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AI活用、その前に(その1)

皆さま、こんにちは。

初めて記事を書かせていただく、MBDプロセス推進室の玉手です。

 

MBD(Model Based Development、モデルベース開発)プロセスに関連する技術構築を担当しています。

以前、弊社の飯田が「【デジタルデータを使い倒す】SPDMのススメ」という記事をかかせていただきましたが、最近は弊社でもSPDMに関わる案件を承ることが多くなりました。

SPDMは、「Simulation and Process Data Management」のことです。1次元システム解析から3次元CFD・FEMなど、毎日、社内のあちこちで大量に生成されるシミュレーションのデジタルデータや、ややもすれば複雑になりがちなワークフローは、常に適切に管理、利活用されなければなりません。

設計開発業務の効率化を目指して適用されたCAEが複雑化することで、開発プロセスの効率化の足を引っ張ることになっては元も子もありません。

さらに、CAEツールや工数をかけて生み出したデジタルデータは、多変量解析や機械学習などのデータ処理技術を統合し、徹底的に使い倒すことで製品開発に対して大きな付加価値を生む可能性も秘めています。

 

データの適切な管理方法が、実は、時代によって変わってきていることを実感した事例があります。

弊社が技術構築のお手伝いをさせていただいている、本田技術研究所様でのお取り組み「機械学習による歩行者保護性能の予測」(出典:弊社季刊誌IDAJ news vol.96)。

一番ご苦労されたことは「データ収集」と述べられています。

学習用教師データには、過去に歩行者保護試験に関わった29機種分1,977打点のデータ、検証データには、ミニバン・SUV・セダンというボンネットの面積が異なる3機種29打点のデータを集められました。それはまるで“発掘”といったほうが正しいとコメントされています。

本田技研様ではもちろん図面データを保存されていますが、CAE結果は削除してしまったものがほとんど。したがって、1,977打点のうち6~7割は、CAEで再計算されました。

また、同社の別プロジェクト「深層学習を用いた歩行者保護性能予測」においても、データ収集にはかなりご苦労があったようです。

 

私も含めて、「残すべきデータは正しく残し」、「誰かが必要になればすぐに渡せる」ように管理していらっしゃるかと思います。

しかしそれは、これまでの業務プロセスに則った管理方法であり、データ分析やAIなどの新しいテクノロジーの導入によって管理方法を見直さなければならない時期が来ているようです。私がまさにそれに気づかされたのが、先述の本田技研様のケースだったのです。

 

データは21世紀の原油

 

“地下から湧き出す燃える水“の存在は、古くから世界各地で知られていましたが、19世紀後半に油田開発がスタートし本格利用が始まってから、石油は20世紀の産業と生活を支える文字通り原動力です。

照明からはじまり、自動車、飛行機、船舶の動力として、化学繊維やプラスチックなどの石油由来製品の原材料として、発電所の燃料として使われるなど、現代の産業、快適な日常生活、娯楽など石油なしでは語ることができません。

また、「石油メジャー」と呼ばれる企業群が、国際資本として20世紀の経済活動をけん引してきたのは周知の事実です。

面白いデータを見つけました。2006年と2016年の世界時価総額ランキングです。

2006年は、1位エクソンモービル(4,469億米ドル)、2位ゼネラル・エレクトリック(3,836億米ドル)、3位以下マイクロソフト、シティグループ、カズプロム、ペトロ・チャイナが続きます。

ところが2016年になると1位アップル(6,104億米ドル)、2位アルファベット(5,536億米ドル)、3位以下マイクロソフト、アマゾン・ドット・コム、フェイスブック、エクソンモービルとなります。(出典:三菱UFJモルガン・スタンレー証券より)

決してたとえではなく、本当に情報産業が石油産業を抜き去りました。

 

そして2015年頃から、AI、IoT、ビッグデータなどといった最先端テクノロジーが爆発的な革新を遂げています。これらの技術を活用して膨大なデータを解析し、活用することで、革命的とも言える、テクノロジーによる社会の効率化や新しいビジネスが創出されていくでしょう。そしてますます、GAFAと呼ばれる企業群がデータ収集とその活用を武器として各分野において独占的な影響力を発揮しています。

 

もう一つ、データが21世紀の原油たる重要な側面があります。

世界中のあちこちに存在する原油は、採掘・収集しなければ効果的に利用できない、採掘・収集できても精製できなければ活用できない、精製した石油は必要な時に取り出せるように備蓄しなければならないが、設備とコストが必要、ということです。

社内に散在しているデータをイメージしてみるとわかりやすいかもしれません。

データは社内のあちこちに埋蔵されているが、それらをまとめて管理しなければ効果的に利用できない、まとめて管理できても必要なデータだけを取り出せないと活用できない、取り出したデータは適切に保存・管理され、いつでも利用できるようにしておかなければならない、のです。

 

次回につづきます。

 

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株式会社 IDAJ

営業部 info@idaj.co.jp

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