MATLAB/SimulinkやOpenModelicaなどを用いた1Dシステムモデル構築(その1)
皆さま、こんにちは。
IDAJの小川です。
モデルベース開発において、制御モデルはMATLAB/Simulinkモデルを作成し、プラントモデルは別のツールで作成したモデルを使用するというように、異なる1Dツールを用いてシステムモデルを構築するケースが少なくありません。IDAJは、マルチフィジックス・システムシミュレーションツール「GT-SUITE」を用いた1Dシステムモデル作成だけでなく、膨大なGT-SUITEモデル作成で培ったノウハウを応用し、MATLAB/SimulinkやAnsys Twin Builder、OpenModelicaなどを使用した1Dシステムモデルの作成を承ります。1Dシステムモデルの構築やツール連携でお困りのことがございましたら、是非、本サービスのご利用をご検討いただければと思います。
ここでは、実際にお客様の開発プロセスで発生しているであろうケースを想定し、それらを踏まえたモデル構築例を具体的にご紹介します。
[適用状況]
- 制御システムモデルの構築にMATLAB/Simulinkを使用する
- 制御モデルの他、プラントモデルにもMATLAB/Simulinkを使用する
- 制御システムモデルの構築には、Modelica (物理モデリング言語)を使用する
- 所有しているツールが異なるため各ツールを連携する必要がある
[サンプル]
- OpenModelicaによるDCモータ制御システムモデルの構築
- PMSM(註1)制御システムモデルの構築(MATLAB/Simulink+Modelica)
- PMSMモデルのFMU(註2)連携(GT-SUITE・Ansys Twin Builder)
(註1)PMSM:Permanent Magnet Synchronous Motor:永久磁石型同期モータ
(註2)FMU:Functional Mockup Unitの略、FMI(Functional Mockup Interfaceの略でファイル交換の規格)に対応したファイルユニット
OpenModelicaによるDCモータ制御システムモデルの構築
図は、DCモータの等価回路と方程式、可変速制御系の構成を示したものです。制御系は、外側のループであるメジャーループが角速度制御系、内側のループであるマイナーループが電流制御系のカスケード制御で、各制御は、PI制御で構成されています。カスケード制御は、段階的(連続的)に制御系を多重ループで構成する制御で、応答性改善や外乱抑制等が可能です。

DCモータの等価回路と方程式

DCモータの可変速制御系の構成
OpenModelicaを使って、DCモータの可変速制御系の構成に負荷(メカ)モデルを追加して構築した制御システムモデル、このモデルを使用したシミュレーション結果です。

OpenModelicaによるDCモータ制御システムモデル

ミュレーション結果
PMSM制御システムモデルの構築(MATLAB/Simulink+Modelica)
ACモータは、電圧と電流を直流量として扱うdq座標系で表現することができます。SPMSM(Surface PMSM:表面永久磁石型同期モータ)と、IPMSM(Interior PMSM:埋込永久磁石型同期モータ)を対象として、モデルを構築しました。
- d軸:回転子の磁極の軸で、磁極がつくる磁束の方向(永久磁石の中心軸)
- q軸:d軸と電気的に直行する軸(永久磁石間の軸)
- SPMSM:Ld=Lq
- IPMSM:一般的にd軸の磁気抵抗がq軸のそれより大きく、Ld<Lq(突極性)

SPMSMとIPMSMの回転子構造
ACモータは、3相交流(静止座標系)を2軸直流(回転座標系)に座標変換することにより、DCモータと同様のモデルに置き換えることができます。
![3相交流(静止座標系)[u v w] ⇔ 2相交流(静止座標系)[α β]](https://www.idaj.co.jp/blog/wp-content/uploads/kimiko-nakai/46e7ee426042099288a0ff50a62315ab.png)
3相交流(静止座標系)[u v w] ⇔ 2相交流(静止座標系)[α β]
![2相交流(静止座標系)[α β]⇔2軸直流(回転座標系)[d q]](https://www.idaj.co.jp/blog/wp-content/uploads/kimiko-nakai/a8fe58762f5cf76ea03b7cbdcd19bbbf.png.pagespeed.ce.iFGl0zm-e4.png)
2相交流(静止座標系)[α β]⇔2軸直流(回転座標系)[d q]
PMSMのdq座標系モデルの等価回路と方程式を図8に示します。q軸がDCモータに相当するモデルですが、Ld=Lq(SPMSM)とすることで、DCモータと等価なモデルとなります。ここではSPMSMとし、制御系では、各干渉項の非干渉化と逆起電力の補償を行い、Id=0制御(最大効率)としてシミュレーションしました。

PMSMのdq座標系モデルの等価回路と方程式
以下は、一般的なPMSMの可変速制御系の構成例で、DCモータの可変速制御系と同様、カスケード制御で構成されます。PMSMは3相交流のため、先に示したdq座標系に座標変換を行い、電流制御系をベクトル制御(註3)することで、DCモータと同様な制御系を実現することができます。
(註3)dq軸の各電流(Id Iq)を独立に制御することで所望のトルクを発生させる制御方式

一般的なPMSMの可変速制御系の構成例

各モデルのインターフェース

PMSMのMATLAB_Simulinkのdq座標系モデル(uvw⇔dqの座標変換は省略)
下図は、Ansys Twin BuilderでModelicaモデルを作成してFMU化した負荷(メカ)のModelica-FMUモデルです(以下 TWB-Modelica)。FMUには、ME(Model Exchange:ソルバーなし)とCS(Co-Simulation:ソルバー含む)がありますが、動作確認をした上で、ここではCSとしました。Modelicaソルバーは、デフォルト設定のCVodeです。

PMSMのMATLAB_Simulinkのdq座標系モデル(uvw⇔dqの座標変換は省略)

MATLAB_Simulink(制御・PMSMモデル)+TWB-Modelica(メカモデル)※PWMインバータは理想モデル
以下の条件でシミュレーションを実行しました。
[目標値]
- モータ軸角速度:6637[rad/s](1,200[rpm])
- 加減速時間:1[s]
- 台形速度プロファイル:計7[s]
[クラッチ入力]
- メカモデルのクラッチで、6[s]から0.1[s]でランプ状に最大値まで押付力を与え、1.2[s]で瞬時に押付力を0にする。押付力は、正規化された信号f_normalized[0-1]を与える。
[Simulinkのソルバー]
- 固定ステップ:ode4(Runge-Kutta)
- サンプル時間Ts:1ms(FMUのCSステップサイズはサンプル時間に合わせる)
- シミュレーション時間:2[s]

シミュレーション結果(1)

シミュレーション結果(2)
上記以外にも、MATLAB/Simulinkベースのモデル構築やツール連携、Modelica・VHDL-AMSを用いた制御システムモデル構築、JAMBE(註5)ガイドラインモデルのアプリケーションモデルの開発、Modelica・VHDL-AMSのGT-SUITEモデルへの置き換え(双方向)なども承ります。
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(註5)JAMBE:MBD推進センター。IDAJは、JAMBEのパートナー会員です。
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