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【製品情報】熱伝導・接触熱伝達・対流熱伝達・輻射熱伝達などの3次元熱解析ソリューション「GT-TAITherm」(その2)

皆さま、こんにちは。

IDAJの小川です。

 

今日は、サンプルモデルを使った連成解析の一つ目「詳細キャビンモデル」について解説します。

●GT-TAIThermの概要

1.GT-TAIThermの位置付け

2.フル機能版のTAIThermとGT-TAIThermの違い

3.GT-TAIThermとCoSimThermalのライセンス使用例

●サンプルモデルを使った連成解析

1.詳細キャビンモデル

2.排気管の伝熱予測モデル

 

サンプルモデルを使った連成解析~詳細キャビンモデル~

本モデルでは、COOL3Dで離散化されたキャビン内部と、TAIThermの車両全体モデルを連成しています。GT-SUITE上で過渡走行中のHVAC通過風の温度コントロールを行っており、計算結果としてキャビン内の空気温度や車両の壁面温度の過渡変化を確認することができます。イタリアのトリノからドイツのシュトゥットガルトまでを、主に高速道路でドライブすることを想定し、6時間15分におよぶロングドライブ中の、太陽光の向きと強さ、気温や湿度といった天候データ、また、車体外部の対流熱伝達係数などを決めるための、車速の履歴などもTAIThermモデル内に設定されます。

 

詳細キャビンモデル(GT-SUITE)

詳細キャビンモデル(GT-SUITE)

トリノからシュトゥットガルトまでの旅程

トリノからシュトゥットガルトまでの旅程

(1)COOL3Dモデル

COOL3D内では、一般的な3D CFDを実施するのと同様に、キャビン内のウォータータイトな流体表面形状(Solidデータ)をインポートして解析空間を作成しています。前後シート形状は同様の手順で障害物とし、解析空間の中に配置してあります。開口部(FlowOpening)は、HVACからの吹き出し口(ベントグリル相当)が5か所と、外気導入時の排気口がリアトレイ付近に1か所です。また、空間内の温度センサーとして、ドライバーとパッセンジャーの頭部付近の座標に1か所ずつ、計2つが設定されています。センサー値は、GT-SUITEモデル側で、HVAC制御用の入力信号として使われます。離散化解像度は、x・y・z軸の各方向に150mm、生成されるサブボリューム数は約2,100個です。

 

(2)TAIThermモデル

本モデルでは、GT-SUITEとの連成計算が行われているのはキャビン内部だけですが、TAITherm側にはエンジンルームやアンダーフロアなどの構造まで含めた、車両全体の熱構造モデルが用意されています(エレメント数:14,401個)。

 

モデルは、メッシュとして見える部品は全てShell要素で作成し、ルーフ、ドア、ウィンドウガラス、フェンダー、タイヤなど、層構造や材質が大きく変化する境目で50種類のパーツに分割されています。伝熱計算に関わる面の厚みや層構造、材質、境界条件といった設定は、各パーツ(Shell要素)に対して個別に与えられます。例えばルーフは、複層(Multi-Layer)構造として3層に、外装が2mm厚の鉄板(Steel)、中空層(Air)が2mm、内装材が5mm厚のナイロン(Nylon、 Bonded)となっていることがわかります。また、対流熱伝達(Convection)は、外装側が走行風による冷却(Wind)、キャビンに接する内装側がGT-SUITEとの連成(Co-simulation)と設定されています。

 

(3)連成解析のための設定

TAIThermモデル側でGT-SUITEと連成させるための設定は、前項の対流熱伝達の境界条件(Co-simulation)くらいですが、連成データのマッピング用に、キャビン周辺のメッシュデータのみを抽出してNASTRAN形式でエクスポートしておいてください。

一方でGT-SUITEモデル側では、テンプレートを用いて各ファイルのファイルパス設定などを行います。

 

※お手持ちのTAIThermと連成させる際は、ご利用のインストールバージョンに合わせてパス設定を変更していただく必要がありますのでご注意ください。(詳細については弊社へお気軽にお問い合わせください。)

 

(4)連成解析の結果

この例題では、6時間15分の過渡計算に対して、開発元の計算環境を用いて、2時間30分程度のCPU Timeで終了しました。試しに、GT-TAIThermライセンスを使って計算してみると、ノートPC用の省電力型Core i7でも概ねリアルタイムより早く計算でき、4時間弱で終了しました。

GT-SUITEモデル内には、外部の雰囲気温度や乗員の頭部付近の温度をセンサーしながら、HVAC吹き出し温度をコントロールするPIDコントローラ(冷房用,暖房用の2個)が設定されており、空調設定温度が22℃、それよりも暑い状態が続くと冷房(目標吹き出し温度3℃)、寒い状態が続くと暖房(目標吹き出し温度30℃)の制御がアクティベートされている様子がわかりました。

 

TAIThermと連成した部分の計算結果からは、キャビン内の平均温度の推移や時刻歴での総伝熱量(Total Heat Transfer Out of Fluid)、壁面温度、流体温度、相対湿度の3Dアニメーションプロットが作成されます。

離散化して計算されるということは、キャビン内に温度分布が発生し、乗員の頭部温度とキャビン内の平均温度が必ずしも一致しなくなることを意味します。キャビン内の平均温度が、制御上の設定温度である22℃付近になっているのは、主に外気温が高くて強冷房モードになる期間であることがわかります。これは、強冷房時は吹き出しの風量が多くなるので、キャビン内の温度分布も均質化しやすくなるためと考えられます。

 

外周面だけでなく、断面表示にしてみると内面側の様子もわかります。

 

GT-SUITEのポスト機能であるGT-POSTだけでは連成用インターフェイス部の計算結果しか確認できませんが、TAITherm(GT-TAITherm)やViewThermのポスト機能を用いると、車両全体の温度や伝熱量の分布を、時間履歴や3Dのアニメーションプロットとして見ることができます。例えば、太陽からの入射熱量を確認すると、走行している方角や天候が時々刻々と変わっている様子がわかるのです。

 

実は弊社も以前に、PowerTHERMとGT-SUITEを連成させた詳細キャビンモデルの作成や計算を実行した経験がありますが、当時の計算時間はリアルタイムからはほど遠く、本サンプルモデルの計算時間の速さは衝撃的でした。これは、TAIThermモデルの要素数を制限したことや、マッピングに使われるNASTRANデータの接点数が減ると、メモリやストレージへの読み書き負荷が削減されたことが影響していると考えられます。いずれにしても、実車の詳細なCADデータから、ここまで簡素なメッシュ形状にデフォルメしていく工程は、お客様がお持ちのノウハウやCAEツールが役立つと思われますので、本例題を参考に、是非とも色々な工夫をなさってみてください。

 

GT-SUITEやGT-TAIThermにご興味がおありであったり、またご不明な点がございましたら、どうぞお気軽に弊社までお問い合わせください。

次回に続きます。

自動車総合シミュレーションプラットフォーム「GT-SUITE」

 

■お問い合わせ先

株式会社 IDAJ 営業部

E-mail:info@idaj.co.jp

TEL: 045-683-1990