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材料知識情報管理・共有・活用のための“ゴールドソース”を構築

 

皆さま、こんにちは。

IDAJの河口です。

 

製品性能とコストをバランスよく最適化しつつ、環境規制リスクや環境負荷を考慮した製品設計が求められるようになり、信頼性の高い材料データとエンジニアが持つ材料知識や情報、培った経験を組み合わせて、競争力のある材料知識データベースを構築することが必要とされるようになりました。IDAJが2021年より取り扱いを開始した、材料知識データ管理・共有プラットフォームAnsys Granta MIは、製造業における材料知識共有のための最先端のプラットフォームで、素材を可視化して比較分析し、重要な材料データを正確に、素早く選定することができますので、材料開発に対する投資の無駄を省き、開発期間を短縮しつつ、投資対効果(ROI:Return on Investment)の向上に貢献します。ここでは、このAnsys Granta MIについてご紹介します。

材料の専門知識を生かした完全な材料データ管理ソリューション

1. 材料情報の検索や取得に膨大な時間を費やしていませんか?

ある材料の場合にはこのフォルダを検索、別の材料の場合はあっちのフォルダを検索、どこにも情報がない場合にはアプリケーションを起動して検索・・・やっとお目当ての材料情報を見つけたとしてもデータの抜け漏れがあったり、過去の実験データをはじめとした関連する従属情報がリンクされていないなど、材料データの検索と取得に多くの時間がかかったご経験はないでしょうか?日本では高圧洗浄機で有名なKärcher社では、開発業務における材料データ検索に年間600人日以上の工数を費やしていたと言われています(後述)。

また、過去の類似実験においてデータ取得経験がある材料を再び実験することになったり、材料情報を比較する場合には、メーカーごとに仕様やデータフォーマットが異なっているため、とりまとめるのに悪戦苦闘することがあります。さらには部署ごとにアクセスする材料データベースが異なっていたために、設計に不具合が生じたり、コストやリスクの管理が適切にできないこともありえます。

 

2. 単なる材料データベースではありません。

Ansys Grantaプロダクトの開発元であるGranta Design, Ltd.(2019年にANSYS, Inc.の子会社化)は、ケンブリッジ大学のMike Ashby教授とDavid Cebon教授が1994年に共同で設立した、材料情報テクノロジーという特別な領域を専門とする稀有な企業です。Ashby教授によって提唱されたAshby法を用いたツールやデータベース、プラットフォームを開発し、これまで多くの企業様へ材料情報に関するコンサルティングサービスを提供してきました。

Ashby法はもともと材料教育を変革するための手法として構築されました。それまでの材料工学に関する教育は科学主導(Science-Led)のものが多く、学生や研究者が、材料そのものの研究開発よりも材料を利用する製品開発に携わるという現実との間にギャップが存在していました。そこで、Ashby教授は材料の適用面にフォーカスした設計主導(Design-Led)の考え方を提唱し、Ashby法では、材料情報は製品設計開発の重大要素であると定義して、最初に材料を絞り込むのでなく設計開発プロセスの中で、柔軟かつ合理的に材料選定を進めることを目指しています。

Ansys Grantaプロダクトは、このAshby法の思想に基づいて設計されており、単なる材料データベースや参照ツールではなく、製品設計開発プロセスの効率化と高度化のためのプラットフォームとして位置付けられています。また、Granta Design社が材料情報テクノロジー分野で長年培ってきたエンジニアリングノウハウの多くが実装されており、材料データ管理に適したデータベース構造を用いて管理や入力が容易になるテンプレートを準備しています。

Ansys Granta MIは、適用範囲を設計開発領域から拡大し、企業内の様々な役割の方々にその価値をご提供することで、企業活動全体において効率的で合理的な一貫性のある意思決定をサポートします。材料エキスパートや設計開発エンジニア、シミュレーションエンジニア、購買担当、環境規制担当、製造担当ら全員が日々の業務の中で1つのゴールドソースを参照し、材料データを可視化・トレースして横断的かつ包括的に管理・活用しながら、企業内のコラボレーションを実現します。

3. Ansys Granta MIで先進的でスマートな材料情報マネージメントを実現します。

予算・資金管理/勤務データ/人事評価などの財務・人事領域や、CAD/CAM/CAEやPLMといった製品設計に関する領域、顧客情報管理領域、受発注領域など、非常に高いレベルでデジタル化が進んでいる領域が多々ある一方で、材料情報領域は、デジタル化という観点では、残念ながら多くの企業様で遅れを取っていることが多いと一般的に言われています。紙やスプレッドシートなど、フォーマットや利用方法がバラバラで、組織全体ではなく部門毎に、いわゆるレガシーな状態で材料情報が管理されている状況をよくお見受けします。

そんな中、いち早くAnsys Granta MIを導入・運用することで大きな恩恵を受けている企業様も多くいらっしゃいます。ここではAnsys Granta MIの導入事例とその効果をいくつかご紹介します。

 

1)本田技研工業様

“材料開発への活用については、材料情報管理システムにデータを体系的に格納することで、データクレンジングを大幅に削減できるため、マテリアルズインフォマティクスの活用を促進することにつながります。”

[導入効果]

・データクレンジングにかかる時間を80%短縮し作業効率を向上

・材料特性の評価にかかるコストを約40%削減

・従来の試行錯誤の開発に比べて試作材料数と試作数を50%削減し開発時間を短縮

 

(2)Rolls-Royce様

“時間の節約、最適化、廃棄物の削減によって、グローバルで年間約1,000万ドルの経済的利益が得られています。”
[導入効果]
・マテリアルエンジニアリングの効率化
・重複試験の阻止とその他のコスト削減
・レガシーデータの取得と再利用

 

3Boeing

“関連するすべてのデータを管理してリンクさせることで、より良い答えをより短時間で出すことができるようになりました。”
[導入効果]
・リスクのある化学物質を使用した仕様の照合に費やす人員を11名から1名に減員、照合時間は14時間から20分に短縮
・2仕様から6仕様に照合精度が向上

 

(4)Kärcher様

“どんな名前の材料であっても、それが何であるかを明確に把握できるようになりました。”
[導入効果]
・年間600人日以上に相当する情報検索作業量を削減
・同社製品の特長的な黄色の色相を材料レコードに入力して素早く判断
・年間約1,000件実施する材料実験のための試験材料の発注からデータ、最終レポートまでのあらゆる情報に誰もが簡単にアクセス可能な場所で保存・管理

 

5Ethicon

“Grantaのおかげでマルチタスクが可能になりました。その場で代替品を作ることができ、2~3日かかっていたものが数秒で済むようになりました。”
[導入効果]
・すべての素材データを一箇所に集約
・利用者からの問い合わせに対して迅速かつ正確な対応を実現
・製品開発時の十分な情報に基づいた迅速な選択と交換が可能

 

スマートな材料データマネージメントに求められる機能とは?

ここからはもう少し詳細にAnsys Granta MIの機能についてご紹介します。

1. 材料データ管理と検索

ある企業様での調査で、以下に示すいくつかの“ロス(無駄)”が発見されました。

①設計やシミュレーションに必要な材料データを検索する時間は1エンジニアあたり1週間に30分

②過去に収集した材料情報のうち40%しか再利用されていない

③過去に同様の材料テストを実施済の不必要な材料テストが20%も実施されていた

 

Ansys Granta MIの柔軟なデータインポート方式、情報のバージョン管理機能、データ毎の簡単なリンク機能、トレーサビリティ機能、データ処理の可視化ワークフローなどの優れた機能とユーザビリティによって、上記で示したような無駄を解消して損失を大幅に削減します。

 

Ansys Granta MIのデータ構造(イメージ)

Ansys Granta MIのデータ構造(イメージ)

 

 

2. 材料情報の比較と選択

設計開発プロセスにおいては、材料の特性を詳細に把握しつつ、いくつかの候補の中から合理的に適したものを選択することはよくあります。その際に、材料特性の詳細を知るためにいくつかのサプライヤーに連絡して情報が届くのを待ったり、異なる材料同士を比較するためにスプレッドシートを作成してから比較検討し、必要な材料特性が抜けていて再度データベースにアクセスして検索するといった作業は、Ansys Granta MIを使用すると全て必要ありません。Ansys Grantaプロダクトが保有している膨大な材料情報を含む材料データベース(MaterialUniverse)と、企業様が保有する社内データベースとを融合してリファレンスとしたり、直感的な検索・視覚化ツール、価格情報やCO2排出量を含む多くの性能項目ごとの可視化ツールで、個々の担当者が保持していた社内外に点在する材料に関する全ての情報を集約してマネージメントすることができます。

 

材料データ同士の比較閲覧

材料データ同士の比較閲覧

 

 

3. Additive Manufacturing(3D造形、付加製造)対応

3Dプリンターの活用拡大に伴って、Additive Manufacturing(以下AM)ならではの情報管理のニーズが高まっています。様々なAMマシンで多くの試作テストを行い多くのデータ生成がされると、これらの管理やトレーサビリティが重要になってきます。しかし、新しい技術であるだけに、そもそもどのようなデータを取得して管理すればよいのかわからず、どのような管理が適切なのかも不明です。

Ansys Granta MIにはAM専用のテンプレートと標準プロセスがありますので、原料となる粉体材料の物性や混合状況、ビルド時のマシン仕様やセッティング、気温等の周囲状況とログファイル、ビルド後の生成物のテスト環境とテスト仕様、結果等、AMプロセスの全工程のデータをトレース可能な状態でデータベース化することができます。Concept Laser M2、Renishaw AM250、SLM 280等の代表的なAM用マシンの情報は既に登録されていますので、データ入力の必要はありません。さらに、代表的な構造シミュレーションツールへのデータエクスポートが可能なので、シミュレーションプロセスともシームレスに連携します

Additive Manufacturingで管理すべきデータ(イメージ)

Additive Manufacturingで管理すべきデータ(イメージ)

 

4. 規制物質への対応

アスベストによる健康被害が社会問題として大きく着目されたことをご記憶の方も多くいらっしゃるかと思いますが、製品製造における有害物質の使用は、世界中の法律によって厳しく制限されています。鉛やカドミウムのような使用が制限される規制化学物質に指定される材料が、今後さらに拡大することが予想されます。

規制物質の使用は非常に大きなリスクを伴います。このリスクには、コンプライアンス違反による行政処分や刑事罰、損害賠償請求等のコストだけでなく、開発の遅延や再設計、製品リコールの可能性、企業ブランドイメージの毀損等が挙げられますが、これらを最小化するには莫大な労力とコストが必要であることは言うまでもありません。

定期的に更新されるAnsys Granta MIのナレッジデータベースは、100以上の国際的な法律、規制リスト、材料に関する広範な特性データ、コーティングに関する専門情報を網羅しています。これら最新の法規制と材料データをリンクすることで、材料に対する各規制の影響をすばやく理解することができます。さらにBOM Analyzerアプリを使用すると、製品開発プロセスで利用しているBOMを編集し、レポートとして出力することができますので、リスク要因を一覧で確認し、利用材料を変更した場合の影響や対策を検討することが可能です。前述のBoeing様では、ある物質が新たに規制リストに加わった際に、その物質が自社最終製品のどの部位や部品に使用されているかを照合するのに11名がかりで14時間かかっていたところ、Ansys Granta MIの利用によってたった1人の0.33時間の作業にまで短縮することができました。その効果がいかに大きいかをご理解いただけるかと思います。

 

5. 各種システムとのインテグレーション

Ansys Granta MIは、主要なCAD、CAE、PLM、SPDMのプラットフォームと連携することを前提に設計されていますので、主要なCADからAnsys Granta MIのデータベースを参照したり、主要なCAEツールへデータをエクスポートすることが可能です。さらに、CAD-PLM間のライブシンクロ機能や材料情報アップデートの際のアラートとワーニング機能がありますので、企業内の既存ツールやシステムと共存し、コラボレーションすることができます。

 

今回は、25年にわたって蓄積してきた材料の専門知識を生かして、材料に関する社内外の全ての情報を一箇所に集約し、柔軟に活用することが可能な材料データ管理ソリューションAnsys Granta MIをご紹介しました。Ansys Granta MIは、材料知識情報のデジタルトランスフォーメーション(DX:Digital Transformation)とマテリアルズインフォマティクス(MI:Materials Informatics)の加速を支援し、企業価値の向上に貢献します。本ソリューションに少しでもご興味がおありでしたら、是非お気軽に下記へお問合せください。

 

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