「形状重複許容機能」で形状同士が接触する複雑流れ場の解析を簡単に!
皆さま、こんにちは。
IDAJの水島です。
CONVERGEは、数ある3D CFDソフトウェアの中でも、オートノマスメッシング、つまり完全な自動メッシュ生成という技術を最大の特長としているツールです。一般的なCFDのプリ作業では、解析領域を閉じるようにサーフェス形状を用意し、それをもとに内部のボリュームメッシュを作成するという作業が必要ですが、CONVERGEは後者を自動化することでプリ作業工数を削減することが可能です。
とはいっても、サーフェス形状を用意するという作業にはまだ改善の余地があります。完全に解析領域を閉じきった形状で用意する必要があるため、面の欠落や面ごとの交差が許容されない品質が要求されます。そのため複雑形状を解析対象とする場合には、CADソフトウェア上で予め流体抽出をしておくなど、高品質な形状を用意するための作業が欠かせませんでした。
そこで有用なのが新機能「形状重複許容機能」。有限体積法ベースのCFDツールとしては画期的な機能です。特に複数部品を有する形状では、部品同士の接触箇所が1つの連続したサーフェスとして自動処理されますので、ユーザー側の形状修正が不要となり、さらなる工数削減が期待できます。

CONVERGEによるメッシュ作成工数削減
形状重複許容機能の概要
部品のサーフェスごとに囲まれた領域をボリュームとみなし、そのボリューム間のブーリアン演算をおこなうことで、和や積の解析領域が自動的に定義されます。
まずはいくつかの簡単な例で確認してみましょう。
1.流路の結合(和のブーリアン演算)
太い円管(メインチャネル)に対して流体供給のための細い管(サブチャネル)がいくつも結合しているケースです。チャネル同士が重複する状態では、従来は形状エラーとなるため各チャネルの接続箇所の三角形格子が連続的になるように形状を修正する必要がありました。しかし形状重複許容機能を設定すれば、形状はそのままに計算することができるようになります。

流路の結合形状における計算
以下は、どのように形状同士が処理されているかを表した図です。ここで「∪」記号は集合論の和集合(OR)で、各サーフェスで囲まれたボリューム同士の和集合をとった結果が緑色のボリュームとなり、この形状を対象に計算が行われます。

流路の結合形状におけるブーリアン演算
2.流路と遮蔽物の結合(積のブーリアン演算)
続いてはサブチャネルのかわりに、メインチャネル内の流れを遮蔽する邪魔板が存在するケースを考えます。このケースでも従来は形状エラーとなりますが、形状重複許容機能でメインチャネル内の邪魔板を考慮した流れ計算ができるようになります。

流路と遮蔽物の結合形状における計算
こちらは、ブーリアン演算の処理を模式的に表した図です。邪魔板の外側のボリューム(黄色)とメインチャネル内のボリューム(灰色)同士で積集合(∩記号、AND)をとり、その結果、緑色のボリュームが計算対象となる形状になります。
[補足]黄色のボリュームは邪魔板サーフェスの外側を示していますが、これはサーフェスの法線方向が外側を向いていることに由来します。法線方向が内側を向いているとボリュームも内側になりますが、その場合はメインチャネルのボリューム(灰色)と積集合を取ると、意図しない形状での計算となるため外側に向けたボリュームで積集合をとっています。

流路と遮蔽物の結合形状におけるブーリアン演算
形状重複許容機能を活用した解析例
この機能は形状位置が時間変化する移動境界問題にも適用できるため、特に流体領域トポロジーが大きく変動する回転機器分野における活用が期待できます。そこで回転機器を対象とした解析例を2つご紹介します。
1.スクロールコンプレッサー
スクロールコンプレッサーは、固定スクロールに対して旋回スクロールがはりつくように駆動しますが、両スクロール間の形状交差を許容することで、時々刻々と変化する圧縮室領域がすきまなく分断され、流体の漏れを完全に抑えることができます。

スクロールコンプレッサーへの適用例
2.トロコイドポンプ
インナーローター、アウターローターともに回転する機構でも同じく、両ローター間の交差を許容しています。

トロコイドポンプへの適用例
いずれの解析例でも形状の交差を許容することで、閉じられた流体が一切の漏れなく圧縮・膨張することを実現しています。従来の解析手法では形状交差がエラーとなるがゆえに、形状同士が交差しないよう意図的に形状寸法を微調整し、また微小隙間部で発生する漏れの抑制のために計算上、付加的な圧損を考慮するというテクニックが必要でした。それが本機能によって完全に漏れを抑えることができ、理想的な条件での流体計算が可能となったため、設計業務へのCONVERGEの適用可能性がより高まったものと考えています。
CONVERGE Studioでの設定は簡単です。まず、形状同士が重複するように各サーフェスを用意し、2つのパラメータを設定するだけです。
ここではCONVERGE 3.1の新機能である「形状重複許容機能」をご紹介しました。
この機能によって複雑形状のモデル作成の容易さが飛躍的に向上していますので、これまではトライを諦めていたいくつかの解析が実現可能となるかもしれません。ぜひお試しいただけますと幸いです。本機能の詳細説明や各種サンプルを希望の方は、下記あてにお問い合わせください。
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