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【適用事例紹介】品質向上・効率化だけでなく、SPDMや技術継承における課題解決に向けてIDAJ-MBDソリューションを適用中(デンソー様)

皆さま、こんにちは。

IDAJの中井です。

 

今回は、デンソー様でIDAJがご提供している各種ソリューションをご活用いただいている事例をご紹介します。同社は、先進的な自動車技術、システム、製品を、世界中の自動車メーカーに提供するグローバルな自動車部品サプライヤーです。

 

作業効率の向上は、シミュレーションの日常化と自動化に始まる

まずは、サーマルシステム領域についてご紹介します。デンソーでは、自動車用のエアコンシステムやラジエーターなどの冷却用製品を開発しています。その中の一つであるHVAC開発向けに、iconCFDを活用した熱流体解析システム「FAST-HVAC」を、IDAJさんと共同で開発しました。これは、3次元CADデータを準備し、Excelに解析に必要な情報を入力すると、自動的に計算から結果処理までをクラウド環境を利用した社内の大規模計算サーバーで実施するもので、現在では設計者が日常的に利用するまでになりました。オープンソースのメリットを最大限に生かすことで、国内だけでなく海外拠点でもこのシステムを稼働させています。導入当初はHVACだけをターゲットとしていましたが、今ではその適用範囲をラジエーターやファン騒音などに拡大し、複数のテーマで活用しています。また、1次元のシステムシミュレーションには、GT-SUITEを利用しています。

パワートレインシステム領域では、燃焼から吸気・排気系までのガソリン・ディーゼルの各システムを開発しており、CONVERGEをエンジン筒内の燃焼・熱流体解析に使用しています。また、ハイブリッド車・電気自動車の駆動、電源システムとその関連製品、オルタネーター、スタータ等の電源供給・始動システム製品などのエレクトリフィケーションシステム開発においては、モーターの磁場・熱流体解析をANSYS製品で実施しながら、GT-SUITEの適用も始めています。今後の大きな推進項目にSPDM(註:Simulation Process and Data Management)を設定しており、IDAJさんが取扱いされているプラットフォームを活用した設計データ管理や業務プロセスの管理システム構築にも着手しています。

CAEソフトウェアの選定基準は、ツールの性能と技術サポートとのバランス

私自身がCAEツールのユーザーであった経験と、1990年代からデンソー内のCAE活用を強く推進してきた経験から、いくら良いソフトウェアであっても社内にその利用技術が根付かなければ使い物にならないこと、利用技術の定着にはソフトウェア提供元の支援や協力が不可欠だと実感していました。したがって、弊社が期待する支援が得られない場合には、いくら性能として優秀なソフトウェアであっても、近しい機能を有するソフトウェアに切り替えることも厭いませんでした。今でも、この選定基準は変えていません。

システムモデルの活用と、SPDMの適用を背景とした確実な技術継承と技術者の育成

精力的に取り組んでいるのは“システムモデル”の構築と浸透です。弊社は自動車部品サプライヤーですので“部品”の設計には大変長けており、部品設計においては解析技術はじめ、設計品質においても高いレベルにあると自負しています。ただ、将来的に製品の付加価値をより高め、OEMメーカー様への提案力を向上するためには、物事を“システム目線”で捉え、製品設計することが極めて重要になるものと考えています。弊社では近年“システムレベル”のモデルを準備し、作成ノウハウを蓄積しています。しかしシステムモデルの構築には、弊社が持ち合わせていない車両の情報なども必要になるため、計測やモデル化の部分では外部パートナーに支援を仰ぎながら技術開発を進めています。

関心がある技術テーマのあと一つは、先ほども少し触れたSPDMです。SPDMは、シミュレーションの結果や各種データ、プロセスを管理して積極的に活用する取り組みです。これまでのシミュレーションは、特定の技術者が限定的な用途で使用してきましたが、今後はシミュレーションがより日常化し、設計者が身近に活用していくようになります。シミュレーションは“製品性能そのもの”だと言えますので、製品設計を行う上でのさまざまな知見やノウハウが詰まっているはずなのです。ところが、その貴重なデータが技術者個々人の管理に依存して継承されていなかったり、組織ノウハウとしては蓄積・展開されていないのが現状です。それらデータを適切に管理・蓄積することで、これまで蓄えた知見を後進の技術者の設計開発に生かすことができるのです。

未来の技術を創るために、“技術バラシ”で残すべき技術とデータを蓄積

最近は、多くの会社様でも同じような問題に直面されているのではないかと思うのですが、技術者が退職すると、そのまま技術が無くなってしまうことがあります。“人がいなくなった時にどうするか?”という課題に対しては、要するに“その人が持っている技術をばらして、見える化して残す”しかありません。技術バラシができていれば、社内に技術やノウハウが残りますので、後任の担当者や新入社員の教育とトレーニングに役立てることができます。試しに、エアコンのHVACを対象に技術バラシを実施し、そこで得られた技術やノウハウを、新入社員の教育に適用してみました。彼らからは「しなくてはならないこと、してはならないことの理由が良くわかりました」という感想が聞かれました。社内の技術者たちは、日々の設計業務で忙しいため、技術的な背景や理由の詳細を後輩に伝えるところを省いてしまうことがあります。忙しい技術者が伝えきれなかったことを、フォローアップするためのコンテンツとして活用できそうです。当たり前だと思い込んでいたり、些細なことだと無視してきた情報や暗黙知を文書化・図化し、技術的な知見として適切に残していくことが重要だと思います。
“技術バラシ”に代表される活動は、会社規模や担当業務に関係なく“やろうと思えばできる”取り組みの一つです。「忙しいから」、「人手が足りないから」と後回しにしていては、いつまでたっても先に進むことはありません。できることから、小さな取り組みを重ねることが、数年後に大きな差となって表れるのだと信じています。

 

本事例の詳細は、こちらをご覧ください。
デンソー様でご利用いただいている、各種製品やサービスに関するご質問、ご不明点がございましたら、下記までお気軽にお問い合わせください。

・オープンソースベース汎用CFDソフトウェア「iconCFD」
・マルチフィジックス・システムシミュレーションツール「GT-SUITE」
・オートノマスメッシング熱流体解析プログラム「CONVERGE」
・多目的ロバスト設計最適化支援ツール「modeFRONTIER」
統合熱流体解析ソリューション「Ansys Fluids」
・電子機器専用熱設計支援ツール「Simcenter Flotherm」

■お問い合わせ先

株式会社 IDAJ 営業部
E-mail:info@idaj.co.jp
TEL: 045-683-1990