データセンターの電力システムを理解するには

皆さま、こんにちは。
IDAJの森田です。
今回は、マルチフィジックス・システムシミュレーションツール「GT-SUITE」の開発元である、Gamma Technologiesが公開しているBLOGの内容を翻訳および一部改修・追記してご紹介します。
2023年1月、マイクロソフトの大規模な障害が発生し、世界中で何百万人ものユーザーに混乱をきたしました。ユーザーは数時間にわたってMicrosoft TeamsやOutlook、その他のクラウドサービスにアクセスすることができませんでした。これは、小さな停電が瞬時に世界中に波及することを示す出来事の一つとなりました。もしもクラウドプロバイダーが数分のダウンタイムを設けたらどうなるのか・・・銀行システム、病院、AI駆動のアプリケーションなどが影響を受ける可能性があります。
調査によると、たとえ1時間の障害でも大規模なデータセンターは50万ドル以上の収益損失を被る可能性があると言われています。これを防ぐために、現代のデータセンターはシステムを途切れなく稼働させるための堅牢な電力システムに依存しています。この電力システムの発電から貯蔵、排出制御への変換といったすべてが、高い信頼性と効率を追求して設計されなければなりません。これらシステムを仮想的にテスト、検証、最適化し、あらゆる条件下でのパフォーマンスを確保するのに役立つのがシミュレーションです。
GT-SUITEのようなツールを使えば、電気、機械、熱システムを一つの環境で統合した完全な電力システムモデルを作成して、実際の挙動を予測し、データ駆動型の設計改善を行うことができます。
電力分配とマイクログリッドシステム
すべてのデータセンターの中心には電力分配システムがあります。このシステムは、グリッド、再生可能エネルギー源、地域の発電機を統合ネットワークに結び、安定した電力供給を確保しています。現在、多くの施設では複数の電源を組み合わせて、グリッドの不安定さやピーク需要時のバックアップを提供するためにマイクログリッドを使用しています。
下図で示す通り、GT-SUITEは電力分配ネットワーク全体のモデリングが可能です。トランス、インバーター、コンバーターを通過する電力の流れをシミュレートし、負荷分散を解析し、突然の故障に対するシステムの反応を予測します。これによって、効率を向上させコストを削減しつつ、中断のない稼働を維持するマイクログリッドの設計が可能になります。

GT-SUITEのシステム統合における能力とは?
エネルギー貯蔵・バッテリーシステム(UPS)
エネルギー貯蔵はデータセンターの電力システムのセーフティネットです。無停電電源(UPS:Uninterruptible Power Supply)システムには、発電機や代替電源が引き継がれるまで、停電時に即座に電力を供給する大容量バッテリーが使われています。これらのシステムは適切な規模で、迅速に対応でき、温度と充電の安定性を維持できなければなりません。
充放電サイクル、熱発生、経年劣化など、バッテリーシステムのあらゆる挙動がシミュレートできます。また異なるバッテリーの化学構造、冷却方法、制御戦略を比較し、寿命を延ばしつつ重要な局面での迅速な応答確保に向けた検討が可能になります。

GT-SUITEを使ったUPSモデリング
燃料電池のための電気分解と水素
ディーゼル発電機に代わるクリーンな代替電力源として水素ベースの電力源の利用が注目されています。電気分解システムで水素を生成し、その水素が燃料電池の動力となり、最小限の排出で電力を生産します。しかし、これらのシステムを統合するには、エネルギーの流れ、貯蔵、安全対策における慎重にバランスをとる必要があります。
電力システム内の電気分解システムと燃料電池システムをGT-SUITEでモデル化し、水素生成率、燃料電池の効率、既存電力システムとの相互作用を検証することで、将来に備えたデータセンター向けの信頼性の高いハイブリッドセットアップ設計をサポートします。

GT-SUITEで作成した水素燃料電池モデル
データセンター向けのエンジンと排出モデリング
バックアップエンジンはデータセンターの信頼性の基盤で、停電時の連続運転を保証するものです。性能は燃費、排出ガス、エネルギー消費、騒音に直接影響し、これらは持続可能性とコンプライアンスにおける重要な指標です。
GT-SUITEを使えば、燃料の種類の仮想的な検討、制御戦略の最適化、実装前に異なるシステム構成を評価するなど、コスト削減とリスクの最小化が可能です。また、サプライヤーが検証したGT-SUITEモデルをデータセンターのシミュレーションに統合し、実際のエンジン性能を反映したより高速で正確なシステムレベルの検討ができます。さらに、排気挙動や排出ガス制御性能の解析も可能となり、信頼性を損なうことなく環境基準を満たすクリーンで効率的なバックアップシステムの設計を支援します。

GT-SUITEを使ったエンジンアーキテクチャのシステムレベルシミュレーション
電力システムのデジタルツイン構築
すべてのシステムを一つのシミュレーションモデルに統合し、データセンターの電力システムのデジタルツインを作成できます。この仮想環境は実際の運用状況を忠実に再現しており、チームでさまざまな「もし~なら」というシナリオをテストし、制御戦略の最適化や長期的なパフォーマンスを予測できます。
GT-Playを使って、結果をインタラクティブに可視化することでエンジニアリングと運用チームの連携が促進され、より迅速な意思決定が可能になります。このアプローチは稼働時間の向上、エネルギー効率の向上、運用リスクの低減につながります。

デジタルツインのワークフロー
まとめ ~自信を持ってデジタル世界を動かす!~
データセンターは、それに接続する私たちの世界を動かすエンジンです。高性能なハードウェアを用意すること以上に、効率的かつ信頼性のある稼働を維持することが求められます。そのためには、シミュレーションに裏付けられたインテリジェントデザインが必要です。GT-SUITEを使えば、データセンターの電力システム全体を建設前にモデル化、テスト、最適化し、デジタルの未来の多くの課題に対応できるようになります。
ぜひこちらもご覧ください(IDAJ BLOG)
データセンター冷却の変革 ~物理ベースシミュレーションからAI制御へ~
GT-SUITEによるGoogle Deschutes CDUのモデリング:液冷システム成功への設計指針
出典:Gamma Technologies Blog(2025年10月22日公開)
What Powers a Data Center? Understanding the Power Systems
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