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すすの出ないディーゼルを求めて:ダクト付き燃料噴射のモデル化

 

皆さま、こんにちは。

IDAJの水島です。

 

今回は、オートノマスメッシング熱流体解析プログラム「CONVERGE」の開発元である、Convergent Scienceが公開しているBLOGの内容を翻訳してご紹介します。


 

2020年のCONVERGEユーザーカンファレンスにて、Dr. Andrea Pianoから、燃料噴霧特性に対してダクト付き燃料噴射がもたらす効果に関する実験と数値研究の結果を発表いただきました。

Dr. Pianoは、トリノ工科大学のProf. Federico Milloが組織した e3 groupの研究助手です。これらの結果は、進行中の共同研究からの最初の報告となりました。研究には、ペルージャ大学のProf. Lucio Postrioti、Powertech EngineeringのAndrea Bianco氏、およびGeneral Motors Global Propulsion SystemsのFrancesco Pesce氏とAlberto Vassallo氏が参加しています。この研究では、エンジンテクノロジーの最先端の研究を進めるために、いかにしてCONVERGEを実験的手法と連携させて使うことができるかを示す良い例です。

サンディア国立研究所のCharles Mueller氏によって最初に考案されたダクト付き燃料噴射(Ducted Fuel Injection:DFI)の狙いは、燃料を着火前に空気と完全に混合させることによって、ディーゼルエンジンのすすの発生を抑制するというものです1。すすは、燃料が完全に燃焼しない場合(空燃比が高すぎる場合)に生成されます。DFIでは、小型のチューブまたはダクトを燃料インジェクタのノズルの近くに配置し、燃料ストリームの軸に沿って、自着火ゾーンの方へ向けます。このダクトを通って移動する燃料噴霧は、ダクトのない設定に比べると、空気と良く混合されます。サンディアでの実験では、DFIがすすの発生を95%も削減できることが示され、ディーゼルエンジンからの有害な排出ガスの削減に対する大きな可能性がこのテクノロジーにあることを実証しました。

 

サンディア国立研究所によるダクト付き燃料噴射の紹介

 

サンディア国立研究所の研究者たちが大型ディーゼルへの適用に焦点を当てる一方で、Dr. Pianoとその共同研究者達は、乗用車や軽量トラックなどで使われる、より小型のエンジンをターゲットにしています。ダクトがあることで燃料噴霧がどう変化するかを理解するため、彼らはまず、定容容器内における非反応噴霧の画像化と位相ドップラ法解析を行いました。以下に試験結果のサンプルを示します。上のビデオはダクトなし噴霧設定、下のビデオはダクトあり噴霧設定です。ダクトあり設定においては、黒い液体がより速く拡散し蒸発する様子がわかります。これが DFIで発生する混合促進です。

 

非反応噴霧の実験ビデオ

ダクトなし噴霧(上)とダクトあり噴霧(下)(画像はレール圧1,200 bar、容器温度500℃、容器圧力20 bar の定容容器から取得)

 

 

 

 

次のステップでは、実験結果に対して調節可能な燃料噴霧のCFDモデルを構築しました。噴霧の拡散、蒸発、沸騰のプロセス、ならびに噴霧とダクトの相互作用のシミュレーションを行うのに、CONVERGEで使用可能な物理モデルを用いて、実験設定の配置を再現しました。局所再分割と解適合格子(Adaptive Mesh Refinement:AMR)を用いて、計算コストをさほど増やすことなく、噴霧とダクト付近のグリッドの解像度を上げることができました。ダクトなしとダクトありの両方で、幅広い動作条件下で噴霧ペネトレーションのシミュレーションを行い、これらの結果を実験データと照らし合わせて検証したのです。

調整済み噴霧モデル用いて、反応燃料噴霧についてのDFIの予測シミュレーションに着手しました。噴霧モデルを、すす生成のParticulate Mimicモデルと、燃焼モデル用のSAGE詳細化学反応ソルバーと組み合わせて、異なるレール圧と容器温度でシミュレーションを行い、エンジンに似た動作環境下で発生するすすの質量に対して、DFIがどのような影響を与えるのかを調べました。以下は、レール圧1,200 bar、容器温度1,000 kの場合のシミュレーション結果です。Mueller氏らの研究結果1に一致して、ここでも、ダクトありでは、ダクトなしに比べて燃焼中に発生するすすの質量が劇的に削減されることを示しています。

 

 

右側プロットは、反応噴霧シミュレーションにおける熱発生率と発生したすすの質量(赤線:ダクトなし、青線:ダクトあり)。

縦の点線は、2つのコンタープロットが生成されたシミュレーション時間を示します。左はダクトなしで、中央がダクトあり。コンターはすすの質量で色付けされており、すすの質量が大きい領域を赤で表しています。

 

これらの早期結果は前途有望ですが、本プロジェクトはまだ始動したばかりです。将来的にDFIを実際のエンジン設計に実装することを目指して、これからも CONVERGE を使ってダクトの熱挙動などの現象を調査し、また、異なる形状と動作条件の影響も調査する予定です。

[1] Mueller, C.J., Nilsen, C.W., Ruth, D.J., Gehmlich, R.K., Pickett, L.M., and Skeen, S.A., “Ducted fuel injection: A new approach for lowering soot emissions from direct-injection engines,” Applied Energy, 204, 206-220, 2017. DOI: 10.1016/j.apenergy.2017.07.001

 

出典:CONVERGENT SCIENCE BLOG(2020年3月26日公開)

(一部編集して翻訳)THE SEARCH FOR SOOT-FREE DIESEL: MODELING DUCTED FUEL INJECTION WITH CONVERGE

Angela Kopp

Angela Kopp

 


 

CONVERGEをご存じでない皆様、是非こちらをご視聴ください。CONVERGEの概要について9分で確認いただけます。

 

CONVEREGEの適用についてご不明な点がございましたら、お気軽に弊社までお問い合わせください。

 

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