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CONVERGEによる流体解析をもっと幅広く、効率的に!

Jun Mizushima

皆さま、こんにちは。

IDAJの水島です。

CONVERGEは、数ある3D CFDソフトウェアの中でも、オートノマスメッシング、つまり完全な自動メッシュ生成という技術を最大の特長としているツールです。一般的なCFDのプリ作業では、解析領域を閉じるようにサーフェス形状を用意し、それをもとに内部のボリュームメッシュを作成するという作業が必要ですが、CONVERGEは後者を自動化することでプリ作業工数を削減することが可能です。

本記事では、CONVERGEのバージョンアップデート情報に加えて、クラウドプラットフォーム上で計算実行可能なCONVERGE Horizonのサービスをご紹介します。新たな計算テーマへのチャレンジのための情報と、計算実行環境の効率化に関する内容ですので、ぜひ最後までお付き合いいただけますと幸いです。

CONVERGE 4.0のトピックス

≪バージョン4.0の主な新機能・機能改善≫

  • 水素ガス噴射計算の安定化
  • 不足緩和ベース定常ソルバー
  • ストリーム間同期
  • 2次元軸対称ソルバー
  • Thin Gapモデル
  • 回転機器計算:スライディングメッシュ解法(MRFの回転補正)
  • VOF混相流モデルの拡張:Surface compression、相変化、Multi-Fluid Multi-Fieldモデル、Flow Profileモデル
  • 火花点火モデル:LESI、EDSIM
  • C3詳細反応メカニズムへのアクセス
  • 液相・固相詳細化学反応
  • バッテリー解析機能:SPM、短絡モデル、熱暴走パラメータフィッティングツール
  • ParaView in CONVERGE Studio
  • CONVERGE Studioのパネルカスタマイズ

これら様々な新機能や改善機能の中から、いくつかのトピックスをご紹介します。

1.水素ガス噴射計算の安定化

高圧水素ガス噴射の解析を行う際、雰囲気圧力が大気圧程度に低い条件、つまりノズル内圧が背圧よりも大きい不足膨張によりノズルから噴出される噴流が超音速となるような条件において、デフォルトの内部エネルギー保存設定よりも、全エネルギー保存設定のほうが現象再現性の面で望ましいとされます。しかし従来のバージョンでは、全エネルギー保存設定では噴流が異常に低温化しやすく、計算が発散するという不安定性が報告されていました。バージョン4.0ではこの不安定性が改善され、安定的に水素噴流現象を再現できるようになります。

1 水素噴流解析例

水素噴流解析例

2.不足緩和ベース定常ソルバー

定常解析機能が強化されました。従来から搭載されている定常ソルバーは擬似非定常法という手法で、厳密には時間刻み幅を使用した時間発展を解きます。ケースによっては時間刻み幅を大きくとって計算時間を短縮したくても、不安定になり、時間刻み幅をある程度抑えざるを得ないことがありました。新たに搭載された不足緩和ベースの定常ソルバーはその解き方を根本から見直し、時間進行を考慮しない代わりに、サイクルごとの更新量を不足緩和させる仕組みです。これによって様々なケースで大幅な計算時間短縮が期待されます。

3.2次元軸対称ソルバー

バーナー燃焼など軸対称状に物理量が分布するような現象の解析に適した機能強化です。このような解析の場合、計算負荷低減のためにセクター状に用意した3次元形状でメッシュ数を減らして計算することが一般的でしたが、新機能の軸対称ソルバーでは、用意する形状は円筒座標系におけるr軸-z軸の2軸で構成される断面形状だけで構いません。そのため2次元計算と同程度のメッシュ数負荷での計算が可能です。

2 不足緩和ベース定常ソルバーによる計算高速化(左)と2次元軸対称ソルバーの活用例(右)

不足緩和ベース定常ソルバーによる計算高速化(左)と2次元軸対称ソルバーの活用例(右)

4.Thin Gapモデル

軸受などの狭い隙間の流れを解くのに適したモデルが追加されました。狭い隙間内の速度・圧力分布をNavier Stokes方程式を使って精度良く解くには、隙間の高さ方向に細かいメッシュで解像する必要があり、メッシュ数が増えて計算負荷増大につながっていました。そこで、Navier Stokes方程式を潤滑理論にもとづき簡略化したReynolds方程式に置き換えて解くことで、高さ方向にメッシュ解像せずとも、つまり少ないメッシュ数で計算することができます。

3 Thin Gapモデルの軸受解析への活用例

Thin Gapモデルの軸受解析への活用例

5.C3詳細反応メカニズムへのアクセス

バージョン4.0では、CONVERGE Studio上で詳細反応メカニズムを取得することができるようになります。詳細反応メカニズムは、CONVERGEの開発元が共同設立したコンソーシアム“Computational Chemistry Consortium(C3)”で開発された大規模なメカニズムとなっており、炭化水素燃料に限らず水素やアンモニアにも対応しています。その中から計算に必要な燃料種に応じた範囲のメカニズムを抽出することが可能です。

4 C3メカニズムへのアクセス画面

C3メカニズムへのアクセス画面

6.回転機器計算: スライディングメッシュ解法(MRFの回転補正)

コンプレッサーやファンなど回転機器の計算への従来のアプローチの一つに、回転体周りの回転座標系とそれ以外の静止座標系で切り分けるMRF(Multiple Reference Frame)があります。しかし冷却油が軸供給式のモーターのように、回転座標系と静止座標系の界面での分布が非軸対称性をもつ現象に対してMRFは適用性がありませんでした。そこで登場したのがスライディングメッシュ解法(MRFの回転補正)です。座標系界面におけるやり取りを各時刻の回転位置で補正して処理します。これにより従来の”移動境界+直交メッシュ”のカットセル手法よりも低減された解析負荷(1,000rpm条件で約半減)で、同等の精度の結果が得られることが確認できました。

5 簡易モデルでのスライディングメッシュの効果(左)と軸給油式モーターでの効果(右)

簡易モデルでのスライディングメッシュの効果(左)と軸給油式モーターでの効果(右)

7.VOF混相流モデルの拡張

混相流モデルについて、幅広く機能が拡張されました。気液界面をなるべくシャープに捕捉するためのSurface Compression機能、気液相変化としてLee沸騰モデルやキャビテーション予測モデル、3相以上の多成分混合状態における相分離を解くためのMulti-Fluid Multi-Fieldモデル、海洋における波や風のプロファイルを境界条件として考慮できる機能がご利用いただけます。

6 VOF混相流モデルの拡張

VOF混相流モデルの拡張

左から、Lee沸騰モデルによる高温壁面からの水蒸気発生、キャビテーションモデルによる減圧沸騰、Multi-Fluid Multi-Fieldモデルによるタンク内の空気・水・油の分離

8.バッテリー解析機能の拡張

バッテリー分野の解析においても機能が追加されています。従来の等価回路網モデルよりも高い粒度でバッテリーセル内の発熱量分布をモデル化するSingle Particle Model(SPM)、等価回路モデルにおいて内部短絡によるジュール発熱を考慮する、熱暴走モデルのArrheniusパラメータを示差走査熱量測定(DSC)による実測結果をベースにフィッティングするツールがご利用いただけます。

7 バッテリー解析機能の拡張

バッテリー解析機能の拡張

左から、ラミネートセル内の発熱分布をSPMでモデル化、バッテリーセルの内部短絡による熱暴走進行、熱暴走パラメータフィッティングツール

9.CONVERGE Studioの機能拡張

CONVERGE Studioもユーザビリティ向上のため多くの機能が拡張されています。その中でも大きいのは、オープンソースの3Dポスト処理ツールであるParaViewがCONVERGE Studioのウインドウ内に内包される形でご利用いただけるようになることです。これによりプリ・ポスト処理のすべてが、CONVERGE Studioで行えるようになります。もちろんTecplot for CONVERGE(TFC)も引き続きご利用いただけますので、簡単なポスト処理はParaViewで、詳細な処理はTFCと、用途に応じて使いわけてください。

またソルバー機能が多様化した状況を踏まえて、設定パネルをユーザー自身でカスタマイズする機能が追加されました。例えば、頻繁にアクセスする項目だけを1つのウインドウにまとめる、ボタンを押すことでCONVERGE Studioの処理を自動化するスクリプトが実行されるといったことが可能になります。

8 CONVERGE Studioの機能拡張

CONVERGE Studioの機能拡張

ParaView in CONVERGE Studio(左)とパネルカスタマイズ(右)

クラウドプラットフォームCONVERGE Horizonサービス開始

2024年6月から、CONVERGEをクラウド上のハードウェアで実行できるプラットフォーム「CONVERGE Horizon」のご提供を開始しました。従来通り、お客様のお手元のオンプレミス環境での計算実行に加えて、CONVERGE Horizonではクラウド上の大量のハードウェアリソースを利用した計算実行が可能となります。

利用可能なCONVERGEバージョンは4.0だけでなく、3.1や3.0もプリインストールされています。

1.CONVERGE Horizonとは

CONVERGE Horizonは、CONVERGEの開発元であるConvergent Scienceが提供するクラウドプラットフォームで、定評のあるオラクルクラウド環境(OCI:Oracle Cloud Infrastructure)を使用、ログインして操作するWebポータルサイトはConvergent ScienceがCONVERGE専用に作成したものです。CONVERGEはプリインストールされていますので、アカウント取得後すぐに計算が実行できる環境が整っています。費用は従量課金制で、使った分にだけコストがかかります。ご自身でハードウェア環境を整えソフトウェアのインストールやライセンス設定、さらには、メンテナンスや老朽更新に煩わされることなくCONVERGEの計算環境が構築できます。

2.CONVERGE Horizon利用イメージ

利用方法はシンプルで、WebブラウザからHorizon専用ポータルサイトにアクセスし、計算実行や計算監視を行っていただきます。プリ・ポスト(計算設定や結果処理)はオンプレ環境をご利用ください。

9 CONVERGE Horizonでの計算実行の流れ

CONVERGE Horizonでの計算実行の流れ

ここではCONVERGE新バージョン4.0 とクラウドプラットフォームCONVERGE Horizonをご紹介させていただきました。CONVERGE Horizonの価格などのより詳細な情報は、動画でご説明しておりますので合わせてご覧ください。ご不明な点やご要望等ございましたら、お気軽に下記までお問い合わせくださいますようお願いいたします。

 

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