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CAE・MBDの効果と価値の最大化に向けて(その2)

 

皆さま、こんにちは。

IDAJの玉手です。

前回につづきで「CAE・MBDプロセス導入の4つの秘訣」の2つ目からご説明します。

2.優先順位をつけて成果を刈り取る

前回ご説明した通り、手戻りの少ない設計プロセスを実現する上では、段階的詳細化が重要なポイントですが、最終的なゴールであるシステム評価の導入における大きな手戻りの抑制や、モデルによる設計のすり合わせを実現するには数年単位での取り組みが必要となるため、効果が実感できるまでにはどうしても時間がかかります。

一方で、設計者は今すぐに解決しなければならない、日々の設計業務における課題を抱えています。したがって、取り組みを持続可能なものにするには、中長期的な取り組みだけでなく、短期的な取り組みで解決が可能な、クィックウィンズ(Quick Wins)を重ね、設計者にCAE・MBDの効果を実感してもらいながら、モチベーションを喚起することが重要となります。

プロセス改善の取り組みを成功させるには?

プロセス改善の取り組みを成功させるには?

取り組みの優先順位は、製品品質の改善や業務効率化といった課題に対する費用対効果の高さ、モデリングの難しさや要求精度といった技術的な難易度を踏まえて決定する必要があります。複数の製品やテーマを扱っている場合は、他の製品やテーマに対する横展開のしやすさも一つの基準になります。また設計部署と設計を進める上では、CAE・MBDの導入に対してもモチベーションの高い部署から取り組みをスタートし、そこでの成功体験を他部署に展開するというのも有効な方法です。

費用体効果

・性能向上に大きく寄与する取り組み

・手戻りの主要因を改善するための取り組み

・優先度の高い設計課題を解決する取り組み

技術的な難易度

・モデリングの難易度

・要求される解析精度

その他

・他の製品やテーマへの横展開のしやすさ

・設計者(関連部署)のモチベーション

もう一つの重要なポイントは、モデルの精度です。精度の高い完璧なモデルほど良いモデルだと考えがちですが、実際には使用目的によって適切なモデルの精度は変わります。例えば設計の相対的な優劣を判断するだけであれば絶対的な精度は必要なく、感度が正しく評価できていれば問題ありません。またキャリブレーションが必要なモデルであっても、試作後の機能改善を図る目的であれば十分に活用できる可能性があります。したがって最初から完璧な状態を目指すのではなく活用できるシーンにうまく適用しながら、継続的にモデル精度改善の取り組みを進めて、徐々にブラッシュアップしていくことが肝要だと言えます。

レベル

目的

求められる精度

ユースケース

Lev.0

現象の理解

要素および相互作用を正しく反映

各要素間の相互作用の影響および現象を正しく理解する

Lev.1

寄与度分析

寄与が正しく評価可能

各設計変数の感度を評価し、管理すべきパラメータを選定する

Lev.2

対策検討

定量評価にはキャリブレが必要

試作後の試験結果を基にキャリブレを行い、試作品の機能改善を図る

Lev.3

試作レス

キャリブレなしで定量評価可能

試験に代わってバーチャル評価を行う

モデルの精度

こちらは必要な要素技術に対して作成したロードマップのイメージです。ポイントは、製品の開発サイクルにあわせてモデルの改善ステップを示すことです。例えば定性評価が可能な初期のモデルを設計開発に適用し、その結果を元にモデルのブラッシュアップを図ります。このステップを繰り返すことで、徐々にモデルの精度を上げ、最終的に定量評価が可能なモデルへ昇華させます。

推進計画の立案

推進計画の立案

CAE・MBD導入に向けた取り組みを継続するには、その効果を示さなければなりません。製品品質や性能などクオリティに関する項目は、定量的な効果を事前に予測することが難しいケースが多いですが、作業工数の削減効果や、それに伴う開発費の削減効果などは可能な限り定量的に示すことで、費用対効果を明確にします。また、最終的な到達目標だけでなく、取り組みを進める過程で享受できる効果をマイルストーンごとに示すことも重要です。

取り組みの効果を示す

取り組みの効果を示す

3.プロジェクト体制を整える

当初の計画に沿って取り組みを完遂させるには、関連する部署でプロジェクトの目的とゴールを共有し、モチベーションを維持し続けることが必要です。また多くの場合は、日々の設計業務と並行して取り組むため、いかにしてプロジェクトの遂行に必要な人的リソースと予算を確保し続けるかも重要な問題の一つです。

これらの課題に対応するには推進計画の立案とともに、取り組みを継続するためのプロジェクト体制づくりが欠かせません。各部署が当事者意識をもってプロジェクトを遂行できるよう、設計を含めた関連する各部署からメンバーを招集し、メンバー間で進捗や課題を共有すると同時に、承認取り付けや必要なリソースの確保が円滑に行えるよう、決裁権のある意思決定者をトップとする組織体制を構築しておくことが理想です。

●課題

目的とゴールの共有

・関連する各部署でプロジェクトの目的とゴールを共有しモチベーションを維持し続ける

・各部署が当事者意識をもってプロジェクトを遂行する

リソースの確保

・プロジェクト遂行に必要な人的リソースを確保する

・プロジェクト遂行に必要な予算を確保する

●対策案

推進計画の立案

・実施すべき項目を重要度により分類し、優先的に取り組むべき項目を選定する

・マイルストーンを設定し、各段階で得られるであろう成果をできる限り事前に明確化する

プロジェクト体制

・関連する各部署からメンバーを招集し、メンバー間で進捗や課題を共有する

・決裁権のある意思決定者をトップとするステアリングコミッティを設置し、承認取り付けや必要なリソースを確保する

4.プロセスの前後関係を意識する

CAE・MBDが設計業務で恒常的に活用されている状態にするには、一つ一つの解析手順を標準化され、誰もが同じクオリティで評価できるようにする必要があります。CAE業務の標準化というと、モデリング手段、例えば解析メッシュの生成や解析手法などを定めることに主眼を置きがちですが、評価結果の品質を保つという観点では、結果の取得方法を定めるといったことも忘れてはなりません。

例えば、ある部品の温度を評価する際に、1点の温度を取得するのか、最大値を取得するのか、平均値を取得するのかによって結果が大きく異なります。また計算イタレーションを重ねた最後の結果で評価するのか、あるいはイタレーション平均で評価するのかによっても得られる値は異なります。もう一つ、標準化において大切なのが、解析条件の取得方法を定めることです。例えば電子基板の温度評価において部品の発熱量を与える場合、これをカタログ値から持ってくるのか、測定した結果を使用するのか、あるいは別途、回路シミュレーションを使って評価するのかをあらかじめ決めておかねばなりません。仮に回路シミュレーションの結果を活用するのであれば、順序としては熱よりも前に回路の評価が終わっていることが前提となります。

定型CAE業務の標準化

定型CAE業務の標準化

CAE・MBDを設計開発の中で活用しながら、円滑にプロセス回すためには、各タスクの手順を定めるだけでなく、前後あるいは同時に並走しているタスクとの主従関係を明確にし、プロセス全体を整流化する必要があります。これを怠ると、せっかく評価基準は確立できたのに、それに必要な情報を入手するたのオーバーヘッドが大きくなり、標準化したものの結果的に守られない、使われないという状態に陥る危険性があります。したがって、各プロセスのインプット、プロセス、アプトプットに加え、インプットをどこから得るのか、結果をどこに出力するのか、これらプロセスと情報の流れをしっかりと定めることが求められます。

また、このように整流化したプロセスは、最終的にSPDM(Simulation Process and Data Management)やPLM(Product Lifecycle Management)のプラットフォームでも管理可能な状態にあると言えます。仮に標準化や整流化が不十分な状態でプラットフォームで管理しようとしても管理ルール等が守られず、結果的に取り組みが形骸化する要因ともなります。

●課題

・必要な情報の入手方法がわからない
・技術継承ができず俗人化、スキル依存になる
・開発フローの形骸化(標準化したが守られない、使われない)

●改善策

・IPO(Input/Process/Output)の定義と見える化
・各プロセスの担当者の決定
・データや成果物の保存先および実行場所の決定
・標準的な設計時間の見える化
●効果
・設計の脱属人化とプロセスの定義
・工数管理、改善目標の共有
・DXの加速

 

業務プロセスを整流化する

業務プロセスを整流化する

まとめ

2回にわたってCAE・MBDの導入を成功させるための秘訣として、4つのポイントをご紹介しました。ポイントをまとめると下記の通りです。

1.「何を評価するか」を明確にする
要求分析&機能分析はモデリングの羅針盤
InputとOutputを明確化した上でモデルの粒度と範囲を決める
2.優先順位を付けて成果を刈り取る
“Quick Wins”を重ねることでモチベーションを喚起する
取り組みにより得られる効果をマイルストーンごとに示す
3.プロジェクト体制を整える
関連する各部署からメンバーを招集し課題を共有する
取り組みを持続できる体制を整える
4.プロセスの前後関係を意識する
標準化・整流化をしないと設計プロセスに定着しない
空いたリソースを新規技術開拓へ投入する

IDAJでは、現状の開発フローにおける様々な設計課題を解決し、高いレベルでの協調設計を実現することをMBDの真の目的ととらえ、お客様の環境に合わせたMBDプロセスの構築をサポートします。

企画から製品までの開発フロー全体をカバーしたソリューションをご提供

1次元システムシミュレーションと3次元詳細シミュレーションの技術とを融合してご提供することにより、システム設計から部品設計、実機適合までを一気通貫で連携しながら、より強力にMBDを推進していただくことが可能です。

推進計画の策定から技術構築まで、お客様のMBD推進を全面的にサポート

シミュレーション技術の構築やツールのご提供だけでなく、MBD推進の前提となる設計課題のヒアリングと分析、それを踏まえてのMBD推進計画の立案を実施します。

 

お客様の課題などをお聞かせいただき、その解決に向けて一緒に取り組ませていただければと存じます。

 

CAE技術は、もっと使える。モデルで設計者・開発者が「つながる」プロセスを実現。

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