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実測とのコリレーションによる高精度モータNV解析と対策検討(その2)

 

皆さま、こんにちは。

IDAJの玉手です。

前回の続きで、今日はNV解析についてご説明します。

NV解析

(1)解析フローと諸元

前述の電磁界解析により得られた電磁力がモータの構成部品を振動させる力となり、この振動により外部へ騒音が伝搬していきます。電磁力により励振される構成部品の振動と外部への騒音伝搬をSimcenter Nastranを用いた有限要素法による周波数応答解析として解くことにより得ます。JMAGによる電磁界解析では、モータに発生する電磁力の過渡応答が求まりますので、それをNastranに入力し、フーリエ変換することによって周波数応答解析を実施します。なお、本解析ではハウジングはアルミニウム製であると仮定し、上下のハウジング、およびハウジングとステータコアはボルト接続であるとしてモデル化しました。

NV解析におけるモデル

NV解析におけるモデル

 

(2)ステータコアの物性同定

各部品の物性値は、等方性材料を削り出しで作っているようなもの以外は、多くの場合未公開でかつ異方性であり、何らかの計測を実施しなければ特定できません。特に電磁鋼板が積層されているステータコアなどは、ここで示した合わせ込みによって決定するのが一般的であるとさえ言えます。この合わせ込みですが、材料が異方性でさらに手動でのパラメータ調整が困難である場合は、何らかの最適化ソフトウェアなどの力を借りるほかありません。ここではmodeFRONTIERとNastranを連携させ、JFEテクノリサーチ様の測定によって得られた伝達関数との比較検討から最適なパラメータを求めました。

以下の右側は、この連携によって得られた周波数応答関数の解析値と伝達関数の実測値の比較です。各固有周波数におけるピークや、関数の形状の合わせ込みに成功していると言えます。

部品の伝達関数の合わせこみ例

部品の伝達関数の合わせこみ例

 

(3)解析結果

NV解析においてモータの回転数を1,000rpmから6,000rpmまで1,000rpmステップとし、各回転数に応じた基本周波数とその高次成分すべてを8,000Hzまで解きました。騒音の評価点、すなわちマイクロホンの位置を機側50cmの6点とし、そこでの音圧レベルを求めました。これらの評価点のうちモータ上方Point 5における各回転数の音圧レベルをまとめて見ることができるキャンベル線図を示します。

このキャンベル線図では、周波数だけでなく回転次数の特徴も把握することができます。この図から各回転数において6,000Hz付近にピークがあり、さらに回転数が上がるにつれレベルの高い周波数が高域へ移動していく様子を確認できます。

評価点位置

評価点位置

Point 5における音圧レベルに対するキャンベル線図

Point 5における音圧レベルに対するキャンベル線図

 

(4)騒音改善構造の検討

先の解析結果を踏まえて、回転数4,000rpmのときの放射音響パワーレベルを抑えるという例題をここで考えたいと思います。前記のキャンベル線図では、周波数や回転数ごとの特徴を把握することができますが、空間的にどこが原因となって騒音が放射しているのか、放射された騒音はどのように伝わるのかがわかりません。そこで役に立つ情報が、等価放射パワーと音響インテンシティです。等価放射パワーは音を放射する可能性のある振動面を把握できますし、音響インテンシティは音のエネルギーの流れを把握することができます。

以下の一番上に示す等価放射パワーを見ると、ハウジング上面の振動が大きく、それに伴って上方へ伝搬していく音響エネルギーが優勢であることを下2番目,3番目の音響インテンシティ分布の図から判断できます。そこで、この例題に対して二つの方針を立てました。一つは、ハウジングの材質をアルミニウムから鉄に変更するというもの、もう一つは、上部のハウジング形状を変更するというものです。具体的には計測装置等を設置するために開けた上部のハウジングの6つの穴をすべて塞ぎ、形状を上に凸のドーム型にし、さらに裏面に6本のリブを立てました。これらの条件に対して回転数4,000rpmのときの電磁力を与えて計算しました。

現形状に対する解析結果(4,000 Hz) ~等価放射パワー~

現形状に対する解析結果(4,000 Hz) ~等価放射パワー~

現形状に対する解析結果(4,000 Hz) ~音響インテンシティ分布1~

現形状に対する解析結果(4,000 Hz) ~音響インテンシティ分布1~

現形状に対する解析結果(4,000 Hz) ~音響インテンシティ分布2~

現形状に対する解析結果(4,000 Hz) ~音響インテンシティ分布2~

上部ハウジング形状(現形状)

上部ハウジング形状(現形状)

上部ハウジング形状(変更形状)

上部ハウジング形状(変更形状)

これら二つの方針に対する放射音響パワーレベルと、モータ上方にあるPoint 5における音圧レベルを示します。材質を鉄に変更した解析結果では、全体的にレベルが下がっており、この対策が功を奏したことがわかります。また上部のハウジング形状をドーム型にした場合でも放射音響パワーは全体的に下がっていることがわかります。ただし、上方に位置する評価点Point 5における音圧レベルを見ると、下がっている周波数域があれば逆に上がっている周波数域もあり、すべての周波数に対してこの形状変更が有効というわけではないようです。

形状変更後の解析結果(放射音響パワーレベル)

形状変更後の解析結果(放射音響パワーレベル)

形状変更後の解析結果(Point5における音響レベル)

形状変更後の解析結果(Point5における音響レベル)

(黄色線:現形状(材質アルミニウム)、青線:現形状(材質鉄)、灰色線:ドーム型形状(材質アルミニウム))

 

次にこの形状変更時の等価放射パワーとハウジングの変位の様子、さらに音響インテンシティを見てみたいと思います。形状変更によって太鼓のように振動していた上部ハウジングの天板の振動が抑えられ、それに伴って等価放射パワーが低減していることがわかります。また、上方向へ流れるエネルギーも抑えられています。

形状変更後の解析結果 (4,000Hz)~等価放射パワー~

形状変更後の解析結果 (4,000Hz)~等価放射パワー~

形状変更後の解析結果(4,000 Hz) ~音響インテンシティ分布1~

形状変更後の解析結果(4,000 Hz) ~音響インテンシティ分布1~

形状変更後の解析結果(4,000 Hz) ~音響インテンシティ分布2~

形状変更後の解析結果(4,000 Hz) ~音響インテンシティ分布2~

 

以上により、これら二つの対策は、どちらも放射する騒音を低減するには有効であることを示しました。単に評価点での音圧レベルや放射音響パワーレベルだけでなく、モータの振動性状や音のエネルギーの流れも同時に解析することで多くの情報が得られ、なぜ対策が有効なのかといった要因までも定量的に把握することが可能となります。

 

続いては、IDAJがご提供する電磁モータに対するNVソリューションをご紹介します。

 

 

 

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