ロータダイナミクスを考慮したモータ全体の振動解析手法のご紹介

皆さま、こんにちは。
IDAJの林です。
今回は、モータの高速化に伴う振動問題解決に向けた、解析を用いたアプローチについてご説明します。
モータの小型化や高出力化はますます進行し、例えば、エアコンのコンプレッサ用モータでは、10,000 rpmを超える製品が量産されるなど、回転速度はさらに高速化しています。モータの高速回転化における課題の一つに、振動・騒音の増加が挙げられます。特に、回転体に作用するジャイロモーメントは低速域ではほとんど問題になりませんが、高速域では振動特性に大きな影響を与える要因となります。
公開文献を調査すると、電磁力単体や磁気回路の動特性に着目した解析事例は数多く報告されています。一方で、ロータダイナミクスを考慮したモータ全体の振動解析に関する事例は限られています。
そこで、ロータダイナミクス考慮モしたータ振動解析手法をご紹介します。解析では、危険速度をはじめとするロータダイナミクス特有の現象を再現し、本手法がモータの振動評価に適用可能であることを示します。

ロータダイナミクスの概要
ジャイロモーメントを考慮した回転体の振動をロータダイナミクスと呼びます。
回転体には回転軸まわりの回転慣性が存在し、外力が作用した場合でも回転状態を維持しようとするモーメントが発生します。このモーメントをジャイロモーメントといいます。ここで、図に示すように、こまが自転しながら公転する状況を考えてみましょう。
自転角速度をΩ、公転角速度をωとし、回転軸がθだけ傾いた状態で触れ回っているものとします。また、円盤軸まわりの極慣性モーメントをIp、重心まわりの横慣性モーメントをIdとします。
このとき、ロータには傾きθを減少させる方向にジャイロモーメントMy、Mxが作用します。

出典:松下修己 他著「回転機械の振動 実用的振動解析の基本」、コロナ社

つまり、回転軸がx方向に角速度θで傾くと、これに直交するy方向にジャイロモーメントMyが発生します。同様に、回転軸がy方向に角速度θで傾くと、x方向にジャイロモーメントMxが発生します。このように、ジャイロモーメントは軸の傾き方向に対して直交する方向に作用し、回転体の動特性に大きな影響を及ぼします。
ジャイロモーメントを考慮したモータの固有振動数の導出は参考文献[1]に委ねますが、2つの重要な特徴があります。
・固有振動数が自転速度に依存する
・2つの固有振動数が存在する
図から、回転速度0のときは一つだった固有振動数が、回転数が増えると2つに分かれ、それぞれ回転数Ωに依存して値が変化することがわかります。

出典:松下修己 他著「回転機械の振動 実用的振動解析の基本」、コロナ社
解析事例
SRモータを対象として、ジャイロモーメント、電磁力、ロータの不釣り合い荷重を考慮した動解析を実施し、キャンベル線図を取得しました。電磁力については、電磁場解析によって得られた結果を荷重条件として適用しました。軸受はばね要素によってモデル化し、caseのボルト穴部は完全拘束条件としました。また材料特性は、すべての部品を鉄鋼相当として設定しています。3水準の回転速度に対して周波数応答解析を実施し、結果をキャンベル線図にまとめました。バブルの大きさは変位の大きさを示します。評価点はdisc中心としています。
*本事例の構造解析には、統合有限要素法解析プログラム「SIMULIA Abaqus Unified FEA」を使用しました。





160Hz周辺に前回りと後回りに分離されている固有振動数が確認できます。振動モードを確認すると軸が変形しながら触れ回る危険速度であることがわかります。また、38Hzに回転速度に依存しない固有振動数が見られ、こちらは振動モードを確認すると上下に変形するモードが励起されていることがわかりました。


まとめ
ロータダイナミクスを考慮したモータの振動解析においては、ジャイロモーメントを考慮することで、危険速度等のロータ起因の振動モードを3D解析で再現できることを示しました。現状電磁力や筐体剛性などの要素を個別に検討している場合は、この手法を活用することで、各要素がモータ全体の振動に与える影響や寄与度を総合的に評価・検証できます。
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※参考文献:松下修己 他著「回転機械の振動 実用的振動解析の基本」、コロナ社、2013年
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