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【はじめての流体解析】流体解析を構成する要素(その2)

皆さま、こんにちは。

IDAJの石川です。

 

~流体解析をはじめる前に知っておくこと~(11

今回は、流体解析を構成する要素の続きから。

■計算するためのコンピュータ

■解析する形状や計算に必要なメッシュ

■さまざまな計算手法と計算するためのプログラム(!ここからです)

■どのような物理現象を扱うかを決める解析設定

■計算で得られた結果を人間に理解できる形にする結果処理

 


■さまざまな計算手法と計算するためのプログラム

流体解析は、すでにご説明したように保存則から得られた流体の基礎方程式を数値的に解くものです。

この方程式をどのように解くかという計算手法にも、様々なものがあります。

ここでは全てを紹介することはできませんが、

・アルゴリズム

・離散化手法

・差分スキーム

について、ごくごく簡単に紹介します。

 

“アルゴリズム”は、方程式をどのような手順で解いていくかを表現したものです。

流体解析では、“分離解法”や“連成解法(カップルドソルバー)”といったアルゴリズムがあります。

分離解法は、運動量保存式、質量保存式、エネルギー保存式を個別に、順番に解いていく方法です。

一方、連成解法は、運動量保存式、質量保存式、エネルギー保存式などを方程式レベルで結合し、1つの代数マトリックスにして計算していく手法です。

多くの場合は、分離解法で対応できますが、圧縮性が強く現れるような流れや自然対流などでは、連成解法の方が安定的に解ける場合があります。

コンピュータは四則演算は可能ですが、微分方程式をそのまま計算することができません。

そのため、微分方程式の形で記述された方程式を四則演算で計算できる形に変換する必要があります。この変換に用いる手法を“離散化手法”と呼びます。

“差分スキーム”は、各セルの値を隣のセルへ受け渡していくための手法です。

差分スキームにも、安定性に優れたものや精度が良いものなど様々な種類がありますが、ここで詳しくご説明することは割愛しますね。

流体解析は、さきほどお話した計算手法を用いて、各セルでの状態を計算していきますので、メッシュ数が多くなるとそれだけ計算時間が長くかかることになります。

 

そこで、より早く計算するために、1つの計算に対して複数のCPUを利用して並列処理を行うという技術があります。この技術を利用して計算することを一般に“並列計算”と呼んでいます。

多くのソルバーでは、並列計算を行なう場合、解析の領域を使用するCPUの数で分割し、各CPUが担当する領域を計算する領域分割型が採用されています。これによって、1つのCPUが計算するメッシュ数が少なくなるため、計算速度が向上します。

■どのような物理現象を扱うかを決める解析設定

ここでは、一般的な汎用流体解析ソフトウェアで求めることができる“現象”についてご紹介していきます。

 

流体解析では、長い時間が経過し、流れ場が変化しなくなった定常状態や、時々刻々と変化する状態を捉えることが可能です。

さらに、物質のつぶれ易さ(圧縮性)を考慮した解析、逆に圧縮性という性質を考慮しない非圧縮という状態の解析を行うことができます。

圧縮性を考慮するか、非圧縮性とするかは、密度をどのように扱うかによって決まります。

圧縮性を考慮する場合、密度が圧力によって変化するという設定にします。

乱流現象も求めることができます。

乱流現象は非常に複雑かつ微細な現象であるため、これを“まじめ”に捉えるためには非現実的な数のセルが必要になりますが、これまでに多くの方が研究し、様々な仮定の元で乱流現象をモデル化した“乱流モデル”がたくさんありますので、この乱流モデルを利用します。

汎用の流体解析ソフトウェアにも数多くの乱流モデルが搭載されていますので、これらを用いて乱流現象を捉えるのです。

その他にも、溶けたガラスや血液など、ニュートンの粘性法則に従わない非ニュートン流体を扱うことが可能です。

 

余談にはなりますが、非ニュートン流体には、以下のようなものもあります。

  • ビンガム流体(塑性流体 そせいりゅうたい)【例:ケチャップ、塗料など】

バターはナイフで力を加えるとトーストに塗ることができますが、ある程度の力を加えないとパンの上をバターが動き出すことはありません。このバターを流動させるために必要な力を降伏応力といい、その値を降伏値といいます。特に、降伏値を持ちながら、流れ出すとニュートン流体のように一定の粘度となる挙動を示すものを「ビンガム流体(塑性流体)」といいます。

 

  • 擬塑性流体(ぎそせいりゅうたい)【例:塗料、濃縮ジュース、マヨネーズなど】

降伏値は持ちませんが、力を加えることによって粘度が下がるものを「擬塑性流体」といいます。力を加えるまでは高い粘度を示すため、あたかもビンガム流体のような振る舞いをします。マヨネーズやケチャップなど、チューブに入った食品の多くは、これにあたりますね。

 

  • ダイラタント流体【例:ミルクチョコレート、片栗粉水、波打ち際の砂など】

擬塑性流体とは逆に、力を加えることによって、粘度が上がる流体を「ダイラタント流体」といいます。代表的なものとして、片栗粉と水を1:1くらいで混ぜ合わせたものがこれにあたり、現象としては、そーっと流すと、水のように流れますが、これを棒でかき混ぜると、ぎゅっと締まって流れにくくなります。

以前テレビで、片栗粉と水を混ぜ合わせたものの上で沈まないように、ジタバタしている白衣を着た先生の姿を見たことがあります。これはまさに、ダイラタント流体の特性(ダイラタンシー)を利用した現象なのです。一度やってみたい!と思ったのは、私だけではありませんよね?!

 

残りのご説明は、次回に譲ります。

 

続きはこちらです。【はじめての流体解析】流体解析を構成する要素(その3)

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