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マルチフィジックス・システムシミュレーションツール GT-SUITE 2024のご紹介(その2)

皆さま、こんにちは。

IDAJの小川です。

前回に続き、マルチフィジックス・システムシミュレーションツール GT-SUITEの最新バージョン2024のトピックスをご紹介します。

後処理・化学プラントに対するソリューション

カーボンニュートラルに向けた自動車用後処理の課題として、触媒反応モデルや後処理熱モデルの高精度化、EHC(Electrically Heated Catalyst)などの追加デバイスのモデル化などがあります。また、水素社会の実現や、CO2の回収、再利用に向けた触媒の検討も必要です。これらの課題検討のための新しい機能がGT-xCHEMです。GT-xCHEMは、GT-SUITEの触媒、フィルターのモデリング機能とexothermia suiteの機能を統合したアプリケーションです。

表1 GT-xCHEM V2024新機能一覧

表 GT-xCHEM V2024新機能一覧

1.Monolithテンプレート

Monolithテンプレートでflow-through触媒、フィルター、EHCをモデル化します。熱特性、電気特性、反応の軸方向のゾーニング、複雑なチャネルの形状、触媒・フィルターの形状にも柔軟に対応できます。

19 Monolithテンプレート

Monolithテンプレート

2.触媒熱機能

Monolith外表面の温度計算、輻射計算モデルが追加されました。外表面の固体部分を離散化してモデル化するため、温度計算の精度向上が見込まれます。また、各レイヤーには異なる固体物性を定義できます。

20 触媒熱計算

触媒熱計算

3.EHCモデル

ヒーターの詳細形状を考慮したEHCモデルの計算が可能です。外部のメッシュツールで作成されたメッシュデータのインポート(*.nas)、熱・電気ソルバーをカップリングして温度分布を計算することができます。

21-1 EHCモデルの計算

21-2 EHCモデルの計算

EHCモデルの計算

4.Cell形状、セグメントモデル

様々なセル形状の選択、設定が可能になりました。

22 Cell形状

Cell形状

5.ゾーン反応モデル

触媒の長さ方向(Axial)、径方向(Radial)、Washcoatの厚み方向でそれぞれ異なる反応モデルを設定できるようになりました。多層コートされるWashcoat層に対応可能です。

23 ゾーン反応モデル

ゾーン反応モデル

6.劣化(Aging)モデル

触媒劣化の予測モデルが追加されました。

24 触媒劣化モデのル計算

触媒劣化モデのル計算

7.Depositモデル、Soot・Ashの輸送モデル

流入・堆積するSoot、Ash、添加物などの複数の物質の堆積特性を設定して予測計算することができるようになりました。フィルターに堆積したSoot Cake、Ashの輸送モデルも追加されています。せん断応力によるSoot Cakeの崩壊(下流への輸送)、Ashの輸送によるプラグ生成の計算も行われます。

25 Depositモデル、Soot・Ashの輸送モデル

Depositモデル、Soot・Ashの輸送モデル

8.フィルターCapillaryモデル

従来の経験則による捕集-圧損特性ではなく、フィルター壁面を多数の径の異なる毛細管としてモデル化し、異なる動作条件、壁面の微細構造違いによる捕集-圧損特性が予測計算できるようになりました。

26 フィルターCapillaryモデル

フィルターCapillaryモデル

9.3D CFD(OpenFOAM)との連成

触媒入口で流速や温度に大きな分布を生じる形状に対して有効な3D CFDとの連成計算に、OpenFOAMとの連成計算が追加されました。

27 OpenFOAMとの連成計算

OpenFOAMとの連成計算

10.化学プラントへの応用

GT-xCHEMの触媒反応モデルでは、反応モデルを任意に設定することができるため、化学プラントなどの自動車エンジンの後処理以外の反応計算へも応用することができます。

【V2024で収録されている反応モデルのExample】

  • Ammonia Cracker:NH3→N2+H2
  • Ethanole_Reformer:C2H5OH+H2O→H2+CO/CO2
  • Methane_Reformer:CH4+H2O→H2+CO2
  • Methanole_Reformer:CH3OH+H2O→H2+CO2
  • Methanation_Reactor:CH4+H2O→H2+CO2/CO
  • Harber-Bosch Process Ammonia:NH3→N2+H2
  • DAC(Direct Air Capture)
28 DACの計算

DACの計算

GT-ISE・Git連携によるモデル管理

モデル管理の手法として、これまでExcelとの連携や、共有モデルライブラリとしてのユーザーライブラリ(.gtcファイル)、コンパウンドオブジェクト(.gtoファイル)の使用をご紹介させていただいていましたが、V2024ではGT-ISEとGitを統合してGT-ISEからGitを操作することができるようになりました。これにより、前述の共有モデルライブラリや、モデルファイル・結果ファイルをチーム内で共有することができ、モデルの変更履歴の共有も可能となるため、開発をより効率化できるものと期待しています。新しく追加されたGT-ISEのGit Source Controlタブから操作します。

29 Gitの操作パネル

Gitの操作パネル

1.Gitを使用したGT-SUITE以外のツールデータの管理

Gitを使用して管理すると、GT-SUITE関連のファイルだけでなく、*.docx/*xlsxや*.slx/*.mなどのGT-SUITE以外のファイルも一緒に管理することができます。

モデル流通に関する新機能

MBDやCAEの利用が急拡大し、多くの企業様でその実行に必要な最適なシミュレーションツールを選択し、業務へ適用されています。その中で「異なるツール間でのシミュレーションモデルの活用(モデル流通)」が喫緊の課題であると言われています。この「モデル流通」の課題に対しては、異なるツール間でモデルを授受することが根本にあるため、「このようにすれば必ずモデルの授受が上手く行く」という正解が得られていません。

そこでここからは、GT-SUITEとSimulinkとの連携、FMI・FMUを介したGT-SUITEと他ツール間の連携についてV2024で新たに追加された機能をご紹介します。

1.GT-SUITEとSimulinkとの連携(Simulinkからの信号の処理)

下記右のグラフの青破線で示すように、通常は他のツールから受け取った信号は、次の通信間隔までは一定値として扱われるため、波形は階段状になります。V2024からは、Signal Interpolationのオプションをオンにした場合には、赤線グラフのように、一定値ではなくその前の信号値を利用して勾配を持った値として、GT-SUITE側での計算に利用できるようになりました。

30 Simulinkとの連携機能

Simulinkとの連携機能

2.FMI・FMUを使用した連携

GT-SUITEではFMUの書き出しと読み込みができ、FMUへの書き出しを行う際には、ライブラリ内にあるFMUExportテンプレートを利用します。V2024ではFMUのバージョン1と2に加え、バージョン3にも対応しました。従来通り、書き出す際のFMUのタイプは、Co-Simulationのみですが、FMUを用いた計算実行だけに対応した、安価な「GT-SUITE DL」というライセンスフィーチャーが用意されています。

GT-SUITEのモデルにFMUファイルを読み込むには、ライブラリ内のFMUImportテンプレートを使用します。現状のFMU対応バージョンは1と2ですが、バージョン3にはGT-SUITE V2025での対応を予定しています。

モータ電磁界解析ツールGT-FEMAG

GT-FEMAGは、2次元電磁場解析のためのGT-SUITEのオプションツールです。モータ形状をパラメトリックに指定し、損失(発熱量)やトルク、回転数の性能マップを容易に取得することができます。また、磁束線・磁束密度やコギングトルク、BEMFの確認も可能です。

これまでのGT-FEMAGでは、作成可能なモータ形状(ステーター形状と磁石の配置)に制限がありましたが、V2024ではこの制限を撤廃し、StandaloneのFEMAG相当の機能をGT-SUITEに移植しました。また、GT-ISEにインテグレーションし、モータマップを介せずに計算することができるようになりました。

31 FEMAGテンプレート

FEMAGテンプレート

電気回路設計ツールGT-PowerForge

GT-PowerForgeはコンバータ・インバータの設計ツールです。変換回路を高速で計算でき、回路構成や制御手法、パワーデバイスの商用データを選択することで、効率(損失)、コストなどをトータルで概算・見積りすることが可能です。

  • スイッチング損失を含む回路のトータル損失を概算する
  • 豊富なフィルター、制御手法、トポロジーを簡易にトライする
  • Si MOSFET、Si IGBT、SiC MOSFET、GaN、コイル、コンデンサなどの商用データを利用する
  • 空冷、水冷の熱計算が組み込まれており、ジャンクション温度を予測する

1.動作点及び3相モータのモータ諸元を境界条件としたインバータの設計

V2024から動作点及び3相モータのモータ諸元を境界条件としたインバータの設計が可能になりました。動作点には回転数、トルク、DCバス電圧を直接入力することができます。システムの観点からすると、電気的な境界条件より目標の機械的動作点を定義するほうがはるかに簡単であると考えられます。また、三相モータのd軸、q軸インダクタンス、永久磁石の極数、電気子巻線抵抗を境界条件として入力することによって、よりモータの境界条件に則したインバータの設計が可能となります。

32 GT-PowerForge計算結果

GT-PowerForge計算結果

2.GT-ISEへのエクスポート

GT-PowerForgeで設計したモデルを、パワーエレクトロニクス回路としてGT-SUITEへエクスポートすることができるようになりました。GT-PowerForgeで作成したモデルは、IGBT、Si MOSFETといったパワースイッチの導電損失、スイッチング損失のマップを持っており、この損失マップはGT-SUITEのDiscreteSwitchオブジェクトへエクスポートされます。例えば、このエクスポートした回路モデルに冷却回路モデルを組み合わせて、設計した冷却システムの妥当性検討を時間領域で行うことが可能です。

33 GT-ISEへのエクスポート

GT-ISEへのエクスポート

機械学習機能

従来から応答曲面、またはNNといった機能がありますが、機械学習では、まずDOEの各手法でサンプリングし、様々な変数の組み合わせで多数のケースを計算します。計算されたデータセットをDOE-POSTに取り込み、そのデータセットの入出力関係をメタモデルに近似させます。作成したメタモデルをエクスポートし、GT-SUITEのモデルの中に取り込んで使用することもできます。

1.名称変更

V2024から、DOE-POSTの名称がMachine Learning Assistantに変わりました。起動するメニューの位置は変わりませんが、機能が拡充され、機械学習の総合ツールという位置づけとなっています。

34 新名称「Machine Learning Assistant」

新名称「Machine Learning Assistant」

2.動的ニューラルネットワーク

従来のStatic(静的)なニューラルネットワークに対して、Dynamic(動的)なニューラルネットワークであるNARX(Non-linear Autoregressive Model with Exogenous Inputs)の機能が追加されました。

システムの応答が過去の状態に依存する場合に使用し、学習は時系列データに基づいて行います。NARXはリカレントニューラルネットワーク(RNN)の1種で、他のRNNのLSTMと比較して10倍以上も計算コストが低いことが特長です。

35 動的ニューラルネットワーク

動的ニューラルネットワーク

以下に示した事例では、80セルからなるバッテリーモジュールモデルを作成した詳細な熱回路網モデルを使用しています。このモデルでは、600秒のドライブサイクルの計算に30時間ほどかかっていましたが、電圧やSOC、温度をNARXで学習し、学習後のモデルを使用すると計算時間がおよそ1分にまで短縮されました。

36 NARX適用例

NARX適用例

GT-SUITE V2024に関して、ご不明な点やご要望等ございましたら、お気軽に弊社営業担当(info@idaj.co.jp)までお問い合わせくださいますようお願いいたします。

 

 

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