【今日のANSYS】パンタグラフ舟体の空力音低減手法の基礎検討
皆さま、こんにちは。
IDAJのANSYSプロダクト担当の河口です。
CAEやCFDが世の中の役に立っている情報や興味を引く適用事例などの情報を、ANSYS, Inc.及びアンシス・ジャパン株式会社発行の情報誌「ADVANTAGE」の記事を中心にご紹介させていただきたいと思います。
今回は、鉄道総合研究所様がWebサイトで公開されている「プラズマアクチュエータによるパンタグラフ舟体の空力音低減手法の基礎検討」の概要をご紹介します。
新幹線の沿線環境負荷低減や高速化にとって、沿線騒音、特に空力音の低減が重要な課題になっています。新幹線車両の構成要素のうち、パンラグラフは主要な空力音源のひとつになっており、なかでも架線としゅう動する舟体の寄与が大きいことが分かっています。舟体から生じる空力音は、主に、舟体背後に生じるカルマン渦に起因するエオルス音と、乱流境界層によって生じる広帯域音の複合した音です。そこで、現状のパンタグラフの矩形の舟体形状を維持したうえで、流れ場制御手法を用いた空力音の低減を実現する検討を実施されました。
物体表面近傍の流れを制御する手法であるプラズマアクチュエータは、アクチュエータ表面にプラズマを発生させ、プラズマの作用によって物体表面に沿う方向に流れを誘起するものです。
風洞試験によって、プラズマアクチュエータを剥離点近傍に適用することで、後流の流れを低減できることが確認できましたが、この結果は風速4.6m/sの低風速域における流れ場の評価結果であるため、高風速域における流れ場制御効果や空力音低減効果の検討のため、Fluent(現ANSYS Fluent)のLESによる非定常流れ場解析を実施されました。
結果から、舟体の剥離点近傍にプラズマアクチュエータを適用することによって、
・流れの剥離の様子が変化し、後流の乱れを低減することができること
・プラズマアクチュエータの適用位置は、剥離点の上流側直近よりも、剥離点の下流側直近の方が顕著な流れ場制御効果が得られること
・プラズマアクチュエータによる流れ場制御効果は、主にせん断層を引き寄せて剥離を抑制することによって得られ、その結果、後流領域における剥離せん断層の巻き込みが弱まり、カルマン渦が弱まって後流領域における流れが低減すること
・プラズマアクチュエータの適用によって、舟体から放射されるエオルス音を低減することが可能であると予測されること
が、わかりました。
今後は、プラズマアクチュエータによる流れ場制御メカニズムの解明を深め、プラズマアクチュエータによる流れ場制御メカニズムに基づいた実用的な空力音低減の手法提案まで視野に入れていらっしゃいます。
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