マルチフィジックス・システムシミュレーションツール GT-SUITE 2024のご紹介(その1)
皆さま、こんにちは。
IDAJの小川です。
マルチフィジックス・システムシミュレーションツール GT-SUITEの最新バージョン2024のいくつかのトピックスをご紹介します。
GUI・SOLVERの新機能
プリポストとして利用いただいているGT-ISEとGT-POSTに新しく搭載された機能についてご紹介します。
1.Model Validation
モデルの不備などのチェックは、今まで計算実行やプリプロセスを実行しないと確認できませんでしたが、Validationタブを開き、Save&Validateボタンを押すことで不備を確認することができるようになりました。
不備があると、エラー箇所が表示され、ダブルクリックでエラー箇所の位置、オブジェクトなどが表示されます。

Model Validation
2.Sankey Plot
GT-POST>Macros>Sankeyを選択するとパネルが表示されます。ノードに名前を付け、リンク線にRLT値の結果を選択することで、流れの量をわかりやすく表示することができます。

Sankey Plot
3.熱応力解析
ThermalFiniteElementテンプレートの温度結果をGT-SUITE機械ライブラリのFEメッシュにマッピングして、熱応力の計算ができるようになりました。

3 熱応力解析結果
4.燃焼モデル
SITurbモデルの多点点火モデルで、初期火炎径と点火タイミングを個別に設定できるようになります。また、xRTライセンスの新機能として、2ストロークエンジン、Dual Fuel予測燃焼モデルがサポートされました。

4 多点点火モデル
5.QSCircuitSplitter
エンジンモデルと触媒モデルを同時に計算する場合、従来は煩雑な接続が必要でしたが、QSCircuitSplitterテンプレートによってシームレスに接続することが可能になり、エンジンと触媒の統合モデルが容易に作成できるようになりました。

QSCircuitSplitter
6.Suspension3D
サスペンションのジオメトリを詳細にモデル化し、6自由度で挙動する3D Vehicleモデルの作成が可能になりました。

6 Suspension3D
GEM3Dの新機能
補助ツールGEM3Dに新しく搭載された機能についてご紹介します。
1.Loft機能
Surface-Surface間に新しいSurfaceを作成するLoft機能が追加されました。

GEM3D Loft機能
2.Stretch機能
ベースのCADデータを変更するStretch機能が追加されました。

GEM3D Stretch機能
3.マッピング機能
フレキシブルボディの応力・変形解析と1-D Flowソルバーの結合により、エキゾーストシステムの振動・音響解析や、高圧油圧システムの変形と振動、スクロールコンプレッサーの変形、ハウジング振動などが検討できるようになりました。また、これらのモデルを作成するためFEメッシュと流体をマッピングする機能が追加されました。

GEM3D マッピング機能
GT-AutoLionの新機能
GT-AutoLionは John Newmanが提唱したP2DモデルによってLiイオンの反応や輸送を解くことで、バッテリーとしての性能や温度を予測するモデルです。
単セル規模では、設計情報や材料物性にもとづいた電池特性の予測に加えて、劣化検討や熱暴走反応、膨張・収縮によるセルの応力ひずみなども検討していただけます。また、単セルとしての詳細な検討だけでなく、冷却構造を含めたバッテリーモジュールの熱計算においても、CADデータの形状を反映して、詳細な熱解析モデルを作成することができます。
1.全固体電池
固体電解質を前提とした計算モードが追加され、支配方程式の変更や設定値など、固体電解質専用のものが用意され、全固体電池が正式にサポートされました。文献値に基づいた固体電解質の情報がライブラリ化されており、検討のスタート値として簡単にご利用いただけるようになっています。

10 全固体電池
2.釘刺し試験
GT-AutoLion 3Dでは、釘刺し試験に相当する計算が可能になりました。現在はパウチ型のセルにのみ対応していますが、円筒型や角柱形状は今後の機能リリースを予定しています。
釘の設定値として、材質や長さ、直径、また短絡させる位置をインプットとしています。その際、短絡部の接触状態を内部抵抗として表現することができますので、その抵抗の大小によって、局所的に発熱を起こすのか、またはセル全体で発熱が生じるのかといった発熱の違いを表現することが可能です。

11 釘刺し試験
空調性能設計に関する新機能
欧米では、“Heating、Ventilation、Air Conditioning、Refrigerant”の頭文字をとって“HVACR”と総称される、非常に注目度が高い技術です。その中で近年は、MBD/MBSE・CAEを取り入れたエンジニア工数のフロントローディングや、バーチャルテスト環境(XiL)によるソフトウェア検証の早期化、設計者自身がCAEを実行するための解析環境の構築などが求められるようになりました。これらの課題解決に対して、GT-SUITEは非常に有効なツールであり、新バージョンのリリースに合わせて毎回新しい機能が追加されています。
1.Single Fluid NTU Model(Pipe)
これまでは、流体と壁面間の熱計算ではその熱伝達率の計算のために、局所的なサブボリュームの値を使用していましたが、V2024ではNTU温度加重モデルを使用します。

Single Fluid NTU Model
2.Two Fluid NTU Model(Heat Exchanger)
熱交換器で生じる温度不均一性を補正するためのモデルである温度ブレンドモデルが追加されました。これまでは、正確な計算のために多数の離散化が必要でしたが、補正モデルを使用することで離散化数を削減でき、同時に計算速度の向上が期待できます。

Two Fluid NTU Model
3.Calibrating Heat Exchanger with Oil
A/Cサーキットなどで使用される冷媒にはオイルが混合し、オイル量が増加すると熱交換を阻害します。従来のモデルではオイル混合を考慮できませんでしたが、V2024ではオイル混合により熱伝達を補正する機能が追加されました。

Calibrating Heat Exchanger with Oil
4.冷却系回路モデルの計算速度の向上
ヒートポンプシステムの切り替えで使用されるような、冷媒流量がZeroの条件でのソルバーの安定性が向上しています。またこれにより、高速実行やHiLSでの使用が可能となっています。さらに、Thermal FEモデルの計算ロジックを改善し、ほとんどのモデルで約20~40%の速度向上が実現されました。

Thermal FEモデル計算結果
5.VTM FRM Converter Tool
VTM(Vehicle Thermal Management) FRM(Fast Running Model)ConverterがGT-ISEのToolbarに追加されました。キャビン、パワートレイン、バッテリー、冷媒、アンダーフードなどの熱マネの複数の流体回路を自動的に認識し、各流体回路を個別に縮退化することが可能です。VTM FRMによって現在の複雑な熱マネモデルを、高速実行可能なモデルに変換(縮退化)することができます。

FRM Converter Toolを使用した縮退モデル
GT-Auto-3DFlow
電動化によりアンダーフード空間が縮小された結果、熱交換器を空間内に収めるために、傾けて配置するなど、レイアウト検討の重要性が高まっています。
これまでのCOOL3Dでは、空間を賽の目状に区切り、区切られた各空間を分岐管として立体的につなぐことで流体空間を表現していました。この方法では、賽の目状に空間を区切る都合上、熱交換機などの要素を斜めに配置することができません。また、流体空間の分割が非常に荒いため、渦の発生などの流れ場の特徴を完全にはとらえられないという弱点がありました。
今回追加されたGT-Auto-3DFlowは、COOL3D上で作成された形状データから3D CFDモデルを生成し、GT-SUITEの熱交換器モデルと連成計算することで、従来のモデルでは表現できなかったより忠実な流れ場の再現と、より自由度のある熱交換器のレイアウト検討が可能になります。

GT-Auto-3DFlow計算結果
1.計算設定から結果処理までのすべての作業がGT-SUITE上で完結
メッシュはCOOL3Dモデルから自動生成され、GT-ISEから計算実行、コンター図や流跡線などの3Dの計算結果はGT-POSTから確認することができます。

GT-Auto-3DFlow計算フロー
次回は、後処理・化学プラントに対するソリューションからご説明します。
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