バーチャルキャリブレーション:パワートレイン開発を加速するスマートなアプローチ

皆さま、こんにちは。
IDAJの森田です。
今回は、マルチフィジックス・システムシミュレーションツール「GT-SUITE」の開発元である、Gamma Technologiesが公開しているBLOGの内容を翻訳してご紹介します。
従来のキャリブレーションとテスト手法の限界
近年は、法規対応(OBD/排ガス規制)、顧客要求(燃費・効率)、メーカー基準(信頼性)など、求められる要件が大幅に拡大し、これらを満たすために、社内ベンチでの試験、実車による走行テスト、極地環境での試験、専用の試験装置など、膨大な物理試験が必要です。しかし物理試験では、試作部品が破損したり、冬季試験が春になってしまったといった季節要因による試験スケジュールの遅延など、予期せぬ問題が頻発し、物理試験だけに依存するプロセスは、非効率でリスクも高くなりがちです。つまり、パワートレインの評価とキャリブレーションは製品開発において不可欠ですが、多大な工数と多額の投資という大きな負担を強いられることになります。
一方、多くの繰り返し作業を伴うキャリブレーションや制御開発の領域では、バーチャルシミュレーション環境を活用することで、従来の物理試験に比べて大幅な時間短縮とコスト削減できることが知られています。また、必要に応じて物理試験を組み合わせる柔軟な開発プロセスを実現できることが大きなメリットです。
パワートレイン開発におけるバーチャルキャリブレーション
バーチャルキャリブレーションとは、これまで実機試験で行っていたキャリブレーションと制御開発の多くを、先行してシミュレーション環境で実施する手法のことです。このアプローチによって、作業の大部分を従来よりも短時間かつ低コストで完了できます。
自動車メーカーや商用車メーカーでは既にこの手法を採用されており、ベースキャリブレーションや制御ロジックの初期開発はシミュレーションで行い、コストと時間のかかる実車・実機試験は最終的な検証や仕上げに特化させます。これにより、シミュレーションを中心に据えた効率的なリソース運用を可能にしています。
バーチャルキャリブレーションの主なメリット
自動車業界は、開発期間の短縮、厳しさを増す規制、高まる顧客要求という課題に直面しています。バーチャルキャリブレーションは、これらに対応するための有力な手段です。
多くのメーカーはすでにパワートレインシミュレーションの環境を整備されており、それらは容易にバーチャルキャリブレーションに拡張することができます。物理試験の代替ではなく、補完的に活用することで、開発プロセス全体をより効率的かつ高品質に進化させ、エンジニアリングリソースの最適活用につながります。
- 物理試験設備より初期投資を大幅に抑制できる
- 自動化による省人化
- 設計パラメータの探索幅を広く、短時間・低コストで実施できる
- 追加コストはほぼゼロで、あらゆる環境条件を再現できる
- キャリブレーション作業中の試作ハードウェアの破損リスクを回避
- 多くのOEM・サプライヤーが既に必要なシミュレーション基盤を保有している

まとめ
従来のパワートレインキャリブレーションは物理試験に大きく依存し、コスト・期間・スケジュールというリスクの観点から効率的ではありません。規制強化や顧客要求の増加、開発リードタイム短縮といったプレッシャーが高まる中、物理試験だけでは対応が困難となっています。
バーチャルキャリブレーションを活用すれば、ハードが揃う前の段階からキャリブレーションや制御開発の大部分をシミュレーションで実行し、開発期間・コスト・リスクを大幅に削減しながら、同時にリソース効率の向上、試作ハードの破損防止、試験範囲の拡大、市場への迅速な対応などの実現が期待できます。
メーカー各社はすでにベースキャリブレーションや初期段階の開発でシミュレーションを活用し、物理試験は最終検証に集中させる運用を進めています。
さあ、バーチャルキャリブレーションを始めましょう!
本記事はバーチャルキャリブレーションに関する連載の第一回目です。今後、オープンループ型/クローズドループ型など、各種バーチャルキャリブレーション手法について詳しく紹介する予定です。最新情報を受け取りたい方は、ぜひGamma Technologies社の LinkedIn チャンネルをフォローしてください。
出典:Gamma Technologies Blog(2025年11月24日公開)
Introduction to Virtual Calibration: A Smarter Approach to Powertrain Development
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