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自動車エンジン設計のための機械学習

 

皆さま、こんにちは。

IDAJの水島です。

 

今回は、オートノマスメッシング熱流体解析プログラム「CONVERGE」の開発元である、Convergent Scienceが公開しているBLOGの内容を翻訳してご紹介します。


 

「機械学習(Machine Learning:ML)」は正真正銘の流行語になりましたね。

渋滞予測やスマートフォンの仮想アシスタントなどの多様なアプリケーションからゲノムシーケンス解析まで、研究者は幅広い分野にわたって機械学習を利用し、大きなデータセットに基づく予測の改善に努めています。

機械学習は日常生活を便利にするだけでなく、技術開発にも役立てられます。

アルゴンヌ国立研究所、アラムコ研究所、Convergent Scienceの最近のコラボレーションにおいて、Moiz氏らは、自動車エンジンの研究に機械学習技術を適用し、CONVERGEで実行される計算流体力学(CFD)の研究をより高度なものにしました[ 1 ]。

機械学習は、既存のデータセットを活用して、性能の向上、効率化の促進、排出量の削減を実現する新しい設計を最適化し、予測します。市場競争に加えて、ますます厳格化する排出量要件に照らすと、機械学習とエンジンCFDの融合は有望な開発手法なのです。

 

機械学習の概要

 

最も基本的なレベルの機械学習は、データを活用して正確な予測を行うことです。私たちが毎日遭遇する、ターゲットを絞った広告はその例です。マーケティング担当者は、機械学習を使用して、人口統計と人々の興味に​​関する情報を取得し、関連がある製品を勧めます。多くの場合、そういった“勧め”は驚くほど正確です。

科学者は、最初の開発ステップにおいて、大規模なデータセットを機械学習モデルとして収集します。次に、機械学習モデルを使って、そのデータに計算統計を適用し、入力と出力の関係を調べます。このプロセスは、モデルトレーニングと呼ばれますが、モデルの精度を評価するために、モデルにトレーニングデータセットに含まれていないテストデータセットを提供し、予測の精度を調べることがよくあります。アルゴリズムが正確であればあるほど、予測が不正確になるリスクが下がります。現在、決定木、サポートベクターマシン、ニューラルネットワークなどの多くの機械学習アルゴリズムがあり、その中には何十年も開発が続いているものもあります。

 

CFDアプリケーション

エンジン設計者に普及している最適化手法は、遺伝的アルゴリズム(Genetic Algorithm:GA)です。CONVERGEにはCONGOというツールが搭載されており、これは「適者生存のアプローチ」を利用して設計を最適化します。

つまり、この方法では、変化する一連のユーザー定義パラメーターを使用して、母集団内の個人(設計条件)を互いに競合させます。各個人には、燃焼フェーズ、燃焼形状設計など、最適化すべき様々なパラメーターの特性が含まれます。GA研究の目標は、図示燃料消費率といった結果を最適化し、同時に排出量やピークシリンダー圧力など、特定の制約条件内に結果をとどめることにあります。

 

当然のことながら、遺伝的アルゴリズムの研究は、多くの連続した世代に対して行わなければなりません。この手法の主な欠点の1つは、世代が長期間、場合によっては数か月に及ぶ可能性があることです。これは、ほとんどのエンジンCFDシミュレーションが、個々の結果を得るのに1日~1週間程度かかるためです。となると、多くの場合、CFDのGA最適化よりも高速なソリューションが必要です。この問題に対応するために、Moiz氏らは、ガソリン圧縮着火(Gasoline Compression Ignition:GCI)エンジンの設計開発を高速化すべく、機械学習と遺伝的アルゴリズム最適化を組み合わせました。ここで使われたのは、部分予混合圧縮着火で低オクタン価ガソリン燃料を使用するエンジンです。

まずは、2,048ケースにのぼるCONVERGEシミュレーションから、大規模な空間充填実験計画法(DoE)を実行して、トレーニングデータセットを作成しました。DoEは一度に定義できるため、シミュレーションは同時に実行します。アルゴンヌ国立研究所にある”Mira”というスーパーコンピューターのような大規模なHPCクラスターが出現し、CFDシミュレーションのDoE全体が数日に渡って実行されました。Moiz氏らは、トレーニングデータセットより小さなサブセットを使用して、手ごろなDoEで十分か否かを調査しました。すると、DoEのサンプルサイズを300に下げても学習曲線が信頼できることがわりました。

 

 

GCIのような新しい燃焼技術では、効率を最大化して排出を最小化するための最適化にとって十分な余地があり、このような課題は、計算研究にとって理想的だと言えます。最近の研究では、GCIエンジンの最適化と、上記障害を克服するための設計サイクル短縮のために、Moiz氏らは機械学習の遺伝的アルゴリズムアプローチを採用しました。

手順は次のとおりです。

  1. CONVERGEで2,000を超える厳密性の高いCFDシミュレーションを実行して、機械学習モデルをトレーニングするための大規模なデータセットを作成する
  2. CFDデータで機械学習モデルをトレーニングし、テストする
  3. エンジン設計を最適化するための最適化の設計余地のエミュレータとして、機械学習アルゴリズムを使用する

機械学習(ML)GA法は、従来のGA最適化よりも速度の面で優れています。まず、初期のCFDシミュレーションを並行して実行することができ、シードデータを素早く生成することができます。また、ML GAエミュレータは、個々の設計を数秒で評価できますので、厳密性の高いCFDシミュレーションが、128プロセッサを使って、約12時間程度で終了するものと見込んでいます。

CFD結果を目的関数とするGA最適化では、CFDシミュレーションを連続して実行することがプロセスのボトルネックになります。ML GAアプローチであれば、時間を大幅に短縮し、約1日で完全な最適化が可能です。この手法のもう1つのメリットは、エンジニアが将来の設計余地の疑問に対して、また不確実性の分析に、初期の空間充填DoEデータセットを使用できることです。

機械学習は強力なツールで、現在のソフトウェアアプリケーションでは当たり前のものになりつつあります。ML GA法をCFDと組み合わせることで、設計者がエンジンの効率と性能をより迅速に最適化できるのは当然のことなのです。

 

参考文献

[1] Moiz, A., Pal, P., Probst, D., Pei, Y., Zhang, Y., Som, S., and Kodavasal, J., “A Machine Learning-Genetic Algorithm (ML-GA) Approach for Rapid Optimization Using High-Performance Computing,” SAE Paper 2018-01-0190, 2018. DOI:10.4271/2018-01-0190

 

出典:CONVERGENT SCIENCE BLOG(2018年8月7日公開)

(一部編集して翻訳)MACHINE LEARNING FOR AUTOMOTIVE ENGINE DESIGN

主任研究員 Julian Toumey

主任研究員 Julian Toumey

 


CONVERGEをご存じでない皆様、是非こちらをご視聴ください。CONVERGEの概要について9分で確認いただけます。

 

CONVEREGEの適用についてご不明な点がございましたら、お気軽に弊社までお問い合わせください。

 

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