ノッキング軽減のために
皆さま、こんにちは。
IDAJの水島です。
今回は、オートノマスメッシング熱流体解析プログラム「CONVERGE」の開発元である、Convergent Scienceが公開しているBLOGの内容を翻訳してご紹介します。
Convergent Science GmbHは、オーストリアのリンツに本拠地を置き、難題に取り組むヨーロッパのユーザーと共同研究者をサポートしています。現代の高効率火花点火式(SI)内燃機関の設計において、最も興味深く、やりがいのある問題の1つは、ノッキング予測とノッキング軽減手法の開発です。2018年のヨーロッパCONVERGEユーザーカンファレンス(EUC) では、数名のスピーカーがエンジンのノッキングについての研究を発表してくださいました。
冬に、私が車をコールドスタートさせたとき、大きなノッキング音が聞こえました。通常、ノッキングは、安定領域の境界近くで動作するエンジンにより多くみられます。ノッキングで最初に発生するのが、火炎面すぐ先の末端ガスの自発的な第二の着火(自着火)です。この自着火からの圧力波が燃焼室の壁にぶつかると、多くの場合ノッキング音を出し、エンジンを損傷させます。しかし、重要な局所条件を正確に計算すると同時に、燃焼室を高速で移動する圧力波を追う必要があるため、ノッキングのシミュレーションを行うことは困難です。
CONVERGEは、これらの条件を容易にモデル化することを可能にする、オートノマスメッシング、フルサイクルシミュレーション、そして柔軟な境界条件を提供します。解適合格子 (Adaptive Mesh Refinement:AMR)を使用すると、セルを追加し、局所圧力差、熱発生率、および自着火を示すラジカル類の化学種の質量分率といったノッキング関連のパラメータが急激に変化している領域に、時間を費やすことができます。CONVERGEは、複数の成分で構成されたサロゲート燃料の使用、エンジンの物理的パラメータの変更、多様な動作条件で、自着火を予測することができます。
EUCの基調講演においてPorsche EngineeringのVincenzo Bevilacqua氏は、ノッキングに寄与する可能性のある因子を評価し、明確なノッキングの限界を特定する、興味深い新たなアプローチ(ノッキング指標の再定義)について紹介されました。また別の研究では、トリノ工科大学の研究者たちが、ノッキング軽減手法として水の注入の実現可能性を調査しました。さらに、アーヘン工科大学のMax Mally氏他は、RANS(レイノルズ平均モデル)を使用して、様々な排出ガス再循環(EGR)率で点火タイミング掃引法を用いて、移動する圧力波を捉え、燃焼とノッキングの再現に成功しました。
出典: Mally, M., Gunterh, M., and Pischinger, S., “Numerical Study of Knock Inhibition with Cooled Exhaust Gas Recirculation,” CONVERGE User Conference-Europe, Bologna, Italy, March 19-23, 2018.
リーンバーン、ターボチャージャーを使用して、あるいは高圧縮比で運転して、スパークタイミングを進角させると、ノッキングが起こる可能性を高めることがあります。しかし、SIエンジンのサイクルはそれぞれ異なるため、自着火は一貫した現象ではありません。SIエンジンのシミュレーションを行う場合、複数のサイクルのシミュレーションを行って、ノッキングが発生しそうな動作条件の限界を特定することが重要です。幸い、CONVERGEでは容易に複数サイクルのシミュレーションを行うことができます!
ノッキングはエンジン設計における制限要因の一つです。それは、熱効率を向上させ、エンジンの小型化を可能にする技術の多くが、ノッキング発生の可能性を高めるからです。Convergent Scienceは、困難な問題を解決するお手伝いをします。頑張って成功につなげましょう!
出典:CONVERGENT SCIENCE BLOG(2019年1月29日公開)
(一部編集して翻訳)WHAT’S KNOCKIN’ IN EUROPE?
主任研究員 Sarani Rangarajan
CONVERGEをご存じでない皆様、是非こちらをご視聴ください。CONVERGEの概要について9分で確認いただけます。
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