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Particle Energy Spectra(粒子エネルギースペクトル)を用いた粉砕効率の解析

皆さま、こんにちは。

IDAJの中嶋です。

 

今回は、パーティクルシミュレーター「Rocky DEM」の開発元である、ESSSが公開しているBLOGの内容を翻訳してご紹介します。

 


 

 

読者の皆さまは、Rocky DEMに搭載されている破砕機能をご存知でいらっしゃいますよね?!

では、Particle Energy Spectra(粒子エネルギースペクトル)を利用されたことはおありでしょうか? ― これこそが、求めていた時間節約機能かも知れません!

ミル。それは、エネルギー消費の怪物

エネルギーを加えることによって細分化する“粉砕”は、エネルギー消費の多いプロセスとして知られており、選鉱にかかるコストの主要な割合を占めると言われています。選鉱プラントでは、粉砕は生産コストの最大70%を占めることもあるとか。これは、消費電力または摩耗による装置のパーツ劣化によるものです。

採鉱・鉱物処理プラントにはたいてい、自生粉砕ミル(autogenous (AG))、半自生粉砕ミル(SAG)、またはボールミルがあります。これら回転ミルの粉砕プロセスは、ミルの水平軸での回転による、高速衝突、摩耗、大きな粒子の間で小さな粒子が挟まれて削られるなど、一連のメカニズムから構成されています。

ミルの消費エネルギーは大きいものの、実際の粒子破砕に変換されるのは、このエネルギーのごく一部です。Paul Cleary氏 (2000, *) の研究では、直径5m、長さ7mのボールミルの場合、消費電力は3.5 MWに及ぶ可能性があり、そのうち細分化に使われるのはたった1~5%(!)であると指摘しています。

 

なぜ回転ミルの効率はこんなに悪いのか?

主な理由は、衝撃のすべてが破砕につながらないためです。エネルギーの低い衝撃では破砕は生じません。一方、過度に激しい衝撃の場合、破砕のプロセスに加えられるのは、使われるエネルギーの一部に過ぎず、残りは失われてしまいます。

この状況では、業界にかかわらず、こういったタイプの装置で一層の効率化が求められるのは当然のことです。多くの場合、目標の製品サイズを保ちつつミルの処理能力を上げることはもちろん、消費電力とライナー交換のコストを削減しようとします。

したがって、粉砕効率を上げるためには、粉砕プロセスにおいて電力がどう消費されるのかを理解することが極めて重要です。

これをRocky DEMで可能にする方法の1つが、Particle Energy Spectraと呼ばれるツールの使用です。

 

Particle Energy Spectraを使う理由は?

個々の破片の計算と可視化に、追加の計算コストが必要となる破砕シミュレーションとは異なり、Particle Energy Spectraは、粒子衝突のエネルギー統計を用いて、破砕率と摩耗率をグラフィック形式で予測します。この方法を用いると、粒子が実際に破壊される様子を視覚化するという計算負荷の高いステップが省かれ、破砕問題の回答をより早く得ることができます。

エネルギー統計を表す標準的な例が、累積エネルギースペクトルです。エネルギースペクトルは、単位時間あたりに粒子に加えられる比エネルギーの統計を表します。粒子に加えられるエネルギーレベルを見ることで、粉砕ミルなど連続プロセスの破砕率を予測することができます。

 

回転ミルにParticle Energy Spectraを用いた場合のプロット例

回転ミルにParticle Energy Spectraを用いた場合のプロット例

 

上記プロットでY軸に表示されているのは、X軸に示された比エネルギー値より大きい比エネルギーでの衝突から生じる累積電力(単位時間あたりのエネルギー)です。累積電力は、ある比エネルギー以上の衝突すべてを足し合わせた電力を表しています。

なぜこのようにプロットされているのでしょうか?

特定の粒子が破砕すると考えられている最小の比エネルギーを定義する青の点線に注目してください。これはユーザーが認識しているものです。

この値よりも大きい比エネルギーでの衝突すべてが破砕につながります。残りのすべての衝突は破砕には至りません。したがって、破砕に使用可能な電力が、対応するY値によって与えられます。

 

Particle Energy Spectraの使い方

シミュレーション中に粒子エネルギースペクトルを収集したい場合、Rocky DEMが各粒子グループについて新しくエネルギー曲線を計算します。この粒子グループは、粒度分布の各サイズによって生成され、Normal Specific PowerとShear Specific Powerに分けられています。これらの曲線は、[Curves]タブ上で、[specific energy]の下にグループ分けされています。

比エネルギー曲線用の新規セクションが表示された粒子の[Curves]タブ

比エネルギー曲線用の新規セクションが表示された粒子の[Curves]タブ

 

これらの曲線を用いて、下図のようなクロスプロットを作成できます。

Particle Energy Spectraを使用すると、標準的な破砕計算に比べ計算時間が短縮されるだけではありません。このツールは、2つの異なるミル形状うちどちらかを選択する、最適な回転速度を選択する、また、異なるボールサイズの破砕効率を比較する際にも役立ちます。

エネルギースペクトル値を示したクロスプロット

エネルギースペクトル値を示したクロスプロット

 

 

Particle Energy Spectraでの処理能力の計算方法

いくつかの設計を比較するだけでは十分でなく、処理能力を計算する必要がある場合はどうでしょう?

数学のステップを1つ追加するだけで、これも可能になります。各サイズのグループの所定の比エネルギー値について異なる電力値を取得できます。この電力値は、各サイズグループの粒子が破砕する確率を求める方程式に入力されます。

この確率を取得すると、各粒子サイズについてT10曲線が得られます。この確率にその粒子グループの質量を乗じると、各サイズグループがどのくらい生成されるかがわかります。

注目するサイズグループ(一般的に、メッシュ格子をちょうど通り抜けられるサイズ)を合計するとトン数が、電力を処理率で割ると効率(kW-h/T)が得られます。

このようにして、Particle Energy Spectraを使うと、わざわざ大がかりな時間のかかる破砕シミュレーションを行わなくても、必要な処理能力値がわかります。

いかがでしょう?素晴らしいと思いませんか!

 

Particle Energy Spectra解析との組み合わせ

Particle Energy Spectra解析機能は、Rocky DEMの構造物表面の摩耗モデル(Wearモデル)と組み合わせることができます。つまり、破砕効率を評価するだけでなく、粒子が引き起こす摩耗によってライナー形状がどう変化するかを明確に確認することができるのです。

これら全てが1つのシミュレーションで実行できます。便利ですよね?

 

表面摩耗の変化を示すミルの断面のシミュレーション

 

(*)References
CLEARY, P. 2000.Charge behavior and power consumption in ball mills: sensitivity to mill operating conditions, liner geometry and charge composition.International Journal of Mineral Processing, 63, 79-114.

 

出典:(一部編集して翻訳)Scanning and simulating unique particle shapes: an experiment

著者:Lucilla Almeida、Katie Aldrich

2016年6月1日公開


 

パーティクルシミュレーター Rocky DEM

 

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