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表面の摩耗予測シミュレーション

 

皆さま、こんにちは。

IDAJのRocky DEMプロダクト担当の河口です。

今回は、産業用機器において重大な問題の1つである、機器の表面摩耗の予測技術についてご紹介します。

 

固体の運搬や加工を扱う産業用装置を連続運転させていると、少なからず部品が摩耗して消耗します。オペレーションを担当するエンジニアの皆さまの中には、機器の寿命や交換部品タイミングを予測することに苦慮されている方も多いのではないでしょうか?また、長寿命であることや耐摩耗性は、機器を選択するにあたっての重要な意思決定基準ともなります。

特に、鉱石や岩石の輸送や破砕、土木、石油・ガスの掘削などに使用される機器の表面摩耗は、他の業界に比べてより深刻な問題となります。機械のメンテナンスによるオペレーションの中断は、多額の損失と利益の減少に直結するからです。連続運転を前提としているミルの摩耗部品交換時のダウンタイムは、1時間あたり1,000万円以上の損失を引き起こす可能性があるという試算もあるほどです。

 

装置の性能を予測・分析するには?

装置の性能を予測・分析するためのシミュレーション手法に、離散要素法(Discrete Element Method:DEM)があります。このDEMを適用したシミュレーションで、装置のプロセスの理解力を高め、摩耗問題を軽減するための解決案の検討することができます。IDAJで販売・サポートするパーティクルシミュレーター「Rocky DEM」は、まさにこのDEMを採用したツールです。

シミュレーションのメリットは、異なる運転条件や設計が装置性能にどのような影響を与えるかを、コンピュータ上で仮想的に簡単に評価することができるところにあります。このほかにも、仮想的なトラブルシューティング、プロセスの最適化、新しい設計のプロトタイプをバーチャル試作するなど、損失やメンテナンスのダウンタイムを大幅に削減する可能性を高めることができるようになります。

摩耗量を40%削減した方法

装置表面がどのように摩耗するかを予測するためには、表面が受ける力や応力を正確に予測しなければなりません。そこで、Rocky DEMを使って、表面の法線応力とせん断応力の過渡的な変化と、それによる仕事量を計算しました。

Conveyor Dynamics 社では、トランスファーシュートのせん断応力が高い領域を特定し、Rocky DEMを使用してベルトの摩耗の潜在的な問題を予測しています。デフレクタを含むように設計修正した結果、初期設計で観察された摩耗量よりも 40% 減少することがわかりました。また,構造物の固体誘導荷重をRocky DEMからAnsys Mechanicalにエクスポートし、DEM-FEAのカップリング機能を使用してシュート構造物の応力も計算しました。詳細については、動画をご覧ください。

 

設計修正後、摩耗量が40%低減

設計修正後、摩耗量が40%低減

 

 

 

続いては、トラブルシューティングに用いられた事例です。

Codelco Chile社(コデルコ)は、チリの国営鉱山企業にして世界最大級の銅の生産企業。同社では、Rocky DEMを用いた様々なトラブルシューティングや機器設計を行っていますが、本事例は、トランスファープレートの材料不良や破損問題のトラブルシューティングに適用しています。初期に設計されたプレートにかかる応力を予測し、シミュレーションによって設計改良案を検討、最終的にこれらのプレートの寿命を延ばすことができました。

 

Rocky DEMの摩耗モデル ~数ヶ月間の摩耗パターンを、たったの数分で~

正確な力と応力が計算できるRocky DEMには、検証済みのArchard摩耗モデル(Archard’s wear model)が実装されています。これによって、実際の現場で観察された数ヶ月間の摩耗パターンを、たった数分の仮想シミュレーションで予測することができます。 

基本的に、境界要素(面積Aを持つ)にかかるせん断力は、ある深さの摩耗(dh)を引き起こし、体積の損失がせん断加工(dw)に関連します。

したがって、”A×dh = C×dw”と定式化されます。 ※Cは摩耗パラメータであり、実験データに対してフィッテングする材料パラメータ

このモデルを用いて、以下の動画にあるような形状の摩耗と摩耗パターンを正確に捉えることができます。ちょうど動画中盤の25秒あたりでは、時間経過による摩耗パターンが描写されています。

 

続いては、高圧研削ロール(HPGR)の上部に配置された偏向坂のシミュレーションです。パネル上の色は摩耗量によって色分けされています。

Rocky DEMでは、非球状の任意粒子形状をモデル化することができるので、材料を高い忠実度をもって表現することができます。もちろんん粒子形状は、パネル表面に衝突する際の力や位置に大きな影響を与えますので、ここでもRocky DEMの特徴が大いに発揮されています。

 

 

今回は、「摩耗」にフォーカスして、離散要素法(DEM)シミュレーション事例をご紹介しました。

離散要素法(DEM)シミュレーションは、製品ラインの仮想実験を実施したり、実世界のオペレーションをシミュレーションする上で重要な設計ツールとなりえます。また、ここでご紹介した事例以外にも多くの動画をIDAJ Youtube channelにアップしています。是非あわせてご覧いただければ幸いです。

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