機械学習・深層学習による予測技術や分析機能のご紹介
皆さま、こんにちは。
IDAJの清水です。
IDAJでは、2022年からmodeFRONTIERのpyCONSOLE機能を活用して、新しい機械学習・深層学習による予測技術や分析機能を搭載したアドオンツールをご提供しています。
アドオンツールは、委託業務などを通じて培ったAI技術のうち、お客様からのご要望の多いタスクを、コーディング無しにGUI上の操作のみで、だれでも簡単にご利用いただけることをコンセプトに開発しています。手軽に新しい機械学習・深層学習を利用することで、modeFRONTIERをより一層ご活用いただくことができます。
これまでもmodeFRONTIERでは取り扱いが難しい波形や画像を用いた応答曲面、新しいデータ分析手法などをご利用いただけましたが、2024年1月から新たな機能を加えたアドオンツールのご提供を開始していますのでここにご紹介します。
IDAJ DeepRSM add-on for pyCONSOLEとは?
IDAJ DeepRSM add-on for pyCONSOLE(以下、DeepRSM)では、modeFRONTIERでは取り扱いが難しい入出力形式の応答曲面が生成できます。画像を入力にパラメータ値を予測する「Image to Value」、入力変数から波形を予測する「Param to Wave」に加えて、画像を入力してスタイルの異なる画像を出力する「Image to Image」機能を追加しました。これによって断面画像を入力して、断面の圧力場や応力場を予測するといった使い方が可能です。
一般に深層学習による画像処理はCPUでは計算時間がかかるため、「Image to Image」機能を使用される場合は、NVIDIA製GPUの利用を推奨します。
IDAJ XAI add-on for pyCONSOLEとは?
IDAJ XAI add-on for pyCONSOLE(以下、XAI)は、modeFRONTIERにはない分析機能をご提供しています。応答曲面感度解析手法のLIMEとSHAP、テーブルデータ分析のMMD-critic、Autoencoderを活用した次元圧縮・データ分析機能に加えて、新たに深層学習の敵対的生成ネットワーク(GAN)を活用した統計的因果探索手法であるSAMを追加しました。
データ分析を行う際に、変数間の関係を知ることは重要です。modeFRONTIERには、相関分析機能が搭載されていますので変数間の相関係数から、変数間に何かしらの関連性があるかどうかを取得することができます。
一方で相関係数からは、どちらの変数が要因となってもう一方の変数に影響を与えているかまではわかりません。例えば、気温とアイスの販売数に相関があった場合、変数間の因果の向きは「気温が高いとアイスが売れる」と「アイスが売れると気温が高い」が挙げられますが、後者は必ずしも成り立つとは言えません。データ分析を行う上では、因果の向きに気を付けないと誤った結論を導き出す可能性があります。
SAMは操作が簡単で、テーブルデータを用意するだけで因果探索を実施することができます。SAMもCPUでは計算時間がかかるため、NVIDIA製GPUの利用を推奨します。
Image to Imageの適用事例(DeepRSM)
Image to Imageは、画像入力、画像出力の深層学習モデルを作成することができる機能です。モデル作成に必要な工程であるデータの前処理、学習、予測精度の確認をGUI操作で実施することができます。
ここでは、モーターのロータ形状画像から磁場コンター図を予測する深層学習モデル作成事例をご紹介します。本事例では、電磁場解析ソフトウェアのJMAGをソルバーとして使用し、ロータ形状画像と磁束密度マップのデータを作成しました。
1.データの可視化・前処理
収集したデータの可視化と前処理を行います。深層学習を行う際には、データ形式の変換や、データのスケーリング等の前処理を適切に行う必要があります。入出力データとする画像を読み込み、画像のリサイズ等の前処理を行います。
2.学習・推論
前処理終了後、深層学習モデルの学習を実行します。デフォルトの設定では、IDAJがあらかじめ規定した深層学習モデルによって学習が行われますが、ユーザーが定義したカスタムモデルでも学習が可能で、右側の予測誤差の推移から、学習の進行度合いを確認することができます。 このサンプルでの学習には、NVIDIA製GPUのQuadro T1000を用いて約8時間かかりました。
3.予測精度確認
学習後は、作成した深層学習モデルの予測結果の精度を確認します。各デザインに対する予測精度や真値画像と予測画像の比較、作成した深層学習モデルをexeファイルとしてエクスポートが可能です。エクスポートした深層学習モデルは、ライセンスフリーで利用できますので、マクロや既存のシステムに組み込み、設計者に展開するといった2次利用ができます。
統計的因果探索SAM(Structural Agnostic Modeling)の適用事例(XAI)
一般的に、因果関係を分析する際は、取り扱い分野のドメイン知識を用いて、人が因果の方向を表現した因果グラフを作成し、「因果推論」という方法を使って因果グラフの構造の確からしさを検証します。
一方で、「因果探索」は、分析者が因果関係の仮説を定義することなく、データから因果関係を推定する方法です。代表的な手法に、LiNGAMやベイジアンネットワークなどがあります。LiNGAMはデータの生成過程を線形性だと仮定し、因果関係を求める手法で、人間が作業することを前提とした手法になっています。ベイジアンネットワークは、ベイズ推定を基盤とした因果関係を求める手法です。LiNGAMに比べて因果関係を自動で探索する手法ですが、変数の数が増えると計算コストが指数関数的に増えるため、大規模なデータには向いていません。
統計的因果探索SAM(Structural Agnostic Modeling)は、敵対的生成ネットワークGANをベースとしており、深層学習を用いて確率的な因果探索を自動で行います。深層学習を利用することで、ベイジアンネットワークと比べて、大規模データでも現実的な時間で解くことができ、分析者は、簡単な操作で因果探索を行うことが可能です。深層学習を用いるため、NVIDIA製GPUの利用を推奨しています。
ここでは、SAMの使用方法を、エネルギー消費性能計算プログラムWEBPROの最適化データを用いてご紹介します。
1.変数の選択
ワークテーブルから因果探索に含める変数を選択します。
2.統計的因果探索アルゴリズムSAMの学習
変数の選択後、SAMの学習を実行します。SAMは確率的因果探索であるため、元となる乱数シードで得られる結果が変わります。そこで、乱数シードを変えてモデルの学習を複数回行い、その平均を結果とします。
3.因果構造マトリクスの確認
SAMの学習が終わると、因果構造マトリクスが得られます。SAMの因果構造マトリクスの要素は因果効果の存在確率です。要素は縦軸→横軸の因果の存在確率を表します。
以下では、「断熱材_厚さ_R1」→「BPI」の因果マトリクスの要素が0.99と高く、対応する標準偏差は0.01とばらつきが少ないことが読み取れます。つまり「断熱材_厚さ_R1」→「BPI」の因果効果が高い確率で存在しており、その情報の信頼度が高いと判断できます。
4.因果ダイアグラムの確認
因果構造マトリクスから因果ダイアグラムを描画できます。マトリクスでは視認性の悪かった情報を閾値や注目する変数などを条件に整理できますので、全体図を俯瞰して見るほか、ある変数に注目して直接作用する変数だけを抽出して描画するといった操作が可能です。
ここでは、2024年1月からDeepRSMに新たに加わったImage to Imageと、XAIに加わったSAMをご紹介しました。
DeepRSMはmodeFRONTIER応用 深層学習基礎編(1日間)、XAIはmodeFRONTIER応用 XAI編(1日間)で各手法についての解説とサンプル問題での操作体験を個別講習形式でご提供しています。ご受講後には、最長で3か月間のトライアルライセンスを発行いたしますので、職場でお客様の課題に対する適用性をご確認いただくことができます。ご興味がおありの方は、お気軽に下記までご相談、お問い合わせください。
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