CONVERGEを使用した風力発電所の設計
皆さま、こんにちは。
IDAJの水島です。
今回は、オートノマスメッシング熱流体解析プログラム「CONVERGE」の開発元である、Convergent Scienceが公開しているBLOGの内容を翻訳してご紹介します。
田舎の高速道路で、風力タービンの翼がトラックで運ばれていくのを見たことがあります。
それは長さ100フィート(約30.5メートル)を超える、白く滑らかな曲線状で、思わず胸がいっぱいになりました。ドンキホーテが風車と戦った架空のお話[1]から、どれだけの年月が経ったのでしょうか。
1回転するごとに1エーカー(4,046平方メートル)を一掃するほどの(!)巨大な羽が作られ、ピサの斜塔よりも高い塔に取り付けられるようになったのです。
そのタービン翼は運ばれていき、どこかの風力タービンに取り付けられたはずです。では、その外観や設置位置はどのように決定したのでしょうか?
送電網に接続された複数の風力タービンのネットワークとしての風力発電所が必要だと判断されたら、まずは候補地の天気や風、地形を詳細に調査します。
次に、標準的には、WAsPソフトウェアスイート[2]などのモデルを使用して、風力タービンの後流に対して、パラメータ化されたシンプルな経験的シミュレーションを実行します。もし、計算リソースが豊富で、高性能コンピュータが使用できるのであれば、CFDを使用して風力発電所のあらゆる側面を設計することができます。それは翼設計にとって重要な個々のタービン翼の負荷計算から、ほかのタービン後流からの影響を防ぐための個々のタービン位置の最適化、塔とその関連構造物への環境の影響の見積もりまでに及びます。
例えば、Convergent Scienceは、マサチューセッツ大学アマースト校の大学院生であるHannah Johlasの研究に対して、共同出資者の一員として名を連ねています。彼は、CONVERGEを使用した沖合の支持構造物の研究を行っています。そのほかにも、環境[3] (地表の温度[4]や作物[5]など)、気象[6]に及ぼす風力発電所の物理的影響に焦点を当てた研究があります。地方自治体や利害関係者らに、説得力のあるCFDの結果示すことができます。
しかし、ここには落とし穴もあります。
CFDから詳細かつ正確な結果を取得するには、計算コストと時間がかかる可能性があります。そこでぜひ、CONVERGEをご利用ください。
CONVERGE のCFDでは、風力発電所の設計と最適化の様々な側面の詳細画像を出力でき、自動メッシュ作成、遺伝的アルゴリズムの最適化、複雑な移動形状のスムーズな処理など、多くの優れた機能が備わっており、シミュレーションにかかるコストを下げることができます。
風力発電所は昔から、沖合やアイオワなどの平坦な地形に設置され、それらが現在の米国の風力エネルギー生産をリードしてきました[7]が、カリフォルニア[8]などのより複雑な地形にも配置されるようになっています。こちらは、複雑な地形に設置された4枚の翼をもつ風力タービンの周りの風の流れをCONVERGEで解析した結果です。この地形には丘、道路、道路上を走行(移動)するトラックが含まれています。

図1
このシミュレーションで使用されている最も強力な機能は、解適合格子細分化(AMR)を含むCONVERGEの自動メッシュ作成機能です。これによって、解像度を上げるべき場所にセルを正確に追加することができます。またタービン翼と一緒に移動する境界を埋め込む、移動境界細分割機能も使用しています。
これまでのCFD研究では、風力タービンに対して、一括ソース項とともにアクチュエータディスクという単純化した物体を使用していました[9]が、これは下流の後流に対する翼の動きの影響を無視することになります。CONVERGEは、翼の回転運動と、その結果として生じる下流の後流の影響を解析することができます(図1)。図2では、翼に沿ってメッシュ解像度を上げたQ値の等値面(渦構造の視覚化)を確認できます。アクチュエータディスクを使うのではなく、翼の動きを含めることによって、乱流後流をより正確に解析でき、丘などの複雑な地形の周りの流れ場を観察することができます(図3)。
図2
図3
風力発電所に対する他の要因からの影響も見ておくと、役に立つことがあります。
図1で示すように、道路上のトラックがシミュレーション領域に含まれています。トラックの表面に沿ってAMRと境界細分割を使用して、移動するトラックの流れ場への影響や、道路とトラックに最も近いタービンの後流の相互作用を解析することができます。
CONVERGEには、風力発電所の最適化と設計に使用できる機能が多数備わっています。水、農地、丘などの地形の様々な表面に対して異なる粗さを設定することができます。
塔を回転させ、変化する風(領域の境界上のソースとして指定)に対する反応を出力したり、アクチュエーターラインモデルを指定して、風力発電所を通過する風の流れをシミュレーションすることができます。塔の配置と高さの設計から後流の影響を補正する場合には、遺伝的アルゴリズムの最適化(CONVERGE内で利用可能)を使用すると、候補となる多数の構成を生成できますので、設計時間の前倒しが可能となります。そして、CONVERGEによるCFDシミュレーションを使用して、特定の地形と風の条件下での風力発電所の最適な構成を決定します。
風力発電容量を増やすために、世界中の国々がインフラに投資しており、世界の風力発電の累積容量は過去5年間で3倍になりました[10]。再生可能エネルギー源への需要が高まる中、風力発電所設計の効果的な計画を確実なものにするためのツールが不可欠です。CONVERGEは、風力発電所の多くの側面を正確かつ簡単に(!)シミュレーションできますので、このますます需要が高まっているエネルギー源を最大限に活用することができます。
引用:
[1] https://xkcd.com/556/
[2] http://www.wasp.dk/
[3] http://www.engineering.iastate.edu/research/eri/initiatives/strategies/wei/
[4] Zhou, L., Tian, T., Roy, S.B., Thorncroft, C., Bosart, L.F., and Yu, Y., “Impacts of Wind Farms on Land Surface Temperature,” Nature Climate Science, 2, 539-543, 2012. DOI:10.1038/NCLIMATE1505
[5] Rajewski, D.A., Takle, E.S., Lundquist, J.K., Prueger, J.H., Pfeiffer, R.L., Hatfield, J.L., Spoth, K.K., and Doorenbos, R.K., “Changes in Fluxes of Heat, H2O, and CO2 Caused By a Large Wind Farm,” Agricultural and Forest Meteorology, 194, 175-187, 2014. DOI:10.1016/j.agrformet.2014.03.023
[6] Roy, S.B. and Trauteur, J.J., “Impacts of Wind Farms on Surface Air Temperatures,” PNAS, 107(42), 17899-17904, 2010. DOI:10.1073/pnas.1000493107
[7] https://www.awea.org/resources/statefactsheets.aspx?itemnumber=890
[8] http://awea.files.cms-plus.com/FileDownloads/pdfs/California.pdf
[9] http://www.ncsa.illinois.edu/enabling/vis/vis_group/project/windfarm
[10] http://www.gwec.net/wp-content/uploads/2017/02/7_Annual-and-Global-Cumulative-Offshore-wind-capacity-in-2016.jpg
出典:CONVERGENT SCIENCE BLOG(2017年11月21日公開)
DESIGNING WIND FARMS WITH CONVERGEOPTIMIZING A REDUCED REACTION MECHANIS
主任研究員 Sarani Rangarajan
CONVERGEをご存じでない皆様、是非こちらをご視聴ください。CONVERGEの概要について9分で確認いただけます。
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