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熱とノイズの協調設計を実現する高効率・高精度なシミュレーション技術とその活用方法(その2)

皆さま、こんにちは。

IDAJの中嶋です。

前回に続いて、熱とノイズの協調設計に関する技術のご紹介です。

 

高精度を実現するためのシミュレーション技術

 

回路の形状因子が熱的あるいは電気的な特性に及ぼす影響を考慮するには、3次元のシミュレーションが必要となります。しかし、詳細度の高い3Dシミュレーションは当然のことながら計算負荷が上がるため、詳細度はできるだけ落とさずに3Dの形状情報を抽出して1Dへ縮退化させる技術が必要となります。これが「低次元化」です。

低次元化された熱等価回路と電気回路を連成させることにより、下記の因子を考慮した計算が可能になります。

・電気回路側から熱側への損失量(発熱量)受け渡す

・熱側から電気回路側へ素子の温度変化を電気的な素子の特性値として受け渡す

・形状情報を熱、電気回路へ受け渡す

 

 

Flothermを使った熱の低次元化技術

 

チップや基板形状から低次元化モデルを抽出します。必要な情報は、3D形状と境界条件(熱伝達係数)と物性値です。抽出した低次元化モデルは、回路シミュレーションツールと連携することができます。

 

 

こちらは、100秒間の過渡解析のFlothermでの計算結果と、低次元化モデルでの計算結果を比較したものです。低次元化モデルはFlotherm結果を高精度に再現しており、かつ計算も高速です。この低次元化モデルによって、熱・電気回路の連成解析が現実的に可能であることがおわかりいただけることと思います。

 

ANSYS Q3D/2D Extractorを使った電気回路の低次元化技術

 

基板・配線・バスバー・ハーネスなど、3D形状因子を考慮した寄生成分(等価LCR成)として抽出します。その後、理想回路と3D成分を組み合わせます。

 

 

こちらは1D+3D成分の電気回路検証例です。寄生成分を考慮することで厳密なノイズの検証が可能となりました。

 

 

「Flothermを使った熱の低次元化技術」、「ANSYS Q3D/2D Extractorを使った電気回路の低次元化技術」とも、RSM(Response Surface Methodology:応答曲面法)や機械学習のように入力と出力の関係をブラックボックスで表現するわけではなく、寸法や物性値から物理的な特性値を抽出する技術ですので、ある意味では“形状の低次元化”技術の一つということができます。

 

ANSYS Twin Builderを使った熱・電気回路の連成技術

 

先ほどご紹介した低次元化の技術を用いながら、熱と電気回路を組み合わせたシミュレーションをご紹介します。

素子の損失量を発熱量として熱側に受け渡し、素子の温度を素子の電気特性(飽和電圧・抵抗)に受け渡します。モーターの出力は大きくは変わりませんが、素子の特性が素子の損失に直接関わるため、ジャンクション温度の結果が大きく異なっていることがわかります。

 

 

ANSYS Twin Builderを使った熱・電気回路・制御の連成技術

 

こちらは、熱+電気回路+制御を組み合わせた計算事例です。

任意の車速入力に対してモーターを制御するためのスイッチング信号を、制御モデルから素子モデルへ受け渡し、素子モデルで素子の温度を計算してから電気的特性値を受け渡します。スイッチングによって得られた電流から

モーターの回転数を計算し、車速を算出するというフローを繰り返します。

 

 

ここまで、形状因子の影響を考慮するための低次元化の技術と、熱・電気回路の連成技術をご紹介してきましたが、一つご注意いただきたいのが、常に低次元化モデルを用いた精度の高い計算が必要か?ということです。

初期検討に粒度の高いオーバースペックなモデルを使用するのは大変非効率です。実は、設計の場面や目的に応じて必要十分な粒度のモデルを使いわけるということが、協調設計を上手く進めるために最も重要なことなのです。

 

最後に、目的に応じたモデル粒度の活用方法をいくつかのパターンにわけてご紹介します。

 

熱設計への要求である「ジャンクション温度を仕様の温度以下に抑える」に対しては・・・

 

ノイズレベルの発熱量変化による影響は小さいため、電気回路側は粒度の低いモデルで十分に対応が可能であると考えます。

一方、熱側については、放熱経路の初期検討では、簡易的な熱回路網モデルを活用するのが良いでしょう。その理由は、設計パラメータを変更した計算が容易であるということと、モデルを構築する過程で必然的に放熱経路を意識する必要が出てくるからです。

3Dを低次元化した高精度なモデルは、放熱経路の最終的な検証で使用します。

 

 

電気回路設計への要求①「指定した出力を得る」に対しては・・・

 

ノイズレベルの電流・電圧変化による影響は小さいと考えられるため、電気回路側は粒度の低いモデルで十分に対応が可能です。

一方、熱側については、初期検討や低電流域での評価であれば粒度の低いモデルでも十分な精度が得られますが、電流の大きさによっては温度依存性が無視できないため、粒度の高いモデルが必要になる場合も考えられます。

 

 

電気回路設計への要求②「ノイズを規格以下に抑える」に対しては・・・

 

ノイズの評価を行うために必要な時間分解能は、ミリ秒から場合によってはナノ秒のオーダーとなり、熱の評価とはタイムスケールが大きく異なるため、熱とのやりとりを考慮した計算は実用的ではありません。したがって、例えば常温と仕様温度ギリギリの各状態での素子特性を使用して、ノイズの傾向を確認するといった工夫が必要になります。

また、高精度なノイズの予測には基板等の3D形状因子が必須なため、粒度の高いモデルを使用する必要があります。

 

 

“協調設計”と言うとハードルを高く感じられる方が多いかと思います。

そんなときには、弊社のような技術を持っている会社を上手くご活用いただければ幸いです。

 

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