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カーボンニュートラル実現に向けた水素利活用課題へのCONVERGE適用 ~基礎検証編~(その1)

Jun Mizushima

 

皆さま、こんにちは。

IDAJの水島です。

京都議定書やパリ協定、経済産業省策定のグリーン成長戦略を引用するまでもなく、2050年のカーボンニュートラル(以下 CN)達成に向けた取り組みに対して急激な機運の高まりを実感します。特に運輸部門においては電動化の流れと相まって、エンジンの役割や機構、使用する燃料、燃焼形態、燃料供給方式など、様々な選択肢を検討する必要に迫られています。

本記事ではエンジン開発を中心にご紹介しますが、これらのシミュレーション技術はプラント設備における輸送やコンプレッサ・ポンプなどの搬送機、水素ステーションや貯蔵設備などに対しても適用していただくことができます。

CONVERGEを用いたエンジン筒内ソリューション

エンジン筒内分野の3次元数値流体解析ツールとして圧倒的な実績を誇る、オートノマスメッシング熱流体解析プログラムCONVERGEは、新燃料・複合燃料、新燃焼形態、新エンジン形態、新テーマ、標準化・作業の効率化といった難易度が高く、かつ最新のシミュレーション技術に対応することができます。(詳細は、”先進的で効率的なエンジン筒内ソリューション”もご高覧ください。)

以下は、CONVERGEで検討が可能なアイテムです。CNに関連した“今までにないエンジン”に対しては、オレンジの3つのカテゴリー、新燃料・複合燃料、新燃焼形態、新エンジン形態が該当します。新燃料・複合燃料と新燃焼形態にはCONVERGEの高速な詳細化学反応ソルバーが、新エンジン形態にはオートノマスメッシング機能がそれぞれ大きな力を発揮します。特に詳細化学反応は重要で、これまでの燃焼計算につきものだった燃料は単燃料のみという限定と、予混合または非予混合でしか計算できないという燃焼形態の限界から解放されます。

水素、アンモニア、バイオ燃料(E10、E85)、天然ガス(CNG、LNG)、e-Fuelなどを燃料とする“今までにないエンジン”では、燃料の選択肢は多岐に渡り、さらにそれらを複数混合させたり、パイロット的に噴射して着火させる混焼、高EGRを含むリーン状態での燃焼、筒内直噴による混合気成層や温度成層の活用、自己着火の活用と火炎伝播との併用、さらに水噴射との併用が視野に入っています。これらを予測するシミュレーションでは、エンジン燃費や出力といった性能はもちろん、オクタン価・セタン価が異なることによるノック・プリイグ限界や失火限界、NOx・CO・未燃炭化水素(THC、UHC)・Soot(煤、すす)のナノパーティクル質量や粒子径といったエミッションを含めた予測が期待されています。

これからのエンジン筒内解析においてCONVERGEが強みを発揮するテーマとCONVERGEの機能

これからのエンジン筒内解析においてCONVERGEが強みを発揮するテーマとCONVERGEの機能

 

グロープラグ着火によるスプレーガイドガソリン圧縮自着火計算(出典:Argonne国立研究所)

グロープラグ着火によるスプレーガイドガソリン圧縮自着火計算(出典:Argonne国立研究所)

 

詳細化学反応を適用する場合は、対象とする燃料に関する反応式群を記述した反応メカニズムが必須で、その精度が3次元の計算精度に対して大きなウェイトを占めることになります。その課題に対してCONVERGEの開発元であるConvergent Scienceは、世界中の研究機関とのコラボレーションの中で改良を進めており、またC3コンソーシアム(※1)では、改善活動を積極的に主導しています。

0次元/1次元詳細化学反応計算

・0次元反応器:着火遅れ計算、化学平衡計算、エンジン計算

・1次元反応器:層流燃焼速度計算

3次元計算の補助ツール

・詳細化学反応メカニズムのリダクション、係数チューニング、複数メカニズムのマージ

・反応経路分析、感度解析

・サロゲートブレンダー(混合燃料作成ツール)

・テーブル作成(FGM、層流燃焼速度、TKI)

もちろん、新燃料に関しても多数の適用実績がありますし、反応メカニズムの予測精度を高速かつ大量に検証できる0D/1Dツールをご提供しています。このツールは、1ライセンス以上のCONVERGEをご契約いただいているお客様なら、本数に制限なくご利用いただくことができます。IDAJでもメカニズム選定や3次元計算へ適用するための縮約化などのお手伝いができますので、お気軽にお問い合わせください。

(※1)Computational Chemistry Consortium

CONVERGEの0D・1Dツール(Chemistry Module)

CONVERGEの0D/1Dツール(Chemistry Module)

 

CONVERGEの革新的機能であるオートノマスメッシング機能は、メッシュ作成作業が一切必要ないこと、非定常の解適合格子が特長ですが、その仕組みをご存じであれば、副室・2ストローク・対向ピストンなど、どのようなエンジン機構へも適応可能であることをご理解いただけるものと思います。また、燃料供給形態にも制限はありませんので、液体噴射はもちろんのこと、ガス噴射や多点からの噴射、アクティブ副室、多点点火やグロー点火など、あらゆる形態の検討にご活用いただくことができます。

新燃料関連の適用事例

水素、アンモニア、合成ガス・バイオエタノール、天然ガスなどの新しい燃料に対してCONVERGEの詳細化学反応ソルバーを適用した事例の一部を以下に示します。

 CONVERGEによる新燃料関連の適用事例(一部)

CONVERGEによる新燃料関連の適用事例(一部)

 

様々な燃料や燃焼形態に対して適用例がありますが、ここではサンディア国立研究所で実施された水素直噴エンジンの計算をご紹介します。水素のガスインジェクタを中央に、点火プラグを吸気側に配置したエンジンで、噴射された水素の分布や流速分布を実測結果と比較すると、よい一致が見られています。形状と設定は異なりますが、CONVERGE 3.0.24に付属のサンプルデータに格納されていますので、詳細反応メカニズムとともにご参照いただくことができます。

 CONVERGEによる水素直噴エンジン計算

CONVERGEによる水素直噴エンジン計算

(出典:General Electrics、Caterpillar、 Duisburg-Essen Univ. Convergent Science、2014年、ICEF2014-5610)

 

水素直噴エンジン燃焼計算結果

水素直噴エンジン燃焼計算結果

 

次回は、水素の基本的な特性を振り返るとともに、改めてシミュレーションで適切に表現できるのかという観点で検証した事例をご紹介します。

 

 

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