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ポンプとコンプレッサのためのCONVERGE:設計最適化のためのエンジニアリングソリューション

 

皆さま、こんにちは。

IDAJの水島です。

 

今回は、オートノマスメッシング熱流体解析プログラム「CONVERGE」の開発元である、Convergent Scienceが公開しているBLOGの内容を翻訳してご紹介します。

CONVERGEをご利用いただければ、ポンプ、コンプレッサ、ガスタービンなどの回転機械や、これまでのCFDソフトウェアでは難易度が高いとされてきた複雑な動きを伴う工業製品の流体解析でボトルネックとなっていたメッシュ生成に時間をかけることがなくなります。メッシュ生成作業に費やしていた時間を計算結果の評価や改善策の検討などといった、エンジニアでなければできない、より本質的な作業に使っていただくことができます。


 

メーカーの多くは、品質の高い製品をつくる、生産性を上げる、そしてコストを削減するといった業界全体で共通した目標を持っています。ポンプとコンプレッサのビジネスにおいては、これらの目標を達成するために、メーカーは機械そのものの複雑さと闘わなくてはなりません。入り組んだ形状、動く部品、パーツ間の厳格なクリアランスを考えれば、効率が良く、また信頼性の高いポンプとコンプレッサを設計するのは容易でないことは明らかです。

プロトタイプを作ってテストをすることで装置の精度を検証していると、時間もコストもかかります。また、設計検討段階においては、機械加工や様々な部品の交換などでコストはさらに膨らみます。さらに装置の中に配置できる計器の数や取り付け場所には制限があり、機械を十分に特徴付けるのが難しくなる可能性があります。新しいテストと製造手法は、このプロセスを合理化するのに役立つものと考えますが、別のアプローチの余地が存在することも事実です。

遠心ポンプ

遠心ポンプ

 

計算流体力学(Computational Fluid Dynamics、CFD)は、ポンプとコンプレッサの設計に大きなメリットをもたらします。CFDシミュレーションによって、機械内部の流体の挙動、流体と固体部品の相互作用について貴重な洞察を得ることができます。そしてCONVERGE CFDソフトウェアはこのタスクによく適しています。

複雑な形状と移動境界を持つシステムの中の、3次元の流体流れをモデル化するよう意図されているため、任意の容積型移送式ポンプ、動的ポンプ、コンプレッサのシミュレーションを行うことができます。また、一連の高度なモデルによって、効率と信頼性に影響をおよぼすサージ、圧力脈動、キャビテーション、振動などの物理現象を計算によって調査し、最適な機械を設計することを可能にします。

 

CONVERGEの価値とは?

CFDは、稼働中の機械内部の働きを可視化し、圧力、温度、速度、流体のプロパティについて、物理的測定の制限なくデータを生成してくれます。実験では測定が困難あるいは不可能な領域も含めて、流れ場全体をCFDで解析します。このCFDによる追加のデータによって、ポンプとコンプレッサを包括的に特徴付け、また改良すべき領域をピンポイントで示すことが可能になります。

CONVERGEは予測的CFD技術をリードしています。ですから、これまでにないポンプとコンプレッサの設計を解析した場合でも結果を信頼することができます。プロトタイプを作成しテストするのに比べ、シミュレーションは高速で安上がりです。しかもコンピュータでモデル化した形状を修正するのはわけありません。仮想的に設計の反復を行い、最も有望な設計候補のプロトタイプを作成すれば、設計プロセス関連のコストを減らすことができます。 

3次元CFDが実験手法に比べて高速である一方で、たいていの設計プロセスに組み込まれている1次元あるいは2次元解析ツールに比べると、一般的に速度は遅くなります。しかし、1次元あるいは2次元手法は、3次元の物理的流れの特質を捉える能力に元来限りがあるため、性能にマイナスの影響をもたらす重要な流れ現象を見逃す可能性があります。 

CONVERGEのオートノマスメッシング機能は、3Dポンプやコンプレッサのシミュレーション設定にかかる時間を大幅に削減します。手動でメッシュを作成するという、多くのCFDプログラムにおける標準的な方法では、特にポンプやコンプレッサのように複雑な移動形状を持つケースの場合、何週間もかかる可能性があります。CONVERGE のオートノマスメッシングを使うと、簡単ないくつかのユーザー定義のパラメータを基に、自動で最適な直交メッシュを生成し、ユーザーのメッシュ作成にかかる時間を事実上ゼロにします。 

さらに今日、使用可能な計算リソースが増えたことで、CFDシミュレーションを実行するのに必要な時間が大幅に削減されています。CONVERGEは特に、高度な並列シミュレーションを多くのプロセッサで実行できる仕様になっており、コア数が何千とある場合に極めて優れたスケーリングを行います。またConvergent Scienceは、手ごろな価格で最新の計算リソースへのオンデマンドアクセスを提供するクラウドサービスプロバイダーとパートナーシップを結び、ユーザーのシミュレーションの高速化が容易に行えるようにしています。

 

検証ケース

有用なシミュレーション結果を取得するには、実世界の物理現象を正確に捉えることが重要です。CONVERGEには、ロバストな流体構造連成(FSI)モデル化機能が備わっています。例えば、バルク流とバルブの相互作用のシミュレーションを行って、衝撃速度、疲労、破壊点を予測します。また、空間的に変化する表面温度分配を解析する固体と流体の熱連成(CHT)モデル、キャビテーション、オイル飛散、その他の注目する自由表面流れを研究する多相モデルがあります。 

CONVERGEは、非常に多くのタイプのコンプレッサとポンプで妥当性が確認されています[1]-[10]。以下に一般的な適用例を2つ挙げます。 

スクロールコンプレッサ

スクロールコンプレッサは空調システムによく使われています。この機械の今日の主要な設計目標は、騒音の低減と効率の向上です。スクロールコンプレッサは、静止状態のスクロールと軌道周回のスクロールから成り、モデル化するのが難しい複雑なシステムで構成されています。移動境界のシミュレーションを行うために移動メッシュを用いるコードもありますが、これによって、結果の精度を下げる拡散誤差が発生する可能性があります。CONVERGEは、各時間ステップで静止メッシュを自動的に生成して移動境界を調整するため、数値精度が上がります。さらに、独自の直交カットセル手法を用いて、コンプレッサ形状がどんなに複雑であっても完璧に表現します。 

この研究1でCONVERGEは、変形リードバルブを持つスクロールコンプレッサのシミュレーションに使用されています。FSIモデルを使用し、吐出リードバルブの動きを捉えています。図1は、スクロールコンプレッサを通過する質量流量率のCFD予測と実験値を比較したもので、シミュレーション結果と実験結果は良好に一致しています。 

この手法は、形状へのパラメータ変更を簡単に行うことが可能な、設計の最適化段階で特に役立ちます。また、解適合格子(AMR)を使用すると、妥当な計算コストで、注目する物理現象を正確に捉えることができます。

 

速度で色付けされたメッシュを重ね合わせた、スクロールコンプレッサのシミュレーションの代表的な切断面

速度で色付けされたメッシュを重ね合わせた、スクロールコンプレッサのシミュレーションの代表的な切断面

質量流量率の実験結果(黒の四角と三角)とCONVERGEでのシミュレーション結果1(ピンクの丸)

質量流量率の実験結果(黒の四角と三角)とCONVERGEでのシミュレーション結果[1](ピンクの丸)

 

 

スクリューコンプレッサ

対のスクリューコンプレッサには、反対方向に回転するヘリカルスクリューがあり、工業用、製造業用、冷凍用に適用されています。スクリューコンプレッサと他の多くのポンプやコンプレッサを設計する際の共通の課題は、パーツ間の厳格なクリアランスです。どうしても室間で何らかの漏れ流れが発生し、装置の性能に影響を及ぼします。

CONVERGEでは、これら小さな隙間の流体の挙動を捉えるために方法である局所メッシュ細分割とAMRを使えば、直接解析することができます。この方法の精度は非常に高いものの、計算コストもまた高くなる可能性があります。別のアプローチとしては、CONVERGEの隙間モデルの1つを使用して、隙間を完全に解析することなく漏れ流れを説明する方法があります。この方法であれば、精度と時間コストのバランスがとれ、必要な結果を必要な時に得ることができます。

スクリューコンプレッサを設計する際にもう1つ考慮すべきことは熱膨張です。流体と固体壁間の熱伝達は、ローター長さの端から端までクリアランスが変化することを意味します。CONVERGEのCHTモデルは、固体と流体間の熱伝達を捉えて、この現象を説明します。

乾いた対のスクリューコンプレッサの研究2では、漏れ流れを説明するために隙間モデルを、熱伝達を捉えるためにCHTモデリングを、大規模な流れ構造を解析するためにAMRを適用しています。質量流量率、発熱量、吐出温度を予測し、実験測定した値と比較しました。ここではまた、ベースグリッドサイズが結果の精度にもたらす影響についても調査しました。

実験データとシミュレーションデータが良好に一致しており、特に、最も細分割しているグリッドで最も一致性が高く、エンジニアリング適用において、精度の高い結果が実用的なターンアラウンドタイム内で提供されていることがわかります。

 

速度で色付けされたメッシュを重ね合わせた、乾燥した対のスクリューコンプレッサのシミュレーションの代表的な切断面

速度で色付けされたメッシュを重ね合わせた、乾燥した対のスクリューコンプレッサのシミュレーションの代表的な切断面

 

 

実験(黒の四角)とCONVERGEでのシミュレーション(丸)の質量流量率、発熱量、吐出温度の結果[2]。

 

結論

ポンプとコンプレッサの設計においてCONVERGEがもたらすメリットは、明らかに競争面で有利になることに直接的につながっています。CFDを用いれば、コストを削減でき、製品をより速く市場に出すことができるため、ビジネスにとって有益です、また、CONVERGEには、設計を最適化し、顧客のために高品質な製品を生産するのに役立つツールが備わっています。 CONVERGEに関してご不明な点がありましたら、お気軽にIDAJまでお問い合わせください。

 

参照文献

[1] Rowinski, D., Pham, H.-D., and Brandt, T., “Modeling a Scroll Compressor Using a Cartesian Cut-Cell Based CFD Methodology with Automatic Adaptive Meshing,” 24th International Compressor Engineering Conference at Purdue, 1252, West Lafayette, IN, United States, Jul 9–12, 2018.

[2] Rowinski, D., Li, Y., and Bansal, K., “Investigations of Automatic Meshing in Modeling a Dry Twin Screw Compressor,” 24th International Compressor Engineering Conference at Purdue, 1528, West Lafayette, IN, United States, Jul 9–12, 2018.

[3] Rowinski, D., Sadique, J., Oliveira, S., and Real, M., “Modeling a Reciprocating Compressor Using a Two-Way Coupled Fluid and Solid Solver with Automatic Grid Generation and Adaptive Mesh Refinement,” 24th International Compressor Engineering Conference at Purdue, 1587, West Lafayette, IN, United States, Jul 9–12, 2018.

[4] Rowinski, D.H., Nikolov, A., and Brümmer, A., “Modeling a Dry Running Twin-Screw Expander using a Coupled Thermal-Fluid Solver with Automatic Mesh Generation,” 10th International Conference on Screw Machines, Dortmund, Germany, Sep 18–19, 2018.

[5] da Silva, L.R., Dutra, T., Deschamps, C.J., and Rodrigues, T.T., “A New Modeling Strategy to Simulation the Compression Cycle of Reciprocating Compressors,” IIR Conference on Compressors, 0226, Bratislava, Slovakia, Sep 6–8, 2017. DOI: 10.18462/iir.compr.2017.0226

[6] Willie, J., “Analytical and Numerical Prediction of the Flow and Performance in a Claw Vacuum Pump,” 10th International Conference on Screw Machines, Dortmund, Germany, Sep 18–19, 2018. DOI: 10.1088/1757-899X/425/1/012026

[7] Jhun, C., Siedlecki, C., Xu, L., Lukic, B., Newswanger, R., Yeager, E., Reibson, J., Cysyk, J., Weiss, W., and Rosenberg, G., “Stress and Exposure Time on Von Willebrand Factor Degradation,” Artificial Organs, 2018. DOI: 10.1111/aor.13323

[8] Rowinski, D.H., “New Applications in Multi-Phase Flow Modeling With CONVERGE: Gerotor Pumps, Fuel Tank Sloshing, and Gear Churning,” 2018 CONVERGE User Conference–Europe, Bologna, Italy, Mar 19–23, 2018. https://api.convergecfd.com/wp-content/uploads/David-Rowinski_Multiphase-Modeling-Gearbox-Power-Losses-Oil-Pump-Cavitation-and-Fuel-Tank-Sloshing.pdf

[9] Willie, J., “Simulation and Optimization of Flow Inside Claw Vacuum Pumps,” 2018 CONVERGE User Conference–Europe, Bologna, Italy, Mar 19–23, 2018. https://api.convergecfd.com/wp-content/uploads/james-willie-simulation-and-optimization-of-flow-inside-claw-vacuum-pumps.pdf

[10] Scheib, C.M., Newswanger, R.K., Cysyk, J.P., Reibson, J.D., Lukic, B., Doxtater, B., Yeager, E., Leibich, P., Bletcher, K., Siedlecki, C.A., Weiss, W.J., Rosenberg, G., and Jhun, C., “LVAD Redesign: Pump Variation for Minimizing Thrombus Susceptibility Potential,” ASAIO 65th Annual Conference, San Francisco, CA, United States, Jun 26–29, 2019.

 

出典:CONVERGENT SCIENCE BLOG(2020年10月12日公開)

CONVERGE FOR PUMPS & COMPRESSORS: THE ENGINEERING SOLUTION FOR DESIGN OPTIMIZATION

シニアマーケティングコミュニケーションライター Elizabeth Favreau

シニアマーケティングコミュニケーションライター Elizabeth Favreau

 


 

CONVERGEをご存じでない皆様、是非こちらをご視聴ください。CONVERGEの概要について9分で確認いただけます。

 

CONVEREGEの適用についてご不明な点がございましたら、お気軽に弊社までお問い合わせください。

 

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オートノマスメッシング熱流体解析プログラムCONVERGEは、2008年の販売を開始以来、エンジン筒内の3次元解析をメインターゲットに、世界中で広くご活用いただいています。

普段CONVERGEをご利用いただいていないモデルベース開発を統括・推進されていらっしゃる開発責任者・管理職・シニアエンジニアの皆様、これからCONVERGEのご導入をご検討される方、IDAJにコンサルティング業務の依頼を検討される方に、CONVERGEがどういう場面でお役立ていただけるかをわかりやすくご紹介しています。

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修正・追記:2022年9月8日

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