLOGの内容を翻訳および一部改修・追記してご紹介します。

今回は「物理モデルベースデジタルツインの力をひも解く」の2回目で”GT-SUITEとGT-AutoLionによる物理デジタルツインのモデリング ~バッテリー挙動と劣化解析~”についてご紹介します。

す。(前回の記事はこちらです)


GT-SUITEによるシステムモデル構築

運用の継続性に対する高精度な予測と、信頼性の高いSOH(State of Health)とRUL(Remaining Useful Life)推定の必要性が明確になると、次に重要なのが基盤となるモデルです。これらのモデルには、実際の物理現象を正確に再現できるだけの詳細さが求められる一方で、多数のデバイスから構成される大規模ネットワーク全体に対して、繰り返し実行できるだけの計算効率性が必要です。

モデリングのライフサイクルは、設計と妥当性確認の段階から始まります。この段階では、GT-SUITE上で包括的なシステムモデルを構築します。このシステムモデルには、太陽光発電の挙動、MPPT(Maximum Power Point Tracking)充電制御、筐体・電子機器・バッテリー間の熱相互作用、さらにデバイスの消費電力特性が含まれます。

太陽光による発電は、GT-SUITEの太陽電池セルテンプレートを使用してモデル化します。このテンプレートは、温度や日射量の変化によって、電圧-電流特性(V-Iカーブ)がどのように変化するかを再現することができます。環境条件は、地理座標に基づいて各地域の代表的な気象データを取得できる専用テンプレートを用いて設定されます。

エンジニアリング、ソフトウェア、デバイス検証のためのGT-SUITE・GT-AutoLionモデル

エンジニアリング、ソフトウェア、デバイス検証のためのGT-SUITE・GT-AutoLionモデル

GT-AutoLionによるバッテリー劣化解析

このシステムモデルの中心にあるのが、GT-AutoLionによって表現されるバッテリーです。GT-AutoLionは、リチウムイオン電池の動作を物理モデルに基づいて再現するもので、充放電の繰り返しによる劣化(サイクル劣化)や、時間経過による劣化(カレンダー劣化)を引き起こす電気化学反応まで表現できます。モデルのキャリブレーションには、屋外環境で使用されるデバイスを想定し、温度、SOC(State Of Charge)、充放電条件ごとに取得した実測の劣化データが使用されます。

GT-AutoLion は、形成(Formation)、リチウム析出(lithium Plating)、正極表面の皮膜成長(Cathode Film Growth)、活物質の孤立化(Active Material Isolation)といった主要な劣化メカニズムを物理ベースで再現します。これにより、実際の運転条件がキャリブレーション時の条件範囲を超えた場合でも、モデルの信頼性が維持することができます。

GT-AutoLionにおける代表的な劣化メカニズムと温度影響

GT-AutoLionにおける代表的な劣化メカニズムと温度影響

デジタルツインモデル

デジタルツインモデル

設計モデル(a)は、継続的なSOH予測のためには実デバイスのテレメトリデータ(b)、SOC予測のためには気象予報データ(c)、RUL予測のためには周囲環境およびデバイス負荷に対するフィッティング済み・再学習済み機械学習モデル(d)へ適応される

日次SOHState of Health)推定とデジタル・バッテリー・パスポート

デジタルツインは毎日、過去24時間分のテレメトリデータを取り込み、GT-AutoLionを用いてバッテリー内部状態を時間経過に沿って更新します。劣化メカニズムは、温度、SOC、休止期間、電流履歴に応じて進行します。その結果、残存容量や内部抵抗の新たな推定値、つまり、各デバイスが実際に置かれていた条件を反映した最新のSOH値が算出されます。

これらIoTデバイスに搭載されるバッテリーパック自体は小型ですが、この日次SOH推定ループによって、性能や耐久性に関する継続的な実使用履歴を蓄積することができます。

これは、EUバッテリー規則(EU Battery Regulation)における「デジタル・バッテリー・パスポート」の考え方にも合致しています。この制度では、2kWh以上の産業用・EV用バッテリーに対して、識別情報や化学特性といった固定情報に加え、SOHや使用履歴などのライフサイクルデータを保持することが求められています。また、モデルのバージョン、入力データ、出力データを各実行時に保存しておくことで、この仕組みをより強化できます。これによって、固定情報と継続的に更新される運用データを組み合わせることが可能となり、リユース・リサイクル判断に必要なトレーサビリティの向上や、バリューチェーン全体の関係者に対する監査性向上にもつながります。

GT-Playを活用したデバイスの日次SOH推定

GT-Playを活用したデバイスの日次SOH推定

まとめ

継続的に劣化状態が更新されるバッテリーを基盤とすることで、将来予測が可能になります。想定される温度変化や負荷パターンの統計モデルを用いて、デジタルツインを将来方向へ進展させ、残存寿命(RUL:Remaining Useful Life)を推定できます。これらの予測は、将来起こり得る複数のシナリオを評価するために、劣化が実際の運用に支障をきたす前の段階で、運用者が保守やバッテリー交換計画を立てられるようにします。

次回は・・・

このモデルが個別のデジタルツインとして最適化された後、どのようにIoTクラウド環境へシームレスに統合されるのかを解説します。その状態になると、デジタルツインが日次で動作する計算サービスとして機能し、デバイス管理や意思決定の自動化を支える役割を担うようになります。

 

出典:Gamma Technologies Blog(2026年4月29日公開)

Part 2 — Modeling Physical Digital Twins: Battery Behavior and Aging with GT‑SUITE and GT‑AutoLion


 

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