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熱設計課題の複雑化に対応するための放熱技術 ~新しい解析技術構築とプロセス改善に関する提案~(その1)

 

皆さま、こんにちは。

IDAJの錦織です。

設計手戻りが発生する、実測と解析の値が合わないなど、電子機器製品の高発熱・高密度化に伴う熱設計課題の解決に向けて、これまで蓄積してきた熱設計に関する技術やノウハウを活用した様々なソリューションをご提供しています。

熱設計におけるトレンド

ありとあらゆるものに電子部品が使われるようになり、熱設計に対する要求は増加かつ高度化しています。また、電子機器にとっては決して適切でない環境下で使用されるケースを当然として織り込んでおく必要もあります。あわせて電子部品が使われる製品は、より小型で高機能な製品へと進化を遂げていますので、製品内での電子部品数および部品密度の増加、制御のための周波数の上昇など、熱問題がシビアかつ複雑化する条件が揃っています。

電子機器にとって適切な環境で使用され、小型化が進む前は、実機を利用した実験で発熱量を確認し、問題が発生すれば”対策”を追加することで製品を成立させることができました。また設計マージンは、半導体パッケージ、部品と個別に積み上げても放熱に差し支えない空間が確保されている限り、大きな問題に発展することもなかったはずです。しかし熱問題が複雑化してくると、実験によるトライアンドエラーでは解決や対処に時間がかかります。また熱に関する実験が比較的下流工程で実施されるため、いざ問題が発覚すれば対策部品を追加することになり、結果的に製品価格があがり製品競争力に大きく影響します。

このような状況を背景とした熱設計における変化を「熱設計におけるトレンド」としてとらえ、技術サポートやコンサルティングを通して、昨今特に増えてきた“ジュール発熱を考慮した過渡熱解析”と“熱設計プロセスの改善”を例に適用例をご紹介します。

ジュール発熱を考慮した過渡熱解析

カーボンニュートラル達成のために電動化技術は必須技術の一つです。小型化・高出力化のために炭化ケイ素や窒化ガリウムを材料とした次世代パワー半導体の採用が進んでいますが、熱という観点からは設計が難しい製品です。また、大電流を扱う電子機器では、ジュール発熱によって部品温度が高くなることがあります。相対値ではなく絶対値の信頼性が要求されるようになった熱シミュレーションでは、簡易モデルではなく詳細モデルを用いてジュール発熱の影響を考慮した高精度な熱解析が必要です。特に電動化の顕著な例とされる自動車では、過渡的に動作する製品が多く、コストを下げるためのマージンを減らした最適設計には、過渡解析を適用することで適切なマージンを見積もらなければなりません。

金属に電気が流れるときに熱が発生するジュール発熱を正確に見積もるには、大電流が流れる配線パターンを、可能な限り正確に再現させる必要があります。しかし一般的な熱解析ツールでは、配線パターンの解析には時間がかかる、またはそもそもそういった計算はできないことがあります。

Simcenter Flothermは詳細なジュール発熱解析に必要な配線パターンの再現が可能で、かつ高速ソルバーを搭載しているため短時間で計算することができます。解析メッシュに直交格子を用いるためメッシュ生成が非常に簡単で、アルゴリズムは電子機器の熱解析に最適化されています。時間刻みを粗めにしても計算結果が変わらないという特徴もスピードにおけるアドバンテージとなり、10倍から20倍速いケースもあります。

なぜ“過渡ジュール発熱”が熱設計におけるトレンドなのか?

なぜ“過渡ジュール発熱”が熱設計におけるトレンドなのか?

 

熱解析のためのオペレーションも簡単。配線パターン情報をSimcenter Flothermモデルに取り込み、電流の入口・出口、電流値を指定するだけです。ジュール発熱の熱解析は、ユーザー様からのご要望を受けてSimcenter Flotherm 2020.1以降さらに高速化され、使いやすくなりました。

基板のモデリング機能が充実、詳細なジュール発熱の熱解析が可能

基板のモデリング機能が充実、詳細なジュール発熱の熱解析が可能

 

1.ジュール発熱解析事例

水冷モジュールを搭載したIGBTを対象に、熱伝導、対流、輻射を定常で計算しました。このようなモデル規模であれば、わずか45分程度でジュール発熱解析が可能です。

IGBTモジュールを対象としたジュール発熱の解析事例

IGBTモジュールを対象としたジュール発熱の解析事例

 

バスバーを搭載したヒューズボックス対象に熱解析を実施しました。簡易モデルを使ってメッシュ数を10万程度まで抑えたため解析時間はわずか3分。それでも表面温度分布はもちろん、電流密度分布やジュール発熱の分布を確認することができます。

ヒューズボックスを対象としたジュール発熱の解析事例

ヒューズボックスを対象としたジュール発熱の解析事例

 

皆様がご担当されている製品に対するシミュレーションをイメージしていただきやすいように、実設計レベルの製品を対象とした解析における、解析モデル、メッシュ数、計算時間の一覧を示します。赤枠で囲んだ部分がジュール発熱の項目で、1千万メッシュ規模であれば8時間未満で実施できるケースが多く、終業前に解析を開始しておけば、翌日の始業時間には解析が終了し、結果確認やデータをまとめるといったルーティンを構築することが可能です。

(追加情報)通常、過渡解析はかなりの解析時間がかかる傾向にあります。ジュール発熱は含みませんが、Simcenter Flothermでは90分の過渡解析が4.2時間程度で終わっています。もちろん基板ジュール発熱と組み合わせることも可能で、その場合でも計算はかなり高速です。

ジュール発熱の解析事例

ジュール発熱の解析事例

 

2.大陽工業様×IDAJ熱解析ソリューション

近年、車載を含むパワエレ業界を中心に大電流をプリント基板に流すという要望が増え、大電流・高放熱対応基板の需要が大幅に拡大しています。そこで大電流基板の開発・設計・製造・販売を手掛ける大陽工業株式会社様とIDAJが協力した熱解析ソリューションをご提案しています。

大陽工業様ではSimcenter Flothermの基板モデルを作成して熱解析を実施いただき、IDAJは大陽工業様からご提供いただいた基板モデルに、筐体モデルを追加して熱解析することで、基板からシステム全体の熱解析を実施、パワーデバイスを効率的に冷却するための方針を示します。解析結果に関する報告書の他に、解析手順書、設定のコツなどのノウハウもあわせてお伝えします。

大陽工業様×IDAJ熱解析ソリューションの概要

大陽工業様×IDAJ熱解析ソリューションの概要

 

次回は、熱設計プロセスの改善についてご説明します。

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