課題分析からわかった熱設計基盤技術力の企業間格差(その2)
皆さま、こんにちは。
IDAJの錦織です。
前回からの続きで、今回は、実測と解析の乖離検証からご説明します。
熱設計プロセスの構築、実測との乖離検証、解析ツールの活用方法
2.実測と解析の乖離検証
実測と解析の結果に乖離があるという課題に対しては、特性要因図を用いて乖離の要因を調査します。特性要因図は、課題に対する原因究明に役立ちます。
特性とは、現在見えている結果のことを指し、要因とはその結果に影響を与えた要素のことです。元は製造業で起こり得る問題の原因を特定し、有効な対策を講じるための手法として広く用いられていましたが、最近は様々な業種で潜在的な問題を見つけるための手法として広く応用されています。
続いては、装置モデルで部品温度の実測値と解析値に20℃の乖離があるという事象を調査する例です。
まずは乖離の原因を絞り込むために、基板単体での実測と解析の結果を比較します。これにより乖離の原因が筐体側にあるか基板側にあるのかを切り分けることができます。この例では基板単体で比較しても乖離があったため、要因を基板モデルにまで絞り込むことができました。特性要因図に沿って、基板モデルに関係する要因を調査すると、配線パターンの分布を考慮していないことや実装部品を簡易モデルで作成したこと、さらに主要部品の発熱量だけを設定していたことが判明したため、これらの要因を適正化する方法を提示します。
こちらは、装置モデルで部品温度の実測値と解析値に20℃の乖離がある事象で、実測を調査する例です。
まずは温度測定の方法に乖離の原因がないかを確認します。サーモグラフィを使用して測定した温度と熱電対で測定した温度を比較すると、本例では両者の温度差が大きく、サーモグラフィの方が高いことがわかりました。これにより、正確な温度測定をできなかったことが推定できます。
原因を調査すると、熱電対の種類や線形、空調からの流れなどが影響していることが判明したため、これらの要因を適正化する方法を提示します。
これらはどちらも同じ事象ですが、全く異なる要因であることが判明しました。実測と解析の乖離の原因を調査するには相応の知識と経験が必要ですし、また多岐にわたる乖離要因から、寄与率の高い要因を抽出し、是正する(コリレーション)には手間がかかります。このようなお客様だけでは見つけにくい真の課題解決にあたっては、IDAJの熱設計・熱解析の経験が豊富なエンジニアが効率的にサポートします。
IDAJでは、簡単なヒーターや基板を題材に、実測と解析の誤差についてご説明するセミナーを開催しています。また、現在実施されている温度測定の方法をヒアリングし、問題がないかを確認した上で、測定マニュアルの改訂案をご提案することも可能です。
3.専用熱設計ツールの構築と活用
必要に応じてお客様専用の熱設計ツールを開発します。
ここでは、ケーヒン様(現日立アステモ様)での実施例をご紹介します。過去の機種データからECUの熱回路網モデルを作成し、Excel上でフィンや部品放熱のパラメータを簡単に変更し、熱回路網モデルを実行できる「放熱計算シート」を開発しました。これまで上流設計で実施していた3次元シミュレーションと置き換えることで、開発期間を大幅に短縮し、放熱設計の工数を90%削減することができました。
IDAJでは、ECU以外にもモータやLEDなど、製品の構造から放熱経路を割り出し、熱回路網を構築することで、設計上流での検討を効率化する温度予測ツールを作成も承ります。
4.熱シミュレーションの活用支援
熱シミュレーションの結果は解析モデルの作り方によって違ってくるため、結果が作業者に依存しないよう、モデル作成の手法に関するルールを決めておく必要があります。部品のタイプごとに、部品の熱特性を確認した上で、誰が解析しても同様の結果になるような熱モデルを作成するルール作りをお手伝いします。
5.カスタマイズした熱設計講習
熱設計の基礎から実践的な内容まで、幅広い知識を習得することを目指したセミナーや、社内の熱設計を取りまとめるエンジニアを育成するセミナーなど、お客様のご要望に応じたセミナーをご用意しています。もちろんお客様のニーズに合わせてオリジナルのプログラムを組むこともできます。
エントリーセミナー (無料) |
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定期講習会 (有料) |
まとめ
ここでは、熱設計プロセスの考え方と、プロセスを構築するためのIDAJのソリューションについてご紹介しました。プロセス全体の構築や、実測との乖離の検証、解析ツールの活用方法など、ご興味を持たれた方は、お気軽に下記までお問い合わせください。
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