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多様な形態をもつ複合材料を有限要素法でモデル化 ~SIMULIA Abaqus Unified FEAを用いた複合材料のモデル化手法のご紹介~

 

皆さま、こんにちは。

IDAJの林です。

近年、軽量化や高剛性を実現する材料として、複合材料を取り入れた製品や構造が多く利用されています。それに伴い複合材料に対する構造シミュレーションの需要が増加してきました。

そこで本記事では、統合有限要素法プログラムSIMULIA Abaqus Unified FEA(以下Abaqus)による複合材料のモデル化手法をいくつかご紹介します。

複合材料とは?

複合材料は、2種類以上の材料で構成された混成材料を指します。混成材料を構成する材料のうちベースとなる材料を母材(マトリクス)、機能強化として使用される材料を補強材と呼ぶことが一般的です。広く知られているCFRP(炭素繊維強化プラスチック)は、母材が樹脂、補強材が炭素繊維です。また、複合材料は製品や用途によって多様な形態が存在し、補強材の観点だけで見ても巨視的粒子、繊維(フィラー)、繊維織物、鉄筋といった複数の形態があります。

したがって、Abaqusに代表されるFEMソフトウェアを用いて複合材料を対象とした構造シミュレーションを実施するには、材料や目的ごとに異なるFEMモデリングが求められることはイメージしていただきやすいかと思います。

複合材とは

複合材とは

複合材料のFEMモデリング

複合材料の代表的なFEMモデリングには、微視的モデリング、巨視的モデリング、積層モデリング、離散化された補強材モデリングがあります。これらは複合材料の形態、着目する物理現象等によって選択、あるいは各手法を組み合わせて使用します。

1.微視的モデリング

微視的モデリングは、材料の微視的挙動、すなわちミクロスケールの母材と補強材の変形や界面挙動を詳細にモデル化する手法です。優れた力学的特性を持つことで知られる複合材料は、その特性の発現がミクロなスケールにおける母材と補強材の配置や界面を介した相互作用に起因しています。微視的モデリングでは、ミクロスケールに着目した解析が可能ですが、補強材が微小なスケールで、かつ大量に存在していることが多いため、製品の中の補強材すべてを表現できないことが大半です。そこで、後述する巨視的モデリングと連携させることで、ミクロスケールの振る舞いからマクロスケールでの材料挙動を予測するマルチスケール解析と併用されることがあります。

微視的モデリング

微視的モデリング

2.巨視的モデリング

巨視的モデリングは、複合材料をマクロ空間での全体的な挙動として表現する手法です。結果的に巨視的モデリングでは母材・補強材の詳細形状はメッシュなどでは表現されず、領域内に存在する母材と補強材を均質化した等価材料として各要素へ適用します。このため巨視的モデリングは、製品形状全体などの大規模な解析対象で利用することに向いています。

本題からは少しそれますが、複合材料は、補強材の性質や配置に起因した材料異方性を有することが多く、FEMモデル作成時には異方性の材料特性と異方性に従った材料方向を指定する必要があります。材料特性は力学特性を表現するためのデータ、材料方向は各要素へ適用される要素座標系を指します。そして材料特性と材料方向はFEMモデルに正しく与えなければなりません。誤った情報を入力すると、物理的に正しくない結果となり、解析の安定性を損なうことにもなるためご注意いただければと思います。

巨視的モデリング

巨視的モデリング

3.積層モデリング

積層モデリングは、離散化されたプライ(層)が積み重なった積層部材をモデル化する手法で、プリプレグシートを複数枚積層し樹脂を含侵させ成形したもの、木材の板を重ねた合板などが対象物となります。一般に積層部材は板状の形状であることから、厚さに対して平面寸法が大きく、計算コストや曲げ挙動の観点から構造要素であるシェル要素を用いてモデル化されます。一方で、分厚い対象物や計算中の断面変形が無視できない場合には、シェル定式化で解かれるソリッド要素を用いることもあります。

FEMモデル作成にAbaqus/CAEを利用される場合は、GUIやプライスタックプロットによる積層構造可視化といった積層設定のための便利な機能を使って、複雑な積層構造でも容易にモデル化することができます。

【積層モデリングの特徴】

・複雑な積層構造のモデル化

・各プライは巨視的モデリングにならされた個々の材料で構成

・プライごとに弾性、損傷、破壊といった材料特性を考慮

・プライごとの厚さ、繊維方向を定義

積層モデリング

積層モデリング

4.離散化された補強材モデリング

離散化された補強材モデリングは、母材内に存在する補強材を、離散化された要素やリバーでモデル化する手法です。ここでの要素とはソリッド、シェル、ビームの各要素を指し、リバーは単軸方向に作用する補強材を表現する機能です。離散化された補強材モデリングは、さらに埋め込み要素(Embedded Element)とリバー層(Rebar Layer)の2つの機能に分かれます。

埋め込み要素はソリッド要素内部に別の要素を埋め込む機能で、コンクリートをソリッド要素でモデル化し、その中にビーム要素でモデル化した鉄筋を埋め込んで配置する鉄筋コンクリート構造などで用います。リバー層はシェルや膜要素の面内に単軸の補強材を定義する機能で、自動車のゴムタイヤの中に挿入されているベルト層のモデル化などで用います。埋め込み要素とリバー層は、解析対象がソリッド要素、あるいはシェルや膜要素といった使用要素や補強材の形態によって使い分けます。応用的な用途として、リバー層が設定されたシェル要素をソリッド要素に埋め込み要素として配置することがあります。

離散化された補強材モデリング

離散化された補強材モデリング

CAE技術者から見た複合材料モデリング

ここまで4つの複合材料のモデリング手法をご紹介しました。これら全てがAbaqusの標準機能ですので、どなたでもご利用いただけます。しかし、いざ複合材料の解析に取り組んでみると、いくつかの問題に直面するかもしれません。そこで筆者が実際に経験した問題と、その解決へのアプローチをご紹介します。

1.異方性材料特性の取得

複合材料の大半は異方性材料です。しかし、FEMモデルとして材料特性を定義する際に、各モデリング手法に必要な材料データが手元に無いことがあります。材料データを取得するには、材料メーカーへの問い合わせや文献調査、材料試験の実施、分子シミュレーションや機械学習による材料特性の予測が必要です。

2.積層モデリングにおけるプライごとの膨大な情報入力

積層材料をFEMモデルとして設定するにはプライごとに材料特性、プライ厚さ、繊維方向を適切に入力する必要があります。一般に数プライ、材料方向が整列した積層部材では問題になりませんが、数十プライもの構成や複雑な材料分布を持つケースでは、解析データ作成において膨大な作業が必要となる、または、そもそも入力すること自体が困難なことがあります。この場合は、複合材設計で使用されるコンポジットCADから効率的にCAE用データにコンバートする、解析設定を補助するスクリプトを活用するなどのアプローチをご検討ください。

3.製造工程による影響

プリプレグシートを複雑な三次元曲面にドレープした際のシートひずみ、熱可塑性樹脂の加熱硬化時に生じる凝固収縮などに起因した繊維方向のズレや空隙による構造欠陥など、多くの複合材料は、実製品の製造工程において剛性分布の差異や構造欠陥といった影響を受けます。残念ながらこれらは、複合材の設計時点では予測しにくいものです。設計想定と実製品の差が微小であれば無視できることもありますが、無視できない場合は、ドレープ工程や加熱硬化工程を解析として表現し、実機から抽出した剛性分布や構造をFEMモデルに適用するといった対応が必要となります。

4.シェル要素のモデル化制約

積層板では厚さに対して平面寸法が大きいため、FEMモデルには大抵、シェル要素が採用されます。シェル要素は、ソリッド要素よりも少ない要素数で済みますので計算負荷の低減や、正確な曲げ挙動の表現などといった利点があります。一方で、厚み方向の節点が1つしかないため、両面からの接触、結合、カップリング拘束による過剰拘束や収束難、意図した変形を表現できないことがあります。シェル要素の表面に複雑な拘束条件が適用され、厚み方向の断面変形が無視できないケースでは、解析コストが増加することにはなりますが、ソリッド要素(連続体シェル要素)を選択するといった判断も必要です。

5.複合材モデリング手法の選択

他の解析対象同様に複合材料を対象とした解析では、着目すべき物理現象とAbaqusの機能の特徴を照らし合わせたモデリング手法を選択してください。このとき、解析精度や計算コスト、モデル作成の煩雑さなどから総合的に判断することになりますが、結果として常に理想的な手法を選択できないことがあるかもしれません。このようなケースでは、一見して遠回り思えるかもしれませんが、各手法の特徴を踏まえて段階的にFEMモデルを構築することを検討いただく方が良い場合もあります。

CAE技術者から見た複合材モデリング

CAE技術者から見た複合材モデリング

まとめ

複合材料は航空宇宙、自動車、スポーツ、医療などの幅広い業界で利用されています。特にCAEが身近なものとなった今、複合材料製品の良否は、複合材料の特性を考慮した設計・製品評価を、短期間かつ高精度にシミュレーション検討できるかにかかっています。ここでご紹介しきれなかった機能や事例が多数ありますので、下記まで問い合わせください。またご意見やご要望などありましたら、併せてお聞かせいただけますと幸いです。

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