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CFDを使ってよりクリーンな未来を創る:洋上風力エネルギーの探求

 

皆さま、こんにちは。

IDAJの水島です。

 

今回は、オートノマスメッシング熱流体解析プログラム「CONVERGE」の開発元である、Convergent Scienceが公開しているBLOGの内容を翻訳してご紹介します。


 

 

アメリカでは、再生可能エネルギーが前例のないレベルで生み出されています。このレベルはこれからも上がる一方でしょう。再生可能エネルギーの成長を押し上げているものは主に風力です。過去10年間でアメリカの風力エネルギー生成は400%増えました[1]。風力が魅力的な理由は簡単です。持続可能であり、費用効率が良く、そして国内でのエネルギー生産の機会を与えてくれるものだからです。ただし、あらゆるエネルギーソースと同じように、風力にも欠点がないわけではありません。土地利用、騒音、野生生物の生息地への影響、そして風力タービン設置による景観への影響が懸念されています[2]。

しかしながら、これら問題の多くを解決できそうなものがあります。風力タービンを洋上に設置してはどうでしょうか?

土地利用、騒音、景観への影響についての懸念を軽減するだけでなく、洋上風力タービンにはさらにいくつかの利点があります。陸上に比べて洋上の風速はより速く、より安定する傾向にあるため、エネルギー生産が大きく増加します。また、アメリカでは、人口の多くが沿岸か五大湖地方に住んでおり、風力で生み出された電力の運搬についての問題が最小化されます。

ただ、これらの利点にも関わらず、2018年の洋上風力発電所からの電力は、アメリカの風力発電能力のたった0.03%にとどまっています[1]。なぜ洋上風力エネルギーはもっと普及しないのでしょうか?

主な課題の1つはエンジニアリングの問題です。風力タービンの支持構造物は、洋上のかなりの風と波の荷重に耐えられるよう設計する必要があります。

今日では、洋上風力タービンの最適な支持構造物の設計に役立つ、エンジニア用の計算ツールが存在します。すなわち、計算流体力学(Computational Fluid Dynamics、CFD)のシミュレーションを行うと、波と風力タービン支持構造物の相互作用について有用な洞察を得ることができます。 

CONVERGEによる、モノバイル式構造物で砕ける孤立波の2相流シミュレーション。水相は、水平速度で色付けされて表示。

 

CFD ケーススタディ

Hannah Johlas氏は、マサチューセッツ大学アマースト校 Dr. David SchmidtのラボのNSF大学院研究員です。Johlas氏は、水深が浅いものから深さ約50メートルまでの着床式の洋上風力タービンの研究にCFDを使用しています。これらの深さに設置されたタービンは、砕波と呼ばれる現象のため、特に注目されています。波が深水域から浅水域に移動するにつれ、浅水効果と呼ばれるプロセスにより、波長が減衰し、波高が増大します。波が十分に急勾配になると、峰が倒れて前方に崩れ、砕波となります。砕波により、タービンの支持構造物にかなりの力が加わります。そのため、風力タービンを浅水域に建設する場合は、タービンが砕波を受ける可能性があるか否かを知ることが重要です。

Johlas氏は、アメリカ東海岸に沿った、洋上風力タービンの設置場所として有力な海洋に共通する特徴について、砕波が発生しそうかどうかを予測するのにCONVERGE CFDを使っています。また、風力タービンの支持構造物に激しく打ち付ける砕波の力も予測しています。CONVERGEでのシミュレーション結果を用いて、簡略化したエンジニアリングモデルの精度を評価し、どのモデルが波の挙動と力を最も良く捉えているか判断し、風力タービンの設計に使用すべきモデルを決定します。

 

CONVERGEでのシミュレーション

Johlas氏は、この研究で、2相の有限体積のCFDモデルを用いて、CONVERGEで39の異なる波列のシミュレーションを行いました[3]。空気と水の界面を捉えるのに、Volume of Fluid(VOF)法とPiecewise-Linear Interface Calculation(PLIC)法と適用しました。さらに、自動メッシュと解適合格子(AMR)により、シミュレーションの設定と実行にかかる時間を最小化しながらも、正確な結果を得ています。

「CONVERGE の解適合格子を使うと、流体界面のシミュレーションの計算コストが抑えられます。この機能は、砕波のシミュレーションにおける、複雑な空気と水の界面の解析に特に役に立ちます。」とJohlas氏はコメントしています。

砕波の一部は、浅水域の洋上風力タービンの支持構造物として使われる大きな円柱であるモノポールへの打ち付けもシミュレーションしました。これらのCONVERGEでのシミュレーションは、簡略化したエンジニアリングモデルの評価に使用される前に、実験データに照らし合わせて検証されています。

モノポールで砕ける波の、オレゴン州立大学における実験設定(左)と、それに対応するCONVERGEでのシミュレーション(右)

モノポールで砕ける波の、オレゴン州立大学における実験設定(左)と、それに対応するCONVERGEでのシミュレーション(右)

 

結果

波が砕けるかどうかを予測するために、McCowan、Miche、Battjes、Godaの4つの一般的なモデルを評価しました。モデルは、どの程度頻繁に“False Positive”すなわち、モデルでは波が砕けるはずだと予測するが、シミュレーションでは波が砕けないのか、または“False Negative”すなわち、モデルでは波は砕けないと予測するが、シミュレーションでは波が砕けるかが、さらに砕波の勾配をどれだけ良好に予測するかが評価されます。保守的な支持構造物を設計する場合、砕ける波の荷重は通常、砕けない波よりも高いため、False Positiveの方がFalse Negativeよりも望ましいのです。

研究の結果、すべての条件下でパフォーマンスの良いモデルはなく、どのモデルを使うべきかは、設置検討中の海洋の特徴によるということが示されました。

「海底の勾配が緩い場所の場合、所定の波が砕けるかどうかを保守的に予測するにはGodaモデルがベストです。海底の勾配が急な場所の場合は、Battjesモデルが望ましいですね。」

Goda、Campbell-Weynberg、Cointe-Armand、Wienke-Oumerachi の4つのスラミング力モデルの評価も行われました。スラミングモデルとシミュレーションされたCFDの波力と、それぞれの最大合力、力の時間履歴、砕波の波形を比較しました。 

結果として、4つのスラミングモデルすべてにおいて保守的(シミュレーションの波よりも大きい最大合力を予測)で、衝撃を与える際の砕波に最悪の形状を想定していることが示されました。Godaスラミングモデルが最も保守的でなく、Cointe-ArmandとWienke-Oumerachiスラミングモデルが最も保守的です。4つのモデルすべてで、モノポールへの上昇効果は無視されていますが、CFDシミュレーションでは考慮されています。これが、エンジニアリングモデルとCFDシミュレーションによって予測された力の間に相違がある理由かも知れません。

 

意義

洋上風力エネルギーは、クリーンエネルギーを生み出すテクノロジーとして期待されており、業界で勢いをつけるには、タービン設計の際に使用する堅固なエンジニアリングモデルが必要です。Johlas氏の研究は、一連の海洋特性に対して、どのエンジニアリングモデルを使用すべきかについてのガイドラインを提供するもので、また、改良可能な領域も明らかになりました。 

「スラミング力モデルでは、衝撃の際の様々な波形や、モノポールを駆け上がる波は説明されません。モデルの予測能力を向上させるには、将来の研究でこれらの因子をエンジニアリングモデルに取り入れることに焦点を当てるべきです。」

 

再生可能エネルギーのためのCONVERGE

再生可能エネルギーの発展においてCFDは根本的役割を担っています。CONVERGEのオートノマスメッシング、厳密度の高い物理モデル、そして、複雑に移動する形状を容易に扱える能力は、このタスクに最適です。洋上タービンと波との相互作用の研究、陸上ウィンドファームの設計の最適化、またはソーラーパネルへの風の荷重予測どれに対しても、CONVERGEには、次世代のエネルギー生産をもたらすのに役立つ、ユーザーが必要とするツールがあります。Johlas氏の論文はこちらです。

 

参照文献

[1] Marcy, C., “U.S. renewable electricity generation has doubled since 2008,” https://www.eia.gov/todayinenergy/detail.php?id=38752, accessed on Nov 11, 2016.

[2] Center for Sustainable Systems, University of Michigan, “U.S. Renewable Energy Factsheet”, http://css.umich.edu/factsheets/us-renewable-energy-factsheet, accessed on Nov 11, 2016.

[3] Johlas, H.M., Hallowell, S., Xie, S., Lomonaco, P., Lackner, M.A., Arwade, S.A., Myers, A.T., and Schmidt, D.P., “Modeling Breaking Waves for Fixed-Bottom Support Structures for Offshore Wind Turbines,” ASME 2018 1st International Offshore Wind Technical Conference, IOWTC2018-1095, San Francisco, CA, United States, Nov 4–7, 2018. DOI: 10.1115/IOWTC2018-1095

 

出典:CONVERGENT SCIENCE BLOG(2020年10月19日公開)

EXPLORING OFFSHORE WIND ENERGY: CREATING A CLEANER FUTURE WITH CFD

 

シニアマーケティングコミュニケーションライター Elizabeth Favreau

シニアマーケティングコミュニケーションライター Elizabeth Favreau

 


 

CONVERGEをご存じでない皆様、是非こちらをご視聴ください。CONVERGEの概要について9分で確認いただけます。

 

CONVEREGEの適用についてご不明な点がございましたら、お気軽に弊社までお問い合わせください。

 

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