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PA66(ナイロン66)の代替材料検討事例

皆さま、こんにちは。

IDAJの中嶋です。

 

近年、世界的な供給不足に陥っているPA66 の代替材料を検討した事例をご紹介します。

本検討のおいては、スマートな材料選択のためのプラットフォーム「Ansys Granta Selector™」 を使用しました。

まずは、Ansys Granta Selectorについてご紹介し、その後、PA66 の代替材料をどのように検討したのか、その手順についてご説明します。

 

製品設計をする上で何万種もある材料から適切な材料を選択するには、材料価格や環境に対する影響、関連する類似材料などの情報をいち早く入手する必要がありますが、その調査には手間や膨大な時間を要するため、新しい材料を検討する際の高いハードルとなっています。Ansys Granta Selectorは、最適な製品設計とは「最適な材料+最適な設計」であるという考えに基づいて、ものづくりにおける重要な要素である材料の選択を短時間で行うことを可能にします。

【特徴】

・材料のスペシャリストが監修した材料の百科事典「MaterialUniverse™」を中心とするデータベース

・物性値や製造手法、対象製品、コスト、環境影響度、規制物質情報などの豊富なデータの検索・可視化・フィルタリング・比較を支援するユーザーインターフェース

Ansys GRANTA Selectorの特徴

Ansys GRANTA Selectorの特徴

材料データの百科事典「MaterialUniverse」

Ansys Granta Selectorに搭載されているコアデータである「MaterialUniverse」は、金属やポリマー、複合材料、天然素材、セラミック、ガラスなど、4,000種類以上の市販エンジニアリング材料に関するコストや機械特性、熱特性、電気特性、耐久性、環境性能などの一般的なグレードの材料データをご提供します。MaterialUniverseの特徴は、各データシートの主要な情報が完全かつ比較可能であることです。例えば、主要な情報にはコストや密度、ヤング率、耐水性、生成時のCO2排出量などの項目があり、これらの情報はすべての材料クラスに推定値を含めて抜け漏れがなく記載されていますので、金属とポリマーという異なる材料クラス間であっても押し並べて比較することができます。

またオプションとして、金属やポリマー、複合材、医療、航空宇宙、Additive Manufacturing(付加製造)などに関する特定のグレードの材料情報が記載されたスペシャルデータセットが用意されています。これらのスペシャリストデータセットは、MaterialUniverseの一般的なグレード情報にリンクしているため、MaterialUniverseを使用して初回の材料検討後に、リンク先のスペシャリストデータセットを確認して特定の材料の購入検討を簡単に行っていただけます。

 

Ansys GRANTA Selectorのデータベース

Ansys GRANTA Selectorのデータベース

 

可視化、フィルタリング、判断を支援するツール

豊富な材料データベースの中から、目的にあった候補材料をキーワードや物性値で検索し、材料特性チャートや比較テーブルで可視化することで、機械的または熱的材料特性だけでなく製造手法やコスト、環境への影響度、規制材料なども考慮したシステマチックな材料選択が可能になります。また、材料選択に使用したチャートやテーブル、選択の手順をレポートとして出力することもできます。

 

Ansys GRANTA Selectorの支援ツール

Ansys GRANTA Selectorの支援ツール

 

代表的な支援ツール

(1)キーワード検索と類似材料の検索

キーワード検索機能を使用すると、データシート内のあらゆる情報を迅速に検索することができます。例えば“toy(おもちゃ)”で検索をかけると、MaterialUniverseの材料情報の一つである「Typical uses(主な用途)」に“toy”と記載があるすべての材料が表示されます。

既存の材料に対する代替材料を探索する場合は、類似材料の検索が便利です。ある材料のデータシートを表示した状態で“Find Similar”ボタンをクリックするだけで、ある材料に対する類似材料を類似度が高い順番に並べた検索結果を瞬時に表示します。

 

キーワード検索と類似材料の検索画面

キーワード検索と類似材料の検索画面

 

(2)バブルチャートによる材料特性の可視化

プロット機能を使うと、材料特性を軸にしたバブルチャートを作成することができます。主要な情報は、全ての材料クラス同士を一度にプロットできますので、材料クラスに捕らわれることなく新しい発想をもって材料を選定することができます。

 

バブルチャートの作成例(X軸:材料の柔らかさ、Y軸:材料の温かさ)

バブルチャートの作成例(X軸:材料の柔らかさ、Y軸:材料の温かさ)

 

(3)Performance indexを用いた最適な材料探索

Ashby法の中心的な考え方の一つにPerformance indexと呼ばれる指標があります。この指標は、製品の要件である機能と目的、制約条件から計算することができる材料特性のパラメータだけで構成される値です。Ansys Granta Selectorには様々な要件に対するPerformance indexが搭載されていますので、各製品の要件を満たす最適な材料を迅速かつ的確に探索することができます。

 

Performance indexを使用したテーブル脚の要件を満たす最適な材料探索例(X軸:軽量の目的を満たすPerformance index、Y軸:低価格の目的を満たすPerformance index)

Performance indexを使用したテーブル脚の要件を満たす最適な材料探索例(X軸:軽量の目的を満たすPerformance index、Y軸:低価格の目的を満たすPerformance index)

 

(4)環境への影響度評価

製品の環境への影響を素早く評価し、その影響を低減する方法を提案するEco Audit機能があります。この機能を使用して、材料、製造、輸送、用途、EOLといった製品の主要なライフフェーズごとのエネルギ消費量とCO2排出量を見積もることができます。

 

Eco Audit機能を用いたペットボトルの各工程におけるエネルギ消費量結果

Eco Audit機能を用いたペットボトルの各工程におけるエネルギ消費量結果

 

(5)ハイブリッド材料の特性予測

製品開発の初期段階で使用することを目的としたSynthesizer Tool機能は、複数の材料を組み合わせた新しいハイブリッド材料の性能を推定して従来の材料と比較することができるほか、製造された部品の材料と製造手法のコストを評価することが可能です。

 

Synthesizer Tool機能で予測可能なモデル一覧

Synthesizer Tool機能で予測可能なモデル一覧

 

 

活用事例:PA66(ナイロン66)の代替材料検討方法

適用対象の製品はロッカーアームで、以下の各要求項目を満足するような材料でなければならないものとします。

・ヤング率:7.5GPa以上
・曲げ弾性率:9.4GPa以上
・衝撃強度(ノッチなし):65kj/㎡以上
・吸水率(24時間):0.2%以下
・製造条件:射出成形

ロッカーアームの要求項目

ロッカーアームの要求項目

 

はじめにキーワード検索機能を用いてPA66のデータシートを確認し、PA66を参照材料として登録をします。その後、X軸に単位体積当たりの価格、Y軸に要求項目の一つである曲げ弾性率をとったバブルチャートをすべてのプラスチック材料に対して作成します。これで参照材料として登録していたPA66がバブルチャート全体のどの位置にあるのかを把握することができます。

 

PA66の検索とバブルチャートの作成

PA66の検索とバブルチャートの作成

 

バブルチャートを作成してプラスチック材料全体の情報を把握したら、今度はフィルタリング機能を用いて要求項目を満足する材料を絞り込みます。ここでは、各材料特性に対して数値でフィルタリングができるほか、コアデータであるMaterialUniverseの項目の一つであるプロセス特性を用いて、製造方法でフィルタリングすることも可能です。

 

数値および製造方法によるフィルタリング

数値および製造方法によるフィルタリング

 

フィルタリング機能によって絞った材料を拡大表示します。これらのうちPP-50%LGFは、PA66に対して単位体積当たりの価格が安く曲げ弾性率が高いことがわかりますので、PP-50%LGFを最終候補とします。

最終候補の選定

最終候補の選定

 

最後に、比較機能を用いてPA66とPP-50%LGFの材料特性を比較します。PA66に対してPP-50%LGFは、ヤング率が37%高く、より良い耐薬品性を示していることがわかります。一方で、熱特性を見るとPA66よりも乏しい結果になっており、熱特性が問題になる可能性があることを把握することができます。

 

PA66とPP-50%LGFの比較

PA66とPP-50%LGFの比較

 

現在広くおこなわれている材料選定では、過去の経験に基づいて長年愛用している材料と同じ材料を使用する方法、あるいは社内の限られた材料リストの中から選定する方法がとられています。これらの方法は、コストの面では効率よく材料を調達できるかも知れませんが、競争が激しい市場の中で画期的な機能を持つ製品を開発するための材料選定においては、材料の探索と検討が十分でないことが考えられます。そこでIDAJは、Ansys Granta Selectorを用いたこれまでの常識にとらわれない、新しい視点から材料選定が可能となるソリューションをご提案します。

 

> スマートな材料選択のためのプラットフォーム「Ansys Granta Selector」

 

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