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CFDで大切なこと~プレディクションですか?ポストディクションですか?

皆さま、こんにちは。

IDAJの水島です。

 

今日は、オートノマスメッシング熱流体解析プログラム「CONVERGE」の開発元である、Convergent Scienceが公開しているBLOGの内容を翻訳してご紹介します。ブログを書いたのは、Convergent ScienceのCO-OWNER & VICE PRESIDENTであるDr.Kelly Senacalです。


私のブログシリーズ「Toward Predictive Combustion(予測燃焼に向けて)」をご覧いただいている方は、Convergent ScienceがPrediction(予測)にどれほど情熱を注いでいるかはご存じだと思います。「そんなの、CFDソフトウェアを開発してるんだから当たり前でしょ?!」とお思いなるかもしれません。

しかし実際のところ、お考えになっているほど明らかなわけではありません。あまり語られることはないのですが、現在、皆さんがお使いになっているCFDのほとんどが、私に言わせると“ポストディクション”を行っているのです。

ウィキペディアを見てみると、ポストディクションは「過去について予測すること。すなわち、事後に何かを説明すること。」とあります。

Convergent Scienceでは、CFDの結果と既存の実験データを一致させるために、簡略化されたモデルや広範囲に及ぶ調整、オフセットを駆使することを、ポストディクションと呼んでいます。これは、特に燃焼シミュレーションでは一般的なプロセスです。

エンジン筒内燃焼シミュレーションのポストディクションを例に手順を説明しましょう。

1. 実験の実施

通常はCFDエンジニア以外の方が担当されます。

2. CFDエンジニアが実験データを受け取る

平均化された圧力履歴データや見かけの熱発生率、エミッションのデータなどが一般的です。

3. CFDエンジニアが形状を含めたシミュレーションを設定・実行

不確実なインプットはシミュレーション結果に大きく影響する可能性がありますが、実際のところ、その不確実性を解消することは難しいでしょう。例えば、ディーゼルエンジンでは、ノズルのオリフィス径の情報は正確でしょうか?実際の値が常に公称値と一致するとは限りません。吸気ポートや排気ポートのCAD表面は入手していますか?定常状態のフローベンチの結果を基にしたスワール率を使用していますか?噴射開始のタイミングのデータは正確でしょうか?壁温はどうでしょう?

CFDエンジニアは、例えば、“エンジンセクターのみをシミュレーションすることで吸気を無視する”というように、これらの不確実性のために、シミュレーションケースの簡素化に努めなければならないことがよくあります。

4. 最初のシミュレーション結果が実験データと一致しない可能性は高く、そのためCFDエンジニアは経験論ベースの噴射モデルや燃焼モデル、またはその両方を調整

ここでいう調整とは、シミュレーション結果が実験データにより近くなるまで、モデル定数を変更することです。ちょっとしたご提案ですが、今後「定数」と呼ぶのをやめませんか?!「定」とは、決して変化しないことと意味します。

5. CFDエンジニアは、噴射開始時間、EGRレベル、噴射圧力などの物理量のインプットを変更し、調整したモデルで実行したシミュレーションが、エミッションのような結果における傾向を捉えることを“願う”

このプロセスには、粗いメッシュや簡略化された計算領域、経験論ベースのモデルによって、一般的にシミュレーションが比較的高速で実行されるといったメリットがありますが、調整することによってシミュレーション結果が実験データに限りなく近づく保証はありません。この手順の最後のステップ、“調整したモデルで一連のシミュレーションを実行し結果の傾向を特定する段階”は、望むように機能するとは限りません。さらに、粗いメッシュから得たグリッド依存の結果をチェックしないことはよくあります。というのも、グリッドの再作成は、気が遠くなるような面倒な作業だからです。

このようなプロセスを鑑みると、

a) シミュレーションが正しい物理量のインプットを使用しているか不確かであり

b) シミュレーション結果が実験データに基づいて予測されている場合

そのシミュレーション結果は、Prediction(予測)だと言えるでしょうか?

実験結果の入手が「良い」結果を得るために不可欠であるため、そのシミュレーションはポストディクションであると、私は申し上げたい思います。

 

では、これがポストディクションならば、プレディクションとはどういったものでしょうか?

正確な物理量のインプットを使ったシミュレーションを思い浮かべてください。そのインプットは、対応する実験に使用されたもので、シミュレーションは初めて実行するとします。この場合、シミュレーション結果は実験結果のプレディクションです。プレディクションとは予測であり、すなわち将来のイベントを見積ることで、正確な結果を出すのは困難極まりないのです。

これには、グリッド収束を満たしたメッシュ設定(自動のアダプティブメッシュを使うと非常に簡単)、セクターモデルではない領域のほとんどにわたるシミュレーション、詳細な燃焼モデル、高次数値解法、非定常挙動の包括、多くの物理的過程、そして一般的にかなり長めの実行時間が必要となります。

ポストディクションとプレディクションの重要な違いの1つは、プレディクションのCFDの結果は信頼度が高いことです。そのため、シミュレーションの結果が実験データと一致しない場合は、物理モデルではなく物理量のインプットに疑惑の目が向けられます。これは物理量のインプットの不確実性へと戻ります(“garbage in, garbage out”)。辿っていくのは難しいかもしれませんが、やってみる価値は十分にあると考えています。

皆さんが、今度、燃焼シミュレーションに取り組まなければならない場合は、どちらの方法を選択なさいますか?

実行時間の制約がないのであれば、グリッド収束メッシュ、詳細化学反応およびLES乱流モデルがプレディクションタイプのシミュレーションに最適です。実行時間に制約があるのであれば、粗いメッシュを使って、経験論ベースの燃焼モデル、RANSベースの乱流モデルが、手ごろな実行時間で妥当な(ポストディクションの)解をもたらしてくれる可能性が高いでしょう。しかし、調整が必要な場合は、実際の実行時間は反復シミュレーションの総時間となりますので、一回だけの計算コストではないことをご留意ください。

私は、プレディクションのシミュレーションに調整がまったく必要ないと言っているのではありません。最先端の物理モデルの多くは、依然として一部の経験論に依存しています。裏を返せば、誤差を考慮さえしていれば、CFDプロジェクトの多くのタイプで、ポストディクションの方法がうまくいくということです。そして最初のシミュレーションの調整のために、反復計算を何度も行う必要があるかもしれませんが、次のシミュレーションでは実行時間が比較的短くなるというメリットがあります。肝心なのは、皆さんが実行しているシミュレーションがどちらなのか認識していることです。

実行しているのはプレディクション的シミュレーションですか?

それともポストディクション的でしょうか?

CFDでは、どちらのタイプなのかをわかっていることが重要なのです。

 

出典:CONVERGENT SCIENCE BLOG(2017年11月23日公開)

 

 

 

 

CO-OWNER & VICE PRESIDENT Dr.Kelly Senacal

PREDICTION OR POSTDICTION? IN CFD, THE PREFIX MATTERS

 

 

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