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CAEとディープ・ラーニング(後編)

 

皆さま、こんにちは。

IDAJの清水です。

(前編はこちらです。)

CAEにおけるディープ・ラーニングの利用は、「クラス分類・応答曲面」、「マップ生成」、「自動設計」の3つに大別され、いずれもCAEを用いた最適設計において有効に活用することができます。

 

まずは、クラス分類・応答曲面。ディープ・ラーニングを用いたクラス分類・応答曲面では、画像や音、テキストを入力変数として扱うことが可能となり、今まで扱えなかった予測問題に適用することができます。畳み込みニューラル・ネットワーク(CNN:Convolutional Neural Network)による画像分類や、再帰的ニューラル・ネットワーク(RNN:Recurrent Neural Network)による音分類、テキスト分類などがその例です。

下図は、様々なローター形状と対応するトルクをニューラル・ネットワークに学習させておくことで、未知のローター形状におけるトルクを予測する例です。

最適化計算に予測モデルを組み込むことで、低トルクと予測されるローター形状の計算をスキップするといった効率化が可能です。また、ニューラル・ネットワークを変更することで、クラス分類だけでなく、応答曲面として構築することもできます。これは、多層パーセプトロン(MLP、 Multi-Layer Perceptron)による回帰分析と、CNNやRNNを組み合わせることで実現されます。

ディープ・ラーニングによるクラス分類・応答曲面例

ディープ・ラーニングによるクラス分類・応答曲面例

 

マップ生成

ディープ・ラーニングでは、出力変数にも画像や音、テキストを用いることができ、1モデルによるマップ生成(マップ予測)が可能となりました。マップ生成では、変分自己符号化器(VAE:Variational Auto Encoder)の考え方を基本とした、畳み込みニューラル・ネットワーク復号器(CNN Decoder)を使用します。

下図は、様々なローター形状と対応する磁束密度マップをニューラル・ネットワークに学習させておくことで、未知のローター形状における磁束密度マップを予測する例です。

ディープ・ラーニングによるマップ生成

ディープ・ラーニングによるマップ生成

 

自動設計

コンピュータが自動でシミュレーションを実行し、自己学習により進化するシステムとして強化学習(R L:Reinforcement Learning)があります。

強化学習は、現状では、最適化コントローラとしての利用が一般的で、特に、ゲーム用AIやロボット制御AIでの利用が盛んになってきました。

下図に強化学習による最適制御の例を示します。倒立振子の制御は通常、制御論に基づく伝達関数によりコントローラを構築しますが、強化学習では制御論を用いず、自己学習による多数の試行錯誤によりコントローラを構築します。驚くべきことに、理論的背景の無い試行錯誤だけで、振り上げ動作、倒立維持動作の一連の動作を自己獲得するのです。

強化学習による最適化コントローラ例

強化学習による最適化コントローラ例

 

シミュレーションの利用が前提となるため、CAEと相性が良いと考えらえる強化学習ですが、最適設計への応用には、現状では、まだ大きな課題があります。それは、プリポストの問題です。

一般のCAEにおける最適設計に強化学習を応用するためには、より広範囲の自動モデル生成と、適切な課題設定が必要です。特に、課題設定には、強化学習アルゴリズムが必要とする状態(State)、行動(Action)、報酬(Reward)に対応した課題の明示化(ゲーム化)が必須となります。

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私自身、ディープ・ラーニングには以前から注目していますが、現在のディープ・ラーニングは、技術のライフサイクルに当てはめるとちょうど急激な成長期に当たり、様々なモデルやライブラリが乱立する混沌とした状況にあるように思います。

ディープ・ラーニングによる実用的な画像認識、音声認識、翻訳などは巨大な学習リソースを持つ一部の企業がほぼ独占しており、一般の企業は利用者の立場となっているのが現状です。一方でエンジニアリングの世界はというと、ディープ・ラーニングはまだほとんど活用されていません。これはエンジニアリングのデータは専門性が高く、入手することが困難で、取扱いにも専門的な注意が必要なことが大きな理由となっています。つまり、エンジニアリングの世界におけるディープ・ラーニングは、一般の企業でも各社が持つ専門技術を生かすことで差別化できることを示唆しています。

また、以前からmodeFRONTIERをご利用のお客様の中には、「AIや機械学習は、modeFRONTIERでやってきた応答曲面や多変量解析と似ている」という感想をお持ちの方もいらっしゃることと思います。もちろんAIの範疇は幅広く、応答曲面や多変量解析は機械学習のほんの一部でしかありませんが、modeFRONTIER 2018 R3からはmodeFRONTIERでもディープ・ラーニングの実行が可能になりました。

 

弊社は、CAEにおけるディープ・ラーニング技術をご提供することで、エンジニアリングにおけるディープ・ラーニングの実用化をサポートさせていただきたいと考えています。

追記・更新:2022年8月29日

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