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どんなに複雑な形状でも流体解析ができます ~吸音特性値算出シミュレーション~

皆さま、こんにちは。

IDAJの水島です。

 

読者の皆様の中には、オートノマスメッシング熱流体解析プログラム「CONVERGE」は、内燃機関エンジン筒内シミュレーションのための専用ツールだと認識されている方が多いかもしれません。もちろん筒内解析にご活用いただいているお客様が多く、実績も豊富で、今後もソフトウェア開発の主軸であることは変わりませんが、メッシュ作成工数がゼロ、解適合格子をはじめとしたメッシュコントロールに代表されるオートノマスメッシング機能という大きな特長から、様々な流体解析を効率的に進めることができるツールでもあるのです。

 

【一般的なメッシュに関する課題】

・メッシュ作成に時間がかかり,複雑形状では熟練者でも数週間

・移動問題ではメッシュが壊れないように配慮が必要

・複雑な移動問題はそもそも解析ができない

・複雑な形状は簡易化が必須

・メッシュ品質が悪いと計算が発散

・メッシュサイズを変更することは大きな手間

・形状検討するにはメッシュ再作成が必要

・作業者のスキルによって作成されるメッシュが変わり,計算結果も異なる

 

これらの課題を解決したのが、オートノマスメッシング機能を備えたCONVERGEです。

 

IDAJでは、製品設計に必要な騒音対策や防音・音響設計、音響解析に関する一般的な解説やトレーニング、受託解析など、CAEを用いた多岐にわたる音響エンジニアリングサービスを展開しています。

コンサルティング

受託解析

受託測定・測定システムの構築

■ CAEを用いた音響エンジニアリングサービス

■ 音響解析プロジェクト立ち上げ時からの支援に関するご相談

■ 音響CAEに関するトレーニングや技術移管

■ 音響解析、振動-音響連成解析

■ CFDによる解析結果との流体-振動-音響連成解析

■ CAEに必要な材料物性測定

■ CAEのV&Vのための音響測定

■ その他音響測定

 

CAEによる音響解析を実行するにあたっては、境界条件設定や材料モデルの選定、物性値の用意など、高度な専門性を問われる場面にたびたび遭遇します。吸音材料として一般的に用いられるグラスウールという材料をご存知の方であっても、そのCAEにおけるモデルの取り扱いの他分野にない特殊性ゆえに、いざ解析となると手が止まってしまうかもしれません。しかもそのモデルには材料を特徴づけるパラメータが必要で、それを用意するには数少ない専門機関に相談するか、手持ちの音響測定結果から逆推定するしか方法がないのが現状です。つまりパラメータについては理論的に正確な値を簡単に得ることはできません。

IDAJにはこの多孔質吸音材料に関する“マニア”がおりますので、多孔質材料のパラメータを、CAEを駆使して正確に求めるという技術構築に取り組んでいます。この技術を用いれば、測定することなく多孔質材料のモデル化とパラメータの同定、多孔質材料の音響性能検討が可能となります。

ここでは、多孔質材料の中でもグラスウールやフェルトのような、数ミクロンの繊維が積み重なった形状である繊維系多孔質材料の音響特性を表現するモデルに適用する流体力学的パラメータを、CONVERGEで予測した事例をご紹介します。

 

CONVERGEによる繊維系多孔質材料の流体解析

CONVERGEによる繊維系多孔質材料の流体解析

 

CAEによる音響特性算出シミュレーション

吸音材の音響的物性値をCAEで求める場合、計算モデルに入力するための音響特性パラメータが必要です。多孔度や熱的特性長といった幾何学的パラメータに加え、ISO 9053-1で試験方法が規定されている流れ抵抗値、流線の長さや流速分布から求められる迷路度や粘性特性長などの流体力学的パラメータがあります。これらの流体力学的パラメータは、微視的な繊維構造を対象とした計算が必要です。またパラメータ同定では、実測が必ずしも正しいわけではないという認識を持つことが重要で、測定誤差の影響を避けられるだけでなく、モデル構築がポテンシャル流れ(=非粘性流れ、現実には存在しない理想流れ)を前提としているということもCAEを用いる根拠となります。

 

繊維系多孔質材料の音響モデルと音響特性パラメータ

繊維系多孔質材料の音響モデルと音響特性パラメータ

 

実用に足る音響特性を求めるには、微視的構造を対象としながらも、統計的に確かな特性でなければなりません。したがって、パラメータ同定CAEには以下の機能が必要です。

  • ランダムな形状が作成できる
  • 大量の水準を効率的に計算できる
  • 繊維が折り重なっている複雑な形状でも計算できる
  • 径、断面形状、多孔度といった繊維形状が検討できる
  • 粘性流れにおいて圧力損失を正しく計算できる
  • ポテンシャル流れにおいて流線を正しく計算できる

 

そこでCONVERGEの出番です。ここからは、解析プロセスの各場面における優位性を見ていきたいと思います。

 

1. 流体シミュレーションモデルの作成

吸音材向けに新規材料を開発するには、つまり実物が存在しない場合には、解析形状をゼロから作成する技術が必要です。また、既存材料の音響特性をシミュレーションするには、実物の微視的構造を電子顕微鏡などで撮影し、そこからCAEモデルを構築するシナリオが想定できます。いずれであっても、CONVERGEの「流体メッシュ作成工数ゼロ」は大きな武器となります。形状を構成するサーフェスを準備するだけでよいのです。

ここでは2つのモデル作成手法をご紹介します。

1つ目は、パーティクルシミュレーター「Rocky DEM」を用い、棒状の繊維を上から降らせて折り重なる形状を作成する方法です。Rocky DEMは、離散要素法によって複数の粒子や粉体の相互作用を計算しますので、ランダムに折り重なる形状が作成されます。その計算結果をSTL形式で出力して、CONVERGEの計算モデルを構築しました(図4)。この方法では、実際の生産工程を考慮して形状を作成できるため、繊維形状の違いによって、できあがる充填度合いが異なる材料をスタディするなどの展開が想定されます。

2つ目は、CONVERGEのプリポストプロセッサであるCONVERGE Studioのスクリプトエディタ(※)を適用する方法です。スクリプトエディタは、CONVERGE Studioでマウスを手動で操作する項目に対して、スクリプトを用いてパラメトリックに作業する機能です。図4は、位置や方向を変えながら円筒形状のサーフェスを繰り返し作成することで生成した計算モデルです。

(※)スクリプトエディタの使用方法がご不明の場合は、弊社技術サポートへお問い合わせください。

 

CONVERGE計算モデル作成

CONVERGE計算モデル作成

(左:サーフェス全体図、中:主流交差方向断面メッシュ図、右:主流方向断面メッシュ図)

 

2. CONVERGEによる流体シミュレーションと吸音特性パラメータ算出

CONVERGEはCFDツールですから、圧力損失や流れ場を正しく計算することができます。また、統計的に吸音特性を評価する上では、作成されるメッシュのバラつきが生じることは避けなければなりませんが、CONVERGEは、メッシュパラメータを含めて非属人的な設定が可能です。その先には、設定ファイル一式を自動生成する効率的なシステム化による、CFDの完全自動化が視野に入ってきます。

 

ポテンシャル流れ検証結果

ポテンシャル流れ検証結果

 

繊維系多孔質材料での流れ計算結果

繊維系多孔質材料での流れ計算結果

 

3. CONVERGEによる形状最適化流体シミュレーション

今回のテーマの派生的なトピックスになりますが、CONVERGEの特長を生かして、形状最適化CFDに関する事例が増えてきました。CONVERGE以外のCFDツールを使用して、形状検討CFDが試みられてきましたが、設計の初期段階で実施するような“ドラスティックな”形状検討への適用は難しかったのではないでしょうか。その原因は、何と言ってもメッシュ作成にあったものと推察します。

IDAJでは、多目的ロバスト設計最適化支援ツール「modeFRONTIER」を用いた形状最適化CFDの経験が多くあります。遠心ファンの翼形状を変更し、圧力上昇と流体トルクを最適化する課題、内燃機関エンジンの燃焼室ヘッド形状を変更し、筒内流動と乱れを最適化する課題、触媒に入る管路形状を変更し、触媒に流入する速度分布を最適化する課題などです(図7)。いずれにおいても、メッシュ作成工程が不要であること、表面形状だけを変更すれば形状最適化課題に取り組めることは、CONVERGEならではの大きなメリットです。また、IDAJでは、CAD連携、モーフィングツール連携などといった、複数の形状変更手段に対してお手伝いすることが可能ですので、お気軽にお問い合わせください。

 

modeFRONTIERとCONVERGEによる形状最適化CFD

modeFRONTIERとCONVERGEによる形状最適化CFD

 

音響設計ソリューション、特にCAEを活用した試作レスの材料検討についてご紹介し、本テーマに対するオートノマスメッシング熱流体解析プログラムCONVERGEの有効性をご説明しました。本記事では、繊維系多孔質材料の音響特性解析を例にあげましたが、排ガス処理用触媒の多孔質媒体や、細孔構造などへの適用も想定できます。CONVERGE適用の新たなテーマがございましたらご遠慮なくお問い合わせください。

 

 


CONVERGEをご存じでない皆様、是非こちらをご視聴ください。CONVERGEの概要について9分で確認いただけます。

 

CONVEREGEの適用についてご不明な点がございましたら、お気軽に弊社までお問い合わせください。

 

■オンラインセミナー(無料)のご紹介

「CONVERGE」ご紹介セミナー ~3次元流体解析の新たな可能性を~

オートノマスメッシング熱流体解析プログラムCONVERGEは、2008年の販売を開始以来、エンジン筒内の3次元解析をメインターゲットに、世界中で広くご活用いただいています。

普段CONVERGEをご利用いただいていないモデルベース開発を統括・推進されていらっしゃる開発責任者・管理職・シニアエンジニアの皆様、これからCONVERGEのご導入をご検討される方、IDAJにコンサルティング業務の依頼を検討される方に、CONVERGEがどういう場面でお役立ていただけるかをわかりやすくご紹介しています。

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