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効率的なEMC設計の重要なポイントは?

 

皆さま、こんんちは。

IDAJの中嶋です。

IoT製品や電気自動車(EV)分野における技術革新が著しく、関連デバイスにおけるEMCの問題が急増してきています。これらの課題に対してIDAJでは、解析サービス、測定・評価サービス、技術トレーニングなどのCAE分野だけにとどまらず、EMCに取り組まれている電気設計者の皆様を支援するために、電気設計に必要不可欠なEMC・電磁波通信ソリューションをトータルでご提供する体制を整えています。

Ansys電磁界解析ソリューションを活用した基板単体から車体全体におけるEMC解析の効率化

自動車や車載デバイスを例に、CAEの効率的な適用方法についてご紹介します。

(1)Ansys製品適用による基板単体から車体全体におけるEMC解析効率化

電気製品内には多くの場合「基板」が存在しますが、基板だけで構成されている電気電子デバイスは少なく、多くは筐体や機構部品、ケーブルなどといった各種部品と組み合わせて複合的にデバイスが構成されています。しかし、これら複合的な構成物をまとめて、一度に同じ条件でCAE解析するのは現実的ではありません。

効率的にEMC解析を進めるための第一段階は基板レベルでの解析、第二段階は基板と他部品が複合的に構成されたデバイスレベルでの解析、最終段階で構成物を組み合わせたシステムレベルでの解析というように、各段階において適切なCAEの活用を検討する必要があります。最も重要なことは、各段階における解析結果データをそのまま次の段階へ展開するのではなく、効率的に「検証したい物理特性」を解析できるようにモデル条件を設定することです。

 

各段階でAnsys SIwaveやAnsys HFSSを効率的に適用し、各段階を連成

各段階でAnsys SIwaveAnsys HFSSを効率的に適用し、各段階を連成

 

(2)パワーモジュールの伝導ノイズと放射ノイズ解析

「回路図」さえあれば回路の動作を検討することは可能ですが、EMC解析の場合は、それら設計情報だけでは不十分で、バスバーや筐体、各種ハーネス等、回路図に反映されていない電気的寄生成分も含めて検討する必要があります。そこで、Ansys Q3D Extractorを適用し、これら寄生成分を効率的に抽出して解析精度を上げていきます。また、伝導ノイズの解析結果データをもとにAnsys HFSSと連成させ、放射ノイズの解析も可能になります。Ansysの電磁界解析ソリューションを適用し、CISPR25の評価に対応した伝導ノイズと放射ノイズの効率的な解析に取り組んでいただければと思います。

 

Ansys Q3D Extractorによる伝導ノイズ解析とAnsys HFSS連成による放射ノイズ解析

Ansys Q3D Extractorによる伝導ノイズ解析とAnsys HFSS連成による放射ノイズ解析

 

プリント基板の現実的な放射ノイズ対策

基板設計におけるGNDプレーンのレイアウト検討は、EMC設計の中でも特に重要な項目の一つです。

一般的なノイズ対策手法として、ノイズ源から他の領域に伝導しないように、GNDプレーンを分離させることがあります。この手法を反映させると、ノイズ源から直接流れる電流の遮断効果があることがわかっていますが、一方で、GNDプレーンを分離したことでプレーン間に電位差が生じ、ノイズ放射のアンテナとなる可能性があります。一般的なEMC対策ルールであっても、適用条件に注意しなければ逆効果になるリスクがあるという認識を持っておくことが大切ですね。

DEMITASNXはEMC設計のフロントローディングには欠かせない検証ツールで、プリント基板上の配線パターンや電源GNDプレーンにおいて、EMCのリスクが高い個所を抽出する機能があります。このようなツールを効果的にご活用いただくのも一つのソリューションとなり得ます。

DEMITASNXの開発元であるNECソリューションイノベータ様が、エレクトロニクス実装学会で実施されたグループ討議の内容を題材に、基板におけるGNDプレーンの分離状況によって、ノイズ低減効果がどのように変化するかを検証された事例があります。ご興味がおありの方は、弊社営業担当までお気軽にご連絡ください。

 

DEMITASNXとSimcenter Flothermを使用したノイズと熱の協調設計

EMC設計を効率化するためには、いかにして設計フローの初期段階で「フロントローディング」に対応できるかがポイントです。しかし、電気設計においては、EMCだけではなく熱問題への対応も大きな課題となっており、両検討を同時に進めていくことは容易ではありません。

そこで、DEMITASNXと電子機器専用熱設計支援ツールSimcenter Flothermを組み合わせることで、EMC設計と熱設計のトレードオフ検討が可能になるだけではなく、電気設計フロー全体の効率化にもつながります。

DEMITASNXとSimcenter Flotherm適用による基板設計の検証効率化

DEMITASNXSimcenter Flotherm適用による基板設計の検証効率化

 

(1)悩ましいEMCと熱のトレードオフ検討

「EMC対策」の観点から基板設計のフロアプランを検討する場合、ノイズ源となるICは可能な限り基板中央に集約させる必要があり、この対策によって基板端からのノイズ放射効率を低減させることができます。しかし、「熱対策」の観点からは、熱源となるICが基板中央に集中するため逆効果です。つまり、これら両検討はトレードオフの関係となります。また、熱とEMCのどちらかの検証を先に実施して基板レイアウトを完了させると、他方の検証結果によっては、パターン修正に時間がかかる可能性があり、その場合は大きなロスコストにつながりかねません。

 

(2)DEMITASNXとSimcenter Flothermの適用による唯一のソリューション

実は、基板設計が完了していなくても、フロアプラン検討段階でDEMITASNXとSimcenter Flothermを同時に適用することができます。これによって、EMCと熱のトレードオフ検討が可能になり、両基準に対する適合解を効率的に検討しやすくなります。しかも、基板設計の初期段階において適用できるため、部品配置検討後のアートワーク作業の効率化だけでなく、結果として電気設計全体の効率化も実現することができます。

このような検討は、電磁界解析ツールとの組み合わせでは不可能であり、検証ツールであるDEMITASNXとSimcenter Flothermの連成による唯一の統合ソリューションです。

 

DEMITASNXとSimcenter Flotherm適用によるフロアプラン検討

DEMITASNXとSimcenter Flotherm適用によるフロアプラン検討

EMC設計/対策においてCAEを効率的に活用するためには? ~ノイズ放射の直感的理解~

EMC対策や設計の効率化にCAEツールは必要不可欠ですが、CAEツールだけでEMC問題を解決できる訳ではありません。それでは、EMC設計・対策においてどのようにCAEを適用すればEMC設計を効率化できるのか、その「考え方」とはどのようなものでしょうか?

(1)EMC設計・対策に必要な考え方とは

電気設計者であれば、対策現場でノイズ源が特定できずに困り果ててしまった経験をお持ちの方も少なくないのではないでしょうか。このような状況で電磁界解析ツールを適用しても、ツールが問題点を教えてくれることはありません。解析ツールで検討を進めるためには、ノイズ源の部位と電気的特性について仮説を立てて「解析モデル」を準備する必要があります。つまり、解析ツールがノイズ源を教えてはくれませんが、ノイズ源について仮説が立てられるのであれば、その仮説の妥当性について「検証」することが可能になります。

この仮説を立てるには、電磁気学や電磁波工学の知識が必要不可欠ですが、専門外の方が容易に修得できるとは言い難い分野です。しかし、EMC対策に直接関連した領域のみに絞ることによって、効率的に修得することは可能です。この考え方は、CAE適用の効率化だけではなくノウハウの蓄積や認識を共有化する上でも有効な方法になります。

(2)3つの法則と2つの力

EMC設計技術において電磁気学は重要な基盤技術ですが、全てを完全に習得する必要はありません。現場のEMC設計や対策では「どうすればノイズを低減できるのか」という要諦を理解することが重要なので、検討に必要な物理的特性とその関係性のみに絞ることで全体像を把握しやすくなります。

そのためには、電磁気学のベースとなるMaxwell方程式を使った数式展開のスキルは必要なく、高校物理で習う、“クーロン”、“アンペア”、“ファラデー”の3つの法則と、その法則によって電荷に及ぶ“クーロン力”と“ローレンツ力”の2つの力の関係性がポイントです。そして2つの力の内、「クーロン力の場」の変化に注目すると、ノイズ放射の原理がイメージしやすくなり、「ノイズ低減のメカニズム」の理解が容易になります。ここまで理解できれば、あとはその条件を検討対象に適用することで、ノイズのリスク判断やEMC検討の応用範囲を広げていくことができます。仮に、当初の仮説とは異なりノイズが低減しなくても、検証結果から適用した対策ルールの前提条件を修正することが可能です。

このような、EMCトレーニングコンテンツにご興味のあるお客様は、是非、こちらのページもあわせてご覧ください

 

3法則(クーロン、アンペア、ファラデー法則)適用による効率的な検討

3法則(クーロン、アンペア、ファラデー法則)適用による効率的な検討

 

 

 

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