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植物ってすごい!~流体力学からわかる植物の生長メカニズム~

皆さま、こんにちは。

IDAJの営業部:担当Pです。

 

今日は植物と流体力学についてお話させていただきたいと思います。

「植物」と「流体力学」、片方に聞き覚えのある方は多くとも、その関係性をご存知ない方が多いのではないでしょうか?

実は、植物と流体力学は切っても切れない重要な関係があるのです(”木”だけに…)!

 

「植物は、地中に張った根から水分を吸収し、導管を通じて幹や葉に水分を届けることで生長、得られた水と二酸化炭素を用いた光合成により成長するための栄養素を得る。」

 

高校の生物で習った植物の成(生)長メカニズムです。

そのようにして生長した植物は、種類によっては高さ数百メートルにも及ぶ巨木となることがあります。しかし物理的には、水の場合は高さ10メートル以上の場所までは上昇しないはずです(トリチェリーの定理より)。

それでは、背丈10m以上もある巨木は、どうやって根で吸収した水を葉に届けているのでしょうか?

 

 

その答えは、気孔(stomata)の効果による負圧にあります。

気孔とは、植物の細胞表面に存在する一対の孔辺細胞により形成される孔で、環境に応じて開閉し、二酸化炭素の取り込みや体内に蓄積された水分の蒸発(蒸散)を行うことで、植物体内の生理応答を担っています。植物は蒸散により体内の圧力を負圧状態にすることで、通常であれば高さ10メートル程度しか届かない水を数百メートル先まで届けています。

でも、本当にそんなことが可能なのでしょうか。

 

それを流体力学の観点から説明を試みたのがこちらの論文です。

(出典:ながれ24, 2005, 473-481「植物の気孔蒸散の流体力学」, 著者:日野 幹雄)

この論文では、水が高さ数百メートルまで到達する利用を浸透圧現象の観点から説明されています。浸透圧と溶液体積の関係性を示すファントホフ(van’t Hoff)式によれば、なんと約460メートルの高さまで到達する可能性があるのです。蒸散現象の生理的役割としては気化潜熱による体温調節などもありますが、これらも流体力学の観点から説明することができます。

また、蒸散現象のシミュレーションについても言及されています。本文をそのまま記載すると「気孔周辺の植物生理の物理モデルで、100ミクロン四方の気孔周辺の大気、水蒸気、熱、CO2の流れをNavier-Stokes方程式、熱伝達、拡散方程式の物理法則で記述し、かつ太陽エネルギーの収支式や光合成変換を考えてシミュレートするものである」。

こちらは解析上の気孔断面を示したもので、上段の4枚の画像はシミュレーションによって得られる、左から気孔内部や表面近傍の速度場、温度降下、水蒸気分布、潜熱の情報例で、下段は過渡的な温度降下(色が濃い部分ほど、初期条件より温度が低くなっている)の推移を示しています。

 

 

(Webで公開されている論文から、図8のみ引用させていただきました。)

 

ここまでの話は気孔とそれによる蒸散現象にフォーカスした話をご紹介させていただきました。実はこの論文には続きがあり、なんとヒートアイランド現象の考慮までされていらっしゃいます。これ以上は長くなりますので、続きはまた機会がありましたらご紹介させていただきます。

 

植物ってすごい!

 

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