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次世代高速通信技術をミリ波・テラヘルツ波解析視点から解説(その1)

 

皆さま、こんんちは。

IDAJの中嶋です。

5Gや6Gの通信周波数帯域は、低マイクロ波帯からミリ波、テラヘルツ波帯へと変移し、これまでなら無視できた小型な物質の影響を大きく受けるようになってきたため、アンテナ周辺の構造や、反射・透過する材料を解析する需要が高まっています。

今回は、ミリ波やテラヘルツ波で影響が現れるパッチアンテナ、窓ガラスのブラインド、ローパスフィルタなどの解析事例をご紹介します。

有限要素法によるミリ波・テラヘルツ波解析

1. ミリ波(79GHz)パッチアンテナ解析

(1)パッチアンテナと誘電体レンズ

Ansys HFSSを用いた一般的な解析手順は「モデリング、材料・境界条件・ポートを設定、計算実行」です。ここでは、79GHzのパッチアンテナを例にフローをご説明します。

基板のLayer1にアンテナ、Layer2にベタGNDの両面基板のパッチアンテナ構造をモデリングし、解析空間の外面に境界条件を、アンテナの入力源にポートを設定します。解析条件を設定してから計算を実行し、Sパラメータや遠方界、近傍界、電界強度分布をポスト処理します。アンテナ単体だけでなく、アンテナ周辺のフィルタやレンズなどの構造を組み合わせて解析することで、各目標の特性に合わせて最適化することができます。

パッチアンテナ

パッチアンテナ

 

(2)ビームフォーミング

ミリ波レーダーなどに使用されている3本のパッチアンテナを並べて、位相を調整することでビーム指向性の解析が可能です。Port.1~3の入力の位相を調整してビームの方向を変えたり、遠方界の3Dプロット、電界強度分布のアニメーションで放射方向を確認することができます。

パッチアンテナアレイ

パッチアンテナアレイ

 

2.ミリ波によるガラスの影響解析

(1)窓ガラス、合わせガラス

ミリ波帯の波長になると、窓ガラスの厚さ(4mm)が波長と同程度になり影響を受けるため、ミリ波帯の波長がどのような透過特性を持つか解析で求めました。単層ガラスでは、4mm厚のガラスに平面波を入射させています。挿入損失をみると、ガラス内で1/4波長となる8GHzの倍数で変化が起こり、16GHzでは透過、24GHzでは反射と特性が変化していることがわかります。次に、ガラスを2枚並べた構造に平面波を入射させます。合わせガラスの挿入損失をみると、単相ガラスより合わせガラスの方が透過率の変化が大きくなっていることがわかります。他にもガラスにフィルムを貼った構造やコンクリートなども解析で反射損失や挿入損失を求めることができます。

単層ガラス、合わせガラスとも、16GHzと24GHzの電界強度分布を確認すると、16GHzでは反射がなく伝搬しており、全て透過していることがわかります。合わせガラスの24GHzでは、ガラス面の前後で電界強度分布の変化が発生し、反射しています。ミリ波を扱うときは窓ガラスの影響なども考慮しなければなりません。

窓ガラス(左:単層ガラス、右:合わせガラス)

窓ガラス(左:単層ガラス、右:合わせガラス)

挿入損失S(2,1)

挿入損失S(2,1)

電界強度分布(1)

電界強度分布(1)

電界強度分布(2)

電界強度分布(2)

 

(2)遮光ブラインド

ガラス前方に金属のブラインドを配置したモデルを使って解析しました。低周波では透過し、高周波ではブラインドの傾きθによって特性が変わります。θ=30degの特性を確認すると、0.5GHzでは透過、1.8GHzでは反射小、3.3GHzでは透過、7.1GHzでは反射大、10.5GHzでは透過していますが、電界強度分布を確認するとモードが複雑に現れています。窓ガラスや遮光ブラインドでミリ波を扱う際は、低周波とは異なる、このような特性が現れますので、解析によってどのような影響があるかを事前に確認されることをお勧めします。

遮光ブラインド(θ=30deg)

遮光ブラインド(θ=30deg)

挿入損失S(2,1)

挿入損失S(2,1)

電界強度分布

電界強度分布

 

3. ミリ波ローパスフィルタ解析

(1)パッチ型メタサーフェス透過

自動車のミリ波レーダー用のエンブレムは、細かいクラックを形成して光沢を出し、高級感を保ちつつ、ミリ波を透過させる形状となっています。図9に示したようにクラック構造を模擬してモデル化し、解析によって特性を求めることができます。クラックの面積を小さくすることで透過する周波数を上げられますので、解析後の投入損失(図10)をみると、高周波では反射、低周波では透過する特性を持つことがわかります。クラックの大きさを制御して、可視光の800~400nm(375~750THz)では反射させ、ミリ波は透過するという特性を持たせることができます。

パッチ型メタサーフェス

パッチ型メタサーフェス

挿入損失S(2,1)

挿入損失S(2,1)

 

(2)フィルタの群遅延

真空、誘電体、ローパスフィルタの各フィルタモデルを作成し、それぞれに80GHzの平面波を入射させ、各構造での群遅延を解析で求めました。真空との差からフィルタの群遅延を算出し、誘電体では群遅延6.76psで真空との差0.09ps、ローパスフィルタでは群遅延6.94psで真空との差0.27psとなり、透過しても群遅延が発生しています。エンブレムの形状によってアンテナの特性が変わることが予想されるため、形状に合わせた設計が必要だとわかります。

フィルタ

フィルタ

 

次回は、ハイブリッドソルバーによる大規模通信解析とTHzメタマテリアル解析についてご紹介します。

 

Ansys Electronics

 

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