“伝説のフリーキック”と流体構造連成解析
皆さま、こんにちは。
IDAJの水島です。
唐突ですが、ロベルトカルロスの“伝説のフリーキック”はご存じでしょうか?
サッカー史に語り継がれている、ブラジル代表の左サイドバック”ロベルトカルロス氏”がはるか昔、1997年に決めたゴールで、こちらの動画は、そのゴールをコンピュータで再現計算したものです。
ミソは、ボールの軌跡を与えて計算しているのではなく、初期速度や初期回転速度(つまりはキックによる入力ですね)を与え、あとは空気抵抗や重力によってボールの軌跡を運動方程式で計算し、予測している点です。
空気の流れを計算する数値流体力学(CFD)と剛体物の運動を連成していることから、流体構造連成(FSI=Fluid Structure Interaction)と呼んでいます。
弊社が販売しているCONVERGEというソフトウェアで計算しており、CFDを解きながら“メッシュ”を作成するという特長を存分に発揮した解析です。
従来のソフトウェアでは、流体空間を小さく分割するメッシュ(方程式を空間微分するために必要です)は、計算前に作成しておかなければならず、自由に物体が移動する流体計算はとても難しいものでした。
私には、「CFDをやりたい」 と思ったころ(数十年前)からの夢があります。
それは、スポーツと数値解析との融合。
レッドブルエアレースや、テレビゲームのマリオカートでは、最速タイムを出した機影をCGで重ね合わせるテレビ中継がすでに実現されていたり、野球やバレーボールでは計測したボールの初速、到達距離や軌跡を後追いで紹介したりしていますが、それをシミュレーション結果で行えないか、というアイディアです。
例えば、スキージャンプで、クラウチング姿勢で滑り降りてくる状態から飛び出した瞬間(サッツ、テイクオフと呼ばれます)の状態を入力し、即座にシミュレーションを実施、到達予想距離をテレビ中継画像に重ね合わせる、というイメージです。
V字に移行するための時間や、上体を起こす速度といったジャンパーの運動はあらかじめ仮定しておくしかなく、計算の入力にはできません。したがって、予測の成否に一喜一憂するのではなく、ジャンパーの技術や動きによって、予想よりも大幅に距離を伸ばしたことがわかる!など、スポーツ観戦に新たなエンターテインメント性をプラスすることができ、よりスポーツを楽しむためのインプットとして、十分に成立するのではと考えています。
現時点では、まだまだリアルタイム以上の計算速度は実現できていませんし、それなりの計算精度も必要となってくるでしょう。
ただ、「もし追い風がなかったら」 といった後追いでの予測はすでに可能であると考えています。
スポーツに「たられば」は禁物といわれますが、こんな「たられば」ならば面白いと思いませんか?
CFDが扱う流体は目に見えないため、それを見えるようにする=可視化することが求められます。
金メダルを獲得したスピードスケートのパシュートでは、どう隊列を組むと空気抵抗を最も減らせるか、CFDによって最適解を得ています。
「見えないものが見える」 、「見たかったことが見える」 という領域、夢が大きく広がります。
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