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パーティクルシミュレーター「Ansys Rocky」と最新バージョン2023R1

Tatsuya Nakajima

皆さま、こんにちは。

IDAJの中嶋です。

離散要素法(DEM: Discrete Element Method)による固体粒子群の挙動予測のためのシミュレーション技術分野において、実形状粒子やGPUによる高速計算など常に新しい技術でパーティクルシミュレーションの常識を塗り替えてきたRockyが、20231月にAnsys社に買収され、Ansys Rockyとして引き続きAnsys社から提供されることになりました。

本記事では、これまでのRockyAnsys Rockyとの違いについてご説明し、RockyおよびAnsys Rockyの最新バージョンである2023R1の新機能についてもご紹介したいと思います。

これまでのRockyとAnsys Rockyとの違い

ESSS社が開発していたRockyとAnsys Rockyでは、機能の違いは無く、ユーザーインターフェースもAnsys RockyではAnsysのコーポレートカラーの色使いとなっているものの、使用方法に関しては従来のRockyと全く同じです。

ライセンス管理は、これまでのFlexNetからAnsysライセンスサーバーに変更されたため、これまでAnsys関連ツールを利用されていなかったお客様は、新たにAnsysライセンスサーバーのインストールと設定が必要になりますが、すでにAnsys関連ツールを利用されていたお客様は、既存のライセンスサーバーにAnsys Rockyのライセンスを読み込むことでAnsys Rockyをご利用いただくことができます。

Ansys Rockyのモジュール入手方法やインストール方法、Ansysライセンスサーバーのインストールおよび設定方法は、弊社がインストール手順書を作成いたしましたので、Ansys Rockyへの移行のご案内とともにご提供しています。

ユーザーインターフェースの変更

ユーザーインターフェースの変更

 

Ansys Rocky(ESSS Rocky)2023R1の新機能

次にAnsys Rockyの最新バージョン2023R1の3つの代表的な新機能についてご紹介します。

1.Smoothed-Particle Hydrodynamics (SPH)

2022年からβ機能として別モジュールでご提供していた、いわゆる粒子法のひとつであるSmoothed-Particle Hydrodynamics(SPH)による流体解析および流体-固体粒子の連成解析機能が正式機能としてリリースされました。

Ansys RockyをインストールするだけでSPHを標準機能としてご利用いただくことができ、ユーザーインターフェースも刷新され、これまでの固体粒子シミュレーションの設定と同じ感覚でシミュレーションモデルが作成できるようになっています。また、表面張力の考慮、流出境界条件の定義、質量流量のモニターといった機能が実装されました。

SPHでは、有限体積法などを使用する一般的な流体解析が必要とするメッシュ作成が不要なため、短時間で流体解析のシミュレーションモデルが作成できるだけでなく、Ansys Rockyの特徴であるGPUによる高速計算や、実形状粒子を使った固体粒子シミュレーションとの連成解析、熱移動を考慮した熱連成解析など、これまでできなかったシミュレーションが可能になることが期待できます。

 

ウエットコンディションにおける車両の挙動予測(左)とスープ調理中の野菜の挙動予測(右)

ウエットコンディションにおける車両の挙動予測(左)とスープ調理中の野菜の挙動予測(右)

走行中の車両に積載されたタンク内のスロッシング対策評価

走行中の車両に積載されたタンク内のスロッシング対策評価

水面へ自由落下する救命ボートの挙動予測

水面へ自由落下する救命ボートの挙動予測

 

2.Injection Points機能の拡張

小さなアップデートかもしれませんが、Ansys Rockyのシミュレーション対象を大きく広げてくれるのがInjection Points(粒子投入位置)に関する機能拡張です。

これまでのAnsys Rockyでは粒子投入位置の形状は矩形もしくは円形(二重円筒は可)のみでしたが、2023R1ではCADで作成した2次元形状を読み込むことで任意の形状でも定義できるようになりました。さらに、構造物壁面の移動や結果評価領域(Cubeなど)にだけ設定できたMotion Frame(移動速度や回転速度などの定義に利用)が、粒子投入面にも設定できるようになりました。これにより、シミュレーション中に移動する構造物上に粒子投入場所を設定したり、任意の運動をする粒子投入場所を定義することが可能になります。

移動車両から散布される肥料の挙動予測

移動車両から散布される肥料の挙動予測

 

2.Ansys Integrationの拡張

最後のトピックスは、Ansysツールとの連成解析の機能の強化です。特に期待しているのが熱流体解析ツールのAnsys Fluentとの熱流体-固体粒子の双方向連成解析において、固体粒子-流体-構造物壁面の3者間での熱移動が考慮できるようになったことです。

これまでは構造物壁面の温度は固定という制限がありましたが、流体や固体粒子による構造物壁面温度の変化を考慮したシミュレーションが可能になります。また、Ansys Workbench上で1方向連成だけでなく、双方向連成解析も設定できるようになりました。

双方向の熱流体-固体粒子連成解析による構造物壁面の温度変化予測

双方向の熱流体-固体粒子連成解析による構造物壁面の温度変化予測

 

毎年、積極的にソルバーの改良や、新しい物理現象へ対応するための新機能を追加してきたRockyでしたが、開発元の変更はあっても従来の開発姿勢は変えずに、さらにAnsysツールとの連携強化が期待されるAnsys Rockyとして、最新バージョンのトピックスをご紹介しました。

日本でRockyのご紹介を開始してから様々な業界のお客様より多くのご相談をいただいていますが、最近は特に業界を問わない生産技術分野、医薬・食品分野からのご相談が増えているように思います。これまでは計算時間やモデル化の難易度で諦めていた固体粒子のシミュレーションを可能にするのがAnsys Rockyですので、課題をお持ちのお客様は弊社に是非一度ご相談ください!

 

パーティクルシミュレーター Ansys Rockyとは?

離散要素法(Discrete Element Method: DEM)によって大量の粒子や、粉体の全体的な挙動を予測するための、強力なパーティクルシミュレーター。

粒子や粉体の挙動予測は、鉱業・自動車・機械・建築土木・農業・食品・医療・化学・材料など多くの産業界の生産技術分野でのニーズが増しており、粒子形状のモデル化方法や取り扱うことができる粒子の数、計算時間の短縮、他の分野のシミュレーションとの連成など多くの技術課題があります。
Rocky DEMは、実形状粒子の詳細なモデル化、GPUによる高速計算、最新の物理モデル、豊富な結果処理機能、使いやすいユーザーインターフェース、Ansysツールとの連成解析によって、設計現場の解析ニーズに幅広くおこたえします。

詳細は、こちらをご覧ください。

Ansys Rockyの解析事例を多数掲載しています。IDAJ Youtube Channelはこちらです。

 

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