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モデルベースによる次世代HMI(ヒューマンマシンインターフェース)の開発

 

皆さま、こんにちは。

IDAJの小川です。

 

Human Machine Interface(Human Machine Interface、ヒューマンマシンインターフェース)は、比較的新しい概念で、人と対象とする何かが触れ合う接触部を指します。例えば、人間が機械を使用する例を考えると、人間からの指示を機械に送信し、機械からの結果を人間に送信するための境界部に存在する装置やソフトウェアなどを指します。機器の表示やユーザーの操作を受け付ける部分ですね。

 

自動車を見てみると、代表的なHMIには、ハンドル、各種レバーやスイッチ、ディスプレイなどがあり、音声認識や画像認識の技術が該当します。その中でも特に、視覚情報を活用したHMIを利用する機会が急速に増加し、自動車や航空機のみならず、産業機械や農耕機にもその適用が拡大しています。

インターフェースを評価する項目としては、「物理」「認知」「感性」の3つの視点が求められます。視覚情報を取り扱うインターフェース設計では、特に「認知」に関する部分が重要です。認知面における考慮が重要な理由の一つが、“安全性の向上”。

自動車を運転中にドライバーが速度計を確認する場合、視線が前方からディスプレイへ一瞬でもずれることが事故の原因となることがあります。これを避けるために開発された車載システムがヘッドアップディスプレイ(Head-Up Display、HUD)です。ドライバーは車外の環境を視認しつつ、HUDによりドライバーの視線近くに表示される情報をもとにアクセルとブレーキを操作することになりますので、従来のインパネと比較して視線の動きを減らすことで安全性を向上させることができます。

また、近年のHMIは人が情報を理解しやすくなる認知面だけでなく、HMIから得られる体験、いわゆるUX(User Experience、ユーザー体験)が重要となってきています。特にスマートフォンの登場以降UXに対する見方は大きく変化し、シンプルでパーソナライズにも対応するHMIが評価されるようになりました。人間が機械に合わせる時代から、機械が人に合わせる時代へと確実に変わってきたのです。

HMIが変化すると、人とシステム間のHMIに求められるものが変化します。これまでは、システムの情報を正確に人が認知できることが重要でしたが、今後は車室内を快適にするHMI環境が求められます。つまり、情報を認知しやすくするだけではなく、人が満足感を得られるように感性を刺激するHMIが不可欠なのです。

情報を簡単に認知することができ、感性を刺激するHMI環境の作成には、徹底的で反復的なプロトタイピングと継続的なアップデートが必要です。

そこで、HMI開発に対して、画面要素をモデルとして取り扱うこと、バーチャルプロトタイピング環境、システムシミュレーションを用いた検証など、モデルベース開発の考え方を取り入れた開発プロセスに関心が集まるようになりました。

 

IDAJでは、HMI開発支援のために、Ansysの各種ソリューションとxMODなどを適用したソリューションをご提案していますので、ここからは具体的なツール名を示しつつご説明します。

Vプロセスと各ツールの関係性図

Vプロセスと各ツールの関係性図

 

VRがもたらす新たなHMI開発技術 ~VRを用いた非機能要求の妥当性確認~

HMI開発においては、人間工学的なアプローチやヒューマン・ファクター、つまり操作画面やボタンの配置に代表される非機能要求が大変重要です。従来の開発では、物理的なプロトタイプを作成し、人間が操作画面やボタンを操作することで検証を行ってきましたが、VR技術を導入することによって、デジタルエンジニアリングの世界でこういった非機能要求を確認することが可能になります。

VR技術を用いれば物理的なプロトタイプが不要となりますので、開発の早い段階で非機能要求の妥当性確認を実施できるようになります。手戻りを回避する観点から、設計効率を向上する上で非常に強力な手段だと考えています。

VRを用いた非機能要求の確認例には、欧州で実施されたi-VISIONプロジェクトがあります。2013~2016年にかけて実施された本プロジェクトは、「人間中心の航空機コックピットの設計と検証のための没入型セマンティクスベースの仮想環境」の開発を目的としていました。

プロジェクトの成果は、以下の3点。

 

1.コックピットにおけるタスク・認知作業負荷分析の基盤

2.セマンティックベースのシーングラフ構造と管理エンジン

3.インタラクティブで直感的なバーチャルコックピット設計環境

 

Ansysのリアルタイム光学シミュレーションプラットフォームを用いて、操作性や視認性、ビジュアル品質のHMI検証を同一のデータセットで実施することができます。このようなプラットフォームを実現するソリューションが、Ansys SCADE、Ansys VRXPERIENCE、Ansys SPEOSです。Ansys SCADEで画面のプロトタイプを設計し、それらをVR環境上で検証するためのAnsys  VRXPERIENCEで実際に人が確認します。この検証環境によって、ボタン配置などの身体的な大きさに関係するファクターを検証することに加えて、Ansys  SPEOSを用いることで光の反射を考慮することも可能です。

 

システムシミュレーションを用いたHMI開発手法

HMI開発に、MBDを取り入れるメリットは? -それは“開発の効率化”

 

1.モデルによる仕様の見える化

・複雑な設計を容易にする

・関係者間のコミュニケーションの向上

・部品としての再利用

 

2.シミュレーションを用いたフロントローディング

・ソースコードにする前の状態で動作確認(シミュレーションの活用)

 

3.自動コード生成

・コード品質の標準化

・機能安全規格への対応(Ansys SCADEの大きな特長の一つです。)

 

<主に使用するツール>

組込みディスプレイ開発支援ツール「Ansys SCADE Display」

マルチツール連携、MILS、SILSからHILSまでモデル共有を可能とするシミュレーションプラットフォーム「xMOD」

 

HMI開発にMBDを取り入れるメリットは?

HMI開発にMBDを取り入れるメリットは?

 

モデルによる仕様の見える化

モデルを使用しない開発においては、仕様の多くは自然言語や図表で示され、最終的な設計結果はソースコードになります。この場合、設計内容に人の解釈が入り込む余地があり、ソースコードを見ても設計結果がわかりづらいことが問題となります。

これに対してモデルを使用した開発では、設計結果が視覚的に確認しやすいモデルであるため、解釈が人によって異なることが減り、また異なっていることが容易に共有できるようになります。さらに、以下に示すように画面要素をモデルとして扱うことで、再利用性を向上させ、開発効率を改善することができます。

画面要素をモデルとして扱う例

画面要素をモデルとして扱う例

シミュレーションを用いたフロントローディング

従来の開発手法では、ソースコードができ上がらないと実際の振る舞いを確認できず、不具合が見つかると大きな手戻りが発生しやすい状況にありました。これに対して、画面要素をモデルとして扱うことで、ソースコードを生成する前にシミュレーションを用いた検証が可能となる、いわゆる、検証のフロントローディングを実現でき、手戻りを回避することができます。以下に示すように、HMIモデルを単純にシミュレーションするだけでは、画面要素やロジック面の相互作用を検証することが難しいことから、システムシミュレーションを用いて検証します。

シミュレーションを用いた検証1

シミュレーションを用いた検証1

シミュレーションを用いた検証2

シミュレーションを用いた検証2

 

システムシミュレーションとは、HMIモデルだけではなく、システムの挙動を再現したプラントモデルや制御モデルを含むシステム全体のシミュレーションを指します。

このシステムシミュレーションにHMIモデルを統合するための方法として、ここではFunction Mockup Interface(FMI)と、シミュレーションプラットフォーム「xMOD」を用います。

画面要素をモデルとして扱い、HMIを開発することができるAnsys SCADE Displayは、作成したHMIをFMIとして外部ツールと連携可能な形で出力することができます。この特性を生かして、システムシミュレーションと連携させ、実際のシステムの振る舞いが正しくHMIで表示されることを確認することができるのです。

システムシミュレーションモデルの例

システムシミュレーションモデルの例

 

自動コード生成

モデルレベルの検証終了後は、コード生成を行います。

Ansys SCADEの自動コード生成機能はISO 26262(自動車)やDO-178C/DO-331(民間航空機)といった機能安全認証に対応しており、モデルレベルの検証がコードレベルでの検証を実施したものと見なすことができます。これによって能安全認証取得が求められるプロジェクトでは、コードレベルの検証を省略でき、開発効率を向上させることができます。また、自動コード生成機能を用いることにより、個人の技量に依存しない、安全で信頼性の高い画一的なコードを生成します。

モデルで検証できることはモデルで検証し、コードレベルにおいてコードに落とさなければ検証できない作業に集中するというようにタスクを切り分け、工数削減を図りつつ、さらなる品質の向上をAnsys SCADEがバックアップします。

自動コード生成機能と認証

自動コード生成機能と認証

 

モデルベースによる次世代HMI開発のまとめ

今後、視覚情報を活用する機会は今後ますます増加するものと考えられますので、機能が同じなのであれば、ユーザーの満足度に直結するHMIが製品の差別化要因となり得ます。システムが提供する情報を簡単に認知・識別するだけでなく、感性をも満足させるHMIを開発するには、できるだけ早く、人を含めた検証を行うために、モデルベース開発をHMIに導入し、VR技術による検証環境を構築することが必要になってくるのではないでしょうか。

 

本記事の内容にご興味がおありの方は、詳細のご説明や資料提供、各ソリューションのデモが可能ですので、ご遠慮なく弊社営業担当(info@idja.co.jp)までご連絡ください。

 

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弊社では、Ansys SCADEにご興味のあるお客様を対象に、常設で下記のオンラインセミナーを開催しています。

「開発責任者・管理職・シニアエンジニア様向けAnsys SCADEご紹介セミナー」

本セミナーでは、普段、Ansys SCADEを操作されることはなくても、組み込みソフトウェア開発を統括・推進されている開発責任者・管理職・シニアエンジニアの皆様に、Ansys SCADEがどのようなシーンでお役に立つのかをわかりやすくご説明しています。IDAJは単にソフトウェアのご提供だけでなく、機能安全規格に準拠した開発プロセスへのツール適用や効率的なモデルの作成などをコンサルティングサービスとしてご提供します。ぜひご都合の良い時間にご視聴いただければ幸いです。

 

 

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