ソリューション
ソフトウェア
その他・お知らせ
本文までスキップする

【適用事例紹介】COVID-19等の感染症対策に有効活用されるシミュレーション ~風や湿度を考慮したソーシャルディスタンス検討~

皆さま、こんにちは。

IDAJのAnsysプロダクト担当の河口です。

 

今回は、熱流体解析ソリューション Ansys FluentAnsys CFXの開発元であるAnsys社から資料をご提供いただいた、感染症対策を念頭においたシミュレーション事例をご紹介します。

 

これまで掲載した記事もよろしければご覧ください。

1)【適用事例紹介】感染症対策や医療機器の開発に有効活用されるシミュレーション

2)感染症流行に関してサンタクロースを例にとってご説明した記事

3)【適用事例紹介】COVID-19等の感染症対策・ニューノーマルに向けて ~マスクってやっぱり大事~

 

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染の原因の1つとして飛沫感染が挙げられます。

皆様、After/Withコロナのニューノーマル対応として、いわゆる3密の回避、ソーシャルディスタンスのキープ、こまめな手洗いや消毒、そして(熱中症にも注意しながらの)マスクの着用に、注意を払っていらっしゃることと思います。

 

これまでにも何度か、COVID-19のような感染症対策のシミュレーション事例をご紹介させていただきました。それらは咳やクシャミによる微粒子の飛沫の広がりや、ソーシャルディスタンスの目安、マスク着用の有無による飛散状況の違い、さらにはランニング等の走行時での飛散状況の違いなどを示すための事例でしたが、多くが無風状態や湿度一定とした事例でした。

今回は風が吹いている状況下や、また湿度の影響を検証した事例をご紹介しようと思います。

 

米国のオクラホマ州立大学のYu Feng教授が率いる研究チームが、Ansys Fluent 2019 R1を用いて、風が吹いている場合や湿度を変えた場合の咳から発せられた微粒子の流動拡散の状況が検証されています。

 

 

シミュレーション資料の提供:Ansys,Inc.

(免責事項)

このシミュレーションは、特定の状況下での物理的な動作を再現するように設計されています。それらは医学的ガイダンスと見なされるべきではなく、風や湿度などの環境の変化は考慮されていません。

 

出展:Science Direct 「Influence of wind and relative humidity on the social distancing effectiveness to prevent COVID-19 airborne transmission: A numerical study」

 

この動画の中では、仮想空間内に、咳をする人(Aさん)と咳を浴びる人(Bさん、バーチャル空間内でもこの役はやりたくない)の2人に、ソーシャルディスタンスの1つの目安とされる6フィート(約1.8メートル)の距離を保って対面で立ってもらいました。解析空間は、Ansys Fluent Mesherを用いてポリヘドラルメッシュで分割しています。

Aさんがする咳は、時間変化する初速度をもった空気と、適切な粒径分布を設定した微粒子でモデル化されています。

相対湿度は99.5%でセットされ粒子の蒸発・凝集も考慮します。

 

動画内では、まず無風状態で、AさんがBさんに咳を吹きかけます。ここでは、粒子径を見易くするために実際より大きく表示されていますのでご注意ください。

残念ながら、Bさんは結構な量の飛沫を浴びてしまいます。動画を見る限り1.8メートルは全く十分なソーシャルディスタンスとは言えないようです。もちろんあくまでも、この論文の条件下でのお話です。

 

続いて、穏やかな風がAさんからBさんの方向へ吹いている、つまり、飛沫にとっては追い風の状況下において、同条件でシミュレーションを実施します。Ansys Fluentの計算結果では、無風状態よりさらにBさんは飛沫を浴びています。無風状態より粒径の大きな粒子が服や体に付着しており、すぐに着替えてシャワーを浴びる必要がありそうです。

 

今度は、穏やかな風は吹いたままの状態で、AさんとBさんの距離を10フィート(約3.1メートル)まで離し、同条件でシミュレーションします。Bさんの浴びる飛沫の量はかなり減少したようです。動画内では安全とされていますが、100%安全とは言い切っていません。

 

最後に、Aさんはこれまでマスク着用してなかったのですが、無理を言ってマスクを着用してもらって同条件で咳をしてもらいます。AさんとBさんの距離は約1.8メートル、有風状態です。

Ansys Fluentの計算結果ではBさんはほとんど飛沫を浴びていないように見えます。動画内でもマスク着用が近距離においても効果的だと謳っております。やはりマスク着用の効果は偉大ですね。

 

動画内では触れられていませんが、参照論文の中では、室温での相対湿度が99.5%の場合と、40%の場合との計算結果を比較しています。この論文内のAnsys Fluentを使ったシミュレーション結果から、相対湿度が液滴サイズの変動にかなり大きな影響を与えることがわかりました。高湿度の99.5%では低湿度40%に比べて、Bさんはかなり多くの粒径の大きな飛沫を浴びることになります。これから夏に向かっていく時期で恐ろしい結果です。気を抜かずさらなる注意が必要です。

この事例からわかることは、風が吹いていても吹いてなくても、距離が近かろうが離れてようが、湿度が高かろうが低かろうがマスクをしたほうが良いということです。もちろんですが、熱中症等への注意と対策が必要です。

難しいことではなく、「エチケット」レベルの心がけで、ここまで効果が出ることを、シミュレーションで簡単ご理解いただけたのではないでしょうか?

万が一マスクを着用していないときに咳やくしゃみをする場合は、下図のように腕等で口を塞ぐようしましょう。

 

先日、我が家にも政府が配布するいわゆる「アベノマスク」がついに到着しました。大切に、有効に、使わせていただきます。

 

■IDAJがご提供するオンラインコンテンツをご紹介しています。

IDAJ Resource Center

 

■お問い合わせ先
株式会社 IDAJ
営業部 idaj-seminar@idaj.co.jp
TEL: 045-683-1990