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尿素SCR・DPF解析をCONVERGEで!後処理3次元シミュレーションの現状と今後の取り組み

Jun Mizushima

 

皆さま、こんにちは。

IDAJの水島です。

排ガスの排出規制が強化され、後処理システムのさらなる改良が求められています。これらシステムにおける課題を解決するためにCAEComputer Aided Engineeringの適用が加速し、特に流体の流れに関わる装置の検討にCFDComputational Fluid Dynamicsを利用する機会が増えています。オートノマスメッシング熱流体解析プログラムCONVERGEには、豊富かつ便利な後処理解析機能が搭載されており、尿素SCRDPF解析への数多くの適用実績があります。そこで、CONVERGEの後処理システム関連機能についてご紹介し、開発元であるConvergent Scienceが計画している当該機能の拡充に向けた今後の取り組みについてご説明します。

CONVERGEの後処理システム関連機能

1.完全自動メッシュ

完全自動メッシュによって、ユーザーはメッシュ生成作業から解放され、解析準備工数が短縮されますので、複雑な形状を持つ後処理システムのCFD解析でも大きなメリットを得ることができます。さらに、解適合格子(Adaptive Mesh Refinement:AMR)機能により、最小限の解析負荷で、最大限の解析精度を実現することが可能です。

2.スプレーモデル

各種スプレーモデルを用いて、壁面上の様々な液滴挙動をモデル化することができます。

  • 液滴と壁面の干渉、スプラッシュモデル(Kuhnke、Bai-Gosman)
  • 液滴と壁面との熱伝達モデルとしてWruckモデル
  • ライデンフロスト効果モデル
  • 液膜ストリッピングモデル
  • 液膜の剥離(セパレーション)モデル

3.尿素分解モデル

液滴・液膜における尿素分解モデルとしてはMulti-componentモデルとMolten-solidモデルが、さらにIFP Engine nouvellesとConvergent Scienceが共同開発した詳細尿素分解モデルがあります。

Multi-componentモデルとMolten-solidモデル

Multi-componentモデルとMolten-solidモデル

詳細尿素分解モデル

詳細尿素分解モデル

4.液膜温度による尿素堆積リスク分析

尿素堆積物は133~160℃(406~433K)で発生するとされており、この液膜温度を予測することで、尿素堆積リスク分析が可能となります。この予測では噴霧、飛散、壁面温度、液膜蒸発、液膜分解を正確に捉えることが重要です。

液膜温度予測結果

液膜温度予測結果

5.噴霧-流動の1way-coupling機能(Fixed flow機能)

後処理システムの壁面温度を解析する場合、噴霧挙動とデポジット堆積の時間スケールの違いが問題になります。そこで有効なのがFixed flow機能です。Fixed flowは、噴霧し続けている時間等の気相流動場が準定常状態である場合に流動場の情報を固定し、噴霧と固体領域のみを解く方法で、化学種も解くことできます。これによって、物理時間が分オーダーから時間オーダーの3次元CFD計算が可能になります。

Fixed flow機能

Fixed flow機能

6.流体固体熱連成による壁温の予測(Super-cycle機能)

熱輸送を分解するのに必要な時間スケールは、固体と流体で大きく異なります。Super-cycle機能は、固体と流体を解く計算と、固体のみを解く計算を繰り返すことで、壁温の収束を早めることができますので、尿素堆積予測解析を加速させることが可能です。

Super-cycle機能

Super-cycle機能

CONVERGE 3.1に搭載された新機能

2023年1月にメジャーバージョンアップしたCONVERGE 3.1で新たに追加された機能についてご説明します。

1.DPF/GPFモデリング

CONVERGE Studio v3.1のCase setup>物理モデル>ソース/シンクモデルで、“多孔質媒体”設定>“微粒子フィルター”機能が追加されました。流路中に流れる粒子を、粒径分布を考慮してパッシブスカラーとして設定することができ、DPFやGPFの仕様を入力して圧力損失やろ過効率を計算します。また、すすの堆積を考慮し、多孔質媒体の粘性抵抗(圧力損失)を変化させることが可能です。

微粒子フィルター機能を使った解析結果

微粒子フィルター機能を使った解析結果

2.デポジット固化モデル

液膜パーセルから固体部分を分離し、パッシブとしてセルデータで保存する機能です。CONVERGE 3.2からは、形状変形モデルと連成させ、デポジット厚さを使用した形状変更が可能になる予定です。この連成計算では、デポジット形成に対する形状変形の影響を確認することができます。

デポジット固化モデルイメージと形状変形モデルによる解析結果

デポジット固化モデルイメージと形状変形モデルによる解析結果

3.触媒の熱予測(LTNE:Local thermal non-equilibrium機能)

エンジンの冷間始動や触媒のライトオフなど、様々な状況で触媒の熱挙動を予測することが重要なケースがあります。触媒の熱予測のためのLTNEモデルは、ポーラス領域の触媒の固体部と流体部間の伝熱を考慮することができるため、様々な動作条件での過渡熱応答を解析することができます。CONVERGE Studio v3.1のCase setup>物理モデル>ソース/シンクモデルで、“多孔質媒体”設定>”エネルギーパラメータ“タブ>”固体温度非定常性“でLTNEモデルが選択できます。

LTNEモデル使用時のポーラス内温度の解析結果

LTNEモデル使用時のポーラス内温度の解析結果

4.固体パーセル噴射機能

サイクロン分離機や、CFB(循環流動床)などの固体粒子の流れを含んだ、乱流分散、壁衝突、粒子間衝突等の効果を、固体粒子シミュレーションで評価するには、本バージョンで加わった固体パーセル噴射機能が便利です。

サイクロン分離機の解析結果

サイクロン分離機の解析結果

後処理システム関連機能の拡充に向けた今後の取り組み

最後に、CONVERGEの開発元であるConvergent Scienceが計画している、後処理解析に関する今後の取り組みについて簡単にご紹介します。

1.水素エンジンベースのSCR開発

水素エンジンの燃焼中に生成される主な環境汚染物質はNOxです。水素はNOxの還元剤としても使用され、一般的に、冷間始動時や低温時には、尿素噴射によるデポジット形成を回避することが難しいとされています。NOx削減には、水素エンジンの開発と同時に、SCR開発が必要になると考えています。その開発の効率化に向けて、CONVERGEは今後、水素エンジンに対してSCR機能を使用するための確認作業を行うことになっています。

2.DPF熱再生モデリング、SCRoF(SCR on filter)モデリング

(1)DPF熱再生モデリング

3.1のDPFモデルでは、流れ場と温度を解くことができ、すすの燃焼反応をエネルギー方程式のソースとして扱うことができます。このときすすは、フィルター担体内の担体壁の両側に存在します。

現行DPFモデルの課題は、soot cake層でのすす再生モデリングにあります。CFDでは、全てのsoot cakeは壁近くの最初のセルレイヤーでパッシブとして扱われており、実際にsoot cakeが堆積した壁とは異なる特性を示すため、CFD上でどのように扱うべきかを引き続き検討します。

(2)SCRoFモデリング

SCRoFモデリング機能には、領域ベースのSCR表面反応モデルが、DPFの多孔質担体に追加されることになっています。この機能開発を複雑にしているのは、すすの堆積とSCR表面反応がどのように相互作用するかということです。すすの堆積がSCR表面反応を妨げているのか、SCR表面反応がすすの堆積プロセスに影響を与えるのかなど、さらに調査を続けます。

まとめ

カーボンニュートラル実現に向けて、多くの国々で様々なアプローチが試みられ、その進捗が日々報告されています。CONVERGEももちろんその一端を担っていると認識しており、これまで構築してきた技術をさらに発展させ、また積極的に新しい技術を取り入れながら適用アプリケーションの拡大に取り組んでいます。

今回ご紹介した機能や解析にご興味ありましたら、事例を交えてご紹介しますので、どうぞお気軽にお問合せください。

 

 

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