ソリューション
ソフトウェア
その他・お知らせ
本文までスキップする

ユニバーサルミスト(MUM602)の騒音対策事例 ~数値音響解析と音響測定の比較検討例~(その1)

皆さま、こんにちは。

IDAJの玉手です。

 

今日は、IDAJの音響設計ソリューションの新たな事例をご紹介できることになりましたので、4回にわたって掲載します。

数値シミュレーションはIDAJが担当し、測定を専門とするパートナー企業様と協業することで、より高精度な数値モデルのご提供が可能になりました。


ユニバーサルミスト(MUM602)の騒音対策事例 ~数値音響解析と音響測定の比較検討例~(全4回)

その1(本記事)、その2その3その4


騒音低減を目的とした騒音対策案の策定

解析対象は、株式会社丸山製作所様(以下丸山製作所様)が設計開発されている「ユニバーサルミスト」。

ユニバーサルミストは、暑気・熱中症対策、静電気除去、加湿、ホコリ除去、ヒートアイランド対策、舞台演出などの用途で、工場、商店街、学校など様々な場所で利用されています。エントリーモデルである「MUM602」は、タイマー操作による間欠運転が可能で、軽量、水道と直結させるため給水作業が不要です。本体には給水ホースと排水ホースを接続し、排水ホースにミストノズルを取り付けることで、そのノズルからミストを発生させます。以下の写真にあるのは、本体のポンプ機構部で、駆動時には動作音が生じます。様々な場所で利用されるため、音環境へ配慮し快適な空間づくりにつなげていくためにも、ユニバーサルミストの騒音の低減対策を検討しました。

 

こちらは、騒音対策案出までのワークフローです。

基本的には株式会社小野測器様(以下小野測器様)が測定を、IDAJが解析を担当し、モデル構築、モデルの妥当性確認、騒音対策案出の順で進めました。

モデル構築のフェーズでは、モデルの解析方針を検討するために現象把握のための実験を実施し、その結果を基に解析モデルを作成します。

丸山製作所様からご提供いただいたユニバーサルミストの3次元CADデータを基に、形状、境界条件を設定し、解析モデルに対して音源測定データを入力して、現行モデルに対する解析を実施します。並行して、現行モデルに対する測定を行い、それぞれの結果を比較検討します。

続いて、解析モデルの妥当性確認のための実験と解析を実施します。ここでは、吸音材追加による騒音低減効果の傾向を確認します。最後に、妥当性確認を経た解析モデルに対して、さらなる騒音対策案を作成します。

騒音対策案出までのワークフロー

騒音対策案出までのワークフロー

※解析には、音響解析ソフトウェア「Simcenter 3D Acoustics」を使用しました。

現象把握の実験

モデル構築の方針を検討するために、どのような騒音現象が起きているかを把握するために実験を行いました。

支配的な音源の周波数や放射部位の特定を目的として、装置稼働時の1m位置の音圧レベル測定とビームフォーミング音源を可視化します。測定環境は屋内作業場です。

現象把握の実験

現象把握の実験

 

【収録条件】

測定環境:屋内作業場

使用機材:4chビームフォーミング音源可視化システム(MI-5420A、BF-3200、BF-0310)

マイクロホン + FFTアナライザ(MI-1235、MI-3111、DS-5000、O-Solution)

運転条件:1条件(高さ1mの架台に試験体を設置し定常稼働)

収録時間:1m位置音圧 20 sec、音源可視化 10 sec

サンプリング周波数:51.2kHz

 

現象把握の実験結果

現象把握の実験結果

 

こちらが実験結果です。

音圧レベル測定の結果から、1kHz~2kHzの周波数にピークを持つことがわかります。また、その周波数帯域の音源可視化の結果から、装置の開口部からの透過音が支配的であることが見て取れます。上面のカバーを開けた状態では、内部のファンやモーターに結像する頻度が高く、またポンプ部にも結像しています。

 

この結果から、モデル構築の方針を決定し、これに従って実験データの取得や解析モデル作成します。

・開口部からの漏れ音の事象を再現する

・音源はモーター、ポンプ、ファンを扱う

・解析上限周波数は2kHz帯域までとする

 

次に、解析モデルの入力データを取得するために音源と評価点音圧を測定します。

装置の実稼働時のモーターとポンプの表面振動速度100点、ファンの面の音圧5点を解析モデルのインプットデータとして計測し、解析モデルの検証用に評価点音圧1m位置4点を計測しました(測定点は以下の通り)。

表面振動速度は加速度センサを順次移動させて測定し、測定結果を周波数軸上で時間積分して振動速度を算出します。評価点音圧の測定では、半無響室に厚さ100mmの吸音材を敷き、床面の音の反射影響を抑えた状態で測定しました。これら測定データをモデルの入力に使用します。

 

音源と評価点音圧の測定

音源と評価点音圧の測定

 

【収録条件】

・周波数重み:FLAT

・測定環境:小野測器社内音響棟の半無響室

・使用機材:DS-5000、O-solution、NP-3211、MI-1235、MI-3111

・稼働条件:1条件(実稼働状態)

【解析条件】

・平均区間:20 sec

・サンプリング周波数:51.2kHz

・フレーム長:65536

・周波数分解能:0.78125Hz

・窓関数:Hanning

・オーバーラップ:75%

小野測器 機材写真

小野測器様 機材写真

 

次回に続きます。

追記・更新:2023年5月31日

■オンラインでの技術相談、お打合せ、技術サポートなどを承っています。下記までお気軽にお問い合わせください。ご連絡をお待ちしています。

株式会社 IDAJ 営業部

Webからのお問い合わせはこちら

E-mail:info@idaj.co.jp

TEL: 045-683-1990